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u-heのイカしたサウンドを曲作りに活かす vol.9

前回に引き続いて、リズムトラックの上モノのシンセパートアレンジについて解説していきましょう。

2つ目の上モノパートの作成方法について

例えば元のリズムトラックにエレキギターとローズなどのビンテージエレピなどのパートを加えれば、ソウル・ファンク系のバックトラックとして程よくまとまると思います。

しかしながら、今回はシンセサウンドを活かすという方向でアレンジを進めていますので、前回作成したパートを考慮しつつ、次のパートをどうするか考える必要があります。

次に作成するパートのアイディアとしては、大きく分けて以下のような2つの方向性が考えられます。

  1. 最初に作成したアルペジオとは異なる符割のアルペジオ、あるいはシーケンスフレーズなど、減衰音系音色を使用したパートを作成する
  2. 持続音系音色を使用し、音数を絞った音価の長いフレーズのパートを作成する

これらの方法はどちらを選んでも間違いではないのですが、前回作成したアルペジオパートを含めて、現状のトラックの状態はほとんどが減衰音のパートです。

少なからずサウンドの厚み的な面で物足りなさが否めないことと、減衰音系のパートの異なるリズムが更に増えることで、各パートのリズムの絡み方が複雑になり、かえってグルーヴ感を損ねる可能性があることを考えると、1.よりは、2.のパートを作成する方が良いでしょう。

それを踏まえて作成したパートの打ち込んだフレーズは、図のようにフレーズとしてはシンプルな単音フレーズです。

追加したシンセパートの打ち込んだフレーズのエディット画面。

しかしながら、ここで使用したのは、Hive 2のリード系音色プリセット:HS Sprinkler – degradeですが、元のディレイエフェクトのディレイタイムの設定を曲の雰囲気に合うように調整して変えています。

Hive 2のリード系音色プリセット:HS Sprinkler – degradeの設定状態。ディレイエフェクトのパラメータ以外の変更は行なっていない。
前述のプリセット:HS Sprinkler – degradeで元々設定されていたディレイの状態。ディレイタイムの設定は演奏をプレイバックしつつ、エフェクト音とドライ音が重なった際の響きを聴きながら調整するのがベター。

ここまでの段階のアレンジがデモサウンドの状態となりますので、参考例として聴いてみてください。

前回の状態にシンセリード音色のパートを追加した状態。

次回はアレンジを始めた段階から今回のアレンジに至るまでにはどのような経緯だったのか、そして、最終的にどのようなアレンジになったのかについてお話したいと思います。

内藤朗

キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、サウンドクリエーターなど様々な側面を持ち、S.E.N.Sのレコーディングサポート、安部OHJIの様々なプロジェクトでのレコーディング、ライブなどに関わるなど、作編曲からレコーディング制作、ライブ演奏など多方面で活動中。MIDIやDTM関連の分野では黎明期から今日に至るまで長きに渡り関わっており、多様な経歴を持つ。また、音楽制作系のライターとしても広く知られ、近著に「音楽・動画・ゲームに活用! ソフトシンセ 音作り大全」(技術評論社刊)、共著「ミュージッククリエイターハンドブック 2023年改訂版」(ヤマハミュージックエンターテインメントホールディングス刊)などがある。有限会社FOMIS代表取締役、一般社団法人日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)正会員、MIDI検定指導研究会会員。