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u-heのイカしたサウンドを曲作りに活かす vol.3

Hive 2のプリセットアルペジエーター機能の活用をテーマに進めてきましたが、本テーマの最後はシーケンスフレーズパートと、シンセパッドのパートの作成法について紹介しましょう。

プリセットのアルペジエーター機能を活用する(その2:シーケンスフレーズパート作成のポイント)

2トラックあるシーケンスフレーズパートは、いずれもミニマル的な雰囲気で通奏させているのですが、別々に聴くとどちらもシンプルなフレーズなものであることに気がつくと思います。

これが実はフレーズを組み合わせる時のポイントの一つで、プリセットを組み合わせる時にはシンプルなもので組み合わせる方がフレーズやサウンドが一体感を得やすい傾向があります。

もう1つのポイントは、当たり前と言えば当たり前ですが、フレーズに使用されている音が曲のキー(=調性)に合っていること、音階の構成音以外の音が入っていないことなどに留意してフレーズを組み合わせることです。

もちろん、それらの条件を完全に満たすプリセットはとても少ないとは思いますが、組み合わせてみて和声的な違和感があったら違うものにしてみるぐらいから始めてみると良いでしょう。

参考までですが、私の場合は、そのキーの主音と5度の音(例えばCメジャーならドとソ)で主に作成されたフレーズを軸として他のフレーズを組み合わせていくことが多いです。このようにすることで、シーケンスフレーズパートの調性感に統一性が出るように思います。

実際に使用したプリセットは、“AS Space Sequence”と“KS Particles”です。

プリセットAS Space Sequenceの全体画面。黄色の枠線で囲んだ部分がオシレータボリュームの部分。ここを0にしてミュート状態にしている。
プリセットKS Particlesの全体画面。こちらはほとんどプリセットの状態から変更していない。

AS Space Sequenceはプリセットそのままの状態だと、オシレータ1とサブオシレータ1を使用したベースフレーズが一緒に鳴っているので、その部分をミュートするため、それらのボリュームを0にして、高域のシーケンスフレーズのみを使用しています。これにKS Particlesを組み合わせることによって参考例のような雰囲気を出しているワケです。このように部分的に使用するのもプリセットを活用する上では、非常に有効な方法と言えます。

この通奏パートに変化をつけるために、フィルイン的なフレーズを追加して単調にならないようにしていますが、8小節ごとに入るフレーズはプリセット“AZ Trance Riff”、曲中に出てくるもう一方のフレーズはプリセット“HS Bars Attacks”を使用しました。

それぞれ上がプリセットAZ Trance Riff、下がプリセットHS Bars Attacksの全体画面。これらもほぼプリセットの状態で使用している。

この2つの場合には、入れるタイミングのコード感に合うように演奏するノートを指定していますが、適したプリセットを選ぶ際には通奏パートよりも見つかりやすいでしょう。

実際にシーケンスフレーズのパートのみでどのような演奏になっているかはデモサウンドで聴いてみてください。

最初の4小節はプリセットAS Space Sequenceのパートのみ、次の4小節はトKS Particlesのパートのみ、後半8小節が両方重なった状態とフィルイン的なフレーズを含んだ状態となっている。通奏部分の2つのシーケンスフレーズが重なることによって表現される雰囲気に着目してほしい。

作成したトラックを更に曲らしく仕上げるには?(シンセパッドトラックの追加とアレンジのポイント)

ここまでに作成したトラックだけでも十分に和声的な響きも感じられるかとは思いますが、今回の参考例は主となるメロディがないのでメロディ的な旋律の流れも少し感じられるようにシンセパッドのパートを2つの異なる音色で追加しました。

トップノートが含まれるシンセパッド1はプリセット“DS Cosmic”、最下音が含まれるシンセパッド2は“DS Transcendence”を使用しています。

それぞれ上がプリセットDS Cosmic、下がプリセットDS Transcendenceの全体画面。他のトラック同様にプリセットからほとんど変更していないが、両方のパッドの発音タイミングを調整したい場合には、EGセクション(黄色の枠線で囲んだ部分)のアタックとリリースを調整すると良い。

どちらのパートにも内声のノートが含まれていますが、両者の動きは異なり、2パート合わせた時に一つのシンセパッドの演奏となります。

それぞれ上がプリセットDS Cosmic、下がプリセットDS Transcendenceの打ち込んだノートの状態。音域が分かりやすいようにC4の位置を黄色の枠線で囲んで示している。

音の厚みを出したい場合には同じフレーズをそれぞれのパートで演奏させたレイヤー状態の方が良いのですが、異なる演奏を行なっているパートを組み合わせて一つのパートにすると、オーケストラのストリングスセクションのようなアンサンブル感を出すことができます。

厚みよりも繊細さを出したい場合などにはこの方法を試してみると良いでしょう。 今回は最後にアクセント的に効果音を入れて仕上げましたが、使用したプリセットは“AZ Bubble UP”と“ETE Wilt”です。

こちらについてもシンセパッドだけでどのように聴こえるかデモサウンドで聴いてみてください。

最初の8小節はシンセパッド1のパート、次の8小節がシンセパッド2のパート、最後の8小節が両方が重なった状態でフェードアウトという構成になっている。最後の重なった状態のサウンドに十分注目してほしい。

新たな連載の最初ということで、実際のデモトラック制作の流れに沿いつつ、制作工程の各所のポイントを紹介してみました。

次回からは、更にピンポイントでシンセの活用方法を紹介していきたいと思います。

Hive 2デモ版ダウンロード

Hive 2のデモ版はこちらからダウンロードできます。

デモ版は、定期的にノイズが入りますが、機能無制限でお使いいただけます。是非Hive 2の実力をデモ版でご確認ください。


内藤朗

キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、サウンドクリエーターなど様々な側面を持ち、S.E.N.Sのレコーディングサポート、安部OHJIの様々なプロジェクトでのレコーディング、ライブなどに関わるなど、作編曲からレコーディング制作、ライブ演奏など多方面で活動中。MIDIやDTM関連の分野では黎明期から今日に至るまで長きに渡り関わっており、多様な経歴を持つ。また、音楽制作系のライターとしても広く知られ、近著に「音楽・動画・ゲームに活用! ソフトシンセ 音作り大全」(技術評論社刊)、共著「ミュージッククリエイターハンドブック 2023年改訂版」(ヤマハミュージックエンターテインメントホールディングス刊)などがある。有限会社FOMIS代表取締役、一般社団法人日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)正会員、MIDI検定指導研究会会員。