u-he製品をアルファベット順に解説している本連載。
今回は前回のACEに続いてBazilleの5回目です。
連載32回目の今回は、Bazilleのその4の終わりに予告した通り、Synthページの残りの機能から、まずはMultiplexの解説から開始してみます。
MULTIPLEXは最大4インプットのミックス/スプリットモジュールです。
MultiplexはGUI(ソフトの見た目)中央下にあります。
Multiplexは4インプットのミックス/スプリットモジュールで、それぞれの機能は以下のようになっています。
モジュラーシステムは元々パッチケーブルを抜き差しするというものなので、インプットにしてもアウトプットにしても、ひとつのポートにケーブルはひとつしか挿せないですよね。
それを、ひとつのアウトプットに最大4系統のインプットを接続できるようにするのがMultiplexです。
Multiplexのインプットは、オシレータはもちろんフィルターやLFOやエンベロープ、MIDI&MOREのモジュレーションなどなどパッチのアウトプットがついているモジュールならなんでも接続して使用できます。
4つのインプットは左右のボリュームが等しい場合それぞれ均等に掛け合わされてアウトプットに送られ、モジュレーションインプットにモジュレータを接続している場合はその値でインプット1/2と3/4をクロスフェードします。
ボリューム1/2と3/4は、例えばインプットにオシレータが接続されている場合はボリューム、モジュレータが接続されている場合は効果の深さを調整します。
例えばこのように接続したとします。
この例の信号の流れは、OSC1のアウトプットをFilter1のインプットへ、Filter1のLP12アウトをOUT1に接続しています。
このフィルターのCutoffをインプット1にLFO1、インプット3にLFO2を接続して、モジュレーションインプットにモジュレーションホイールをアサインしたMultiplexのアウトプットからの信号でコントロールするように接続してみました。
この設定ではモジュレーションホイールでカットオフのスピードを変更できるので、ブロステップで良く使われるワブルベースのような表現ができますね。
モジュレーションインプットを使用してクロスフェードさせる場合にもインプット1/2のグループと3/4のグループは等しく掛け合わされるので、例えば上の画像の設定にインプット4にアタック遅めのADSRのアウトを追加すると、LFO2の効果がADSRの時間軸でフェードインしてくるような設定も可能になります。
Multiplexは通常のモジュラーシステムでは不可能な設定も簡単に行えるようになる、何かと便利な機能だったりします。
シンプルなのに使えるSEQUENCER!
Synthページ右下にはSequencerがあります。
最大16ステップのステップシーケンサーで、アウトプット(赤いソケット)が4つ見えますが、これが4つあることがBazilleのシーケンサーモジュールのポイントのひとつです。
先に各機能を解説します。
Divide:Time Baseで選択した値を最大16倍まで速めます。Time Baseが1/1に設定されている時に16に設定した場合は1ステップの長さが1/1ノートから1/16ノート分に変化します
Time Base:1ステップの長さの単位を決定します。1/16、1/1、1s(1秒)から選択します
Trigger:free、sync、gateの三種類からシーケンスのトリガー方法を選択します
free:ノートを入力するたびにスタート位置をランダムで変更します
sync:ステップの再生位置はホストのテンポに同期します
gate:ノートを入力するごとにリトリガー(初めから再生)します
Snapshot Dial:
Time BaseとTriggerの下にあるダイヤルをSnapshot Dialと言います
外周の1から8のボタンでステップシーケンサーのパターンを8種類作成可能で、中央のダイヤルでトリガーするシーケンスを選択します
1から8のボタンを右クリックすると、コピーとペーストのメニューが表示されるので、現在のパターンのバリエーションも簡単に作成できるようになっています
Rotate:インプットソケットにモジュレータを接続して、Snapshot Dialをコントロールできます
sliders:16本のスライダーは中央が0、上下100%で値をコントロールします
outputs:4つのアウトプットソケットです
speed factors:
アウトプットソケット左の数字をクリックすると、1から16の値を選択するポップアップメニューが開きます
ここではTime Baseで選択した値を選択した数値の数だけ倍にします
Time Baseが1/16の時、speed factorsが2で1ステップの長さが1/8ノート
Time Baseが1/16の時、speed factorsが4で1ステップの長さが1/4ノート
Time Baseが1/16の時、speed factorsが16で1ステップの長さが1/1ノート
というように変化します。
4つのアウトプットの意味は、任意のアウトプットソケットからモジュールに接続した場合、そこまでのステップをループしてコントロールします。
それ以降のアウトプットは別のシーケンスとして動作するようになります。
少しややこしいので画像と合わせてみてみます。
1番目のアウトプットに接続した場合。
4番目のスライダーまでをspeed factorsで設定した長さでループし、それ以降は使用しません。
1と4番目のアウトプットに接続した場合。
1から4番目のスライダーまでをspeed factorsで設定した長さでループ、同時に5から16番目の範囲を4番目のアウトプットのspeed factorsで設定した長さでループ。
この時2と3番目のspeed factorsは無視されて、ループ範囲内はすべてアウトプットが使用されている部分のspeed factorsの設定に従います。
ということで、BazilleのSequencerはシンプルでありながら最大4系統8パターン使用可能でスピードコントロールの自由度も高い”使える”モジュールです!
Bazzileに興味を持ってくれた方は製品ページからデモバージョンをダウンロード/インストールして試してみてください。
ここ数年アメリカやヨーロッパではアナログモジュラーシンセブームが続いていますが、BazilleやACEなら気軽に始められる上にどんなに無茶をしても壊れないので安心して楽しんでみてください。
それではまた次回!