サウンドザイン入門(前編)
お久しぶりですYuriです!みなさまいかがお過ごしでしょうか?
私は現在ロンドンに滞在しています。8月には、イマーシブフィルム制作のプロジェクトのため、モントリオールでトレーニングと制作に励んだり、新しい経験を積んでいる真っ最中です。
今回は6月に開催されたIMSTA Japanで行ったマスタークラス「サウンドデザイン入門」の内容を2回の記事にまとめてお届けします。
私が実際によくやってるBitwig Studioでの「サウンドの作り方」〜「Bitwigならではのメロディ作り」〜「ミキシング」〜「トラックの完成」、そして当日紹介しきれなかったPoly Grid上でのパッチの作り方や、新機能であるMSEGsについても触れています。ぜひ参考にしていただけると幸いです。
プロジェクトファイル
この連載で解説しているプロジェクトファイルはこちらからダウンロードできます。
ダウンロードした圧縮ファイル「BWS-MasterClass-1_projct.zip」を展開し、現れた「BWS-MasterClass-1.bwproject」ファイルをBitwig Studioで開きます。
Bitwig Studio Master Class「サウンドザイン入門」:プロジェクトファイル
Bitwig Studioデモ版ダウンロード
Bitwig Studioのデモ版はこちらからダウンロードできます。
デモ版ではファイルの保存は行えませんが、すべての機能にアクセス可能です。今回のプロジェクトファイルもそのまま開いて、実際に再生・編集を行うことができます。
Bitwig Studio・デモ版ダウンロード:ver.5.2.4(Windows)
Bitwig Studio・デモ版ダウンロード:ver.5.2.4(Mac)
Bitwig Studio・デモ版ダウンロード:ver.5.2.4(Linux - Flatpak)
Bitwig Studio・デモ版ダウンロード:ver.5.2.4(Linux - Ubuntu)
1. ボイスサンプルでパッドサウンドを作る
まず最初にクリップランチャー上で録音した声のサンプルを使ってパッドサウンドを作ります。
1-1 Samplerにサンプルを取り込む
Samplerのデバイスを立ち上げます
使いたいサンプルを、クリップランチャー上にドラッグ&ドロップすると、お手本のプロジェクトファイルのようにBitwig Studio内で録音したサンプルも簡単に取り込むことができます。
MIDI信号を送ってみましょう
音は鳴りましたが、このままだとキーが合っていません。 そこで便利なのがSamplerのDetect root key機能(右クリックメニュー/ Controlクリックメニュー)。 この機能は、キーを自動で検知し、ルートのキーを設定してくれます。
今回はパッドサウンドを作るので、音の減衰を調節するエンベロープ(AHDSR)の設定はややAttack(A)遅め、Release(R)は長めの設定で進めていきます。
元になるパッドサウンドができたら、次に進みましょう。
1-2 Voice Stackで音に広がりと厚みをつける
Voice Stack(ボイススタック)とは?
1つのノート信号で複数の音を鳴らせる機能です。 ユニゾンと似ていますが、各音に違うパラメーターの設定ができるところが特徴です。
設定方法
Samplerのデバイスを選択し、左側のインスペクターパネルからボイススタックの数を設定します。
今回は、ボイス:24、ボイスタック:5に設定しました。この場合、最大で24ノートの同時発音が可能で、それぞれのノートに対して5つのボイスを発音をします。つまり最大で120の同時発音が可能にになります。
Voice Stack Spreadのモジュレーション・ルーティングをPlayheadに
さらに、音に厚みと広がりのあるキャラクターを作ってみたいので、Voice Stackのボイスが異なる再生位置から再生するようにしてみました。
設定方法
Voice Stack Spread ±右横のアイコンをクリックし、モジュレーションのマッピングモードに入ります。
次に、Offsetsの”PLAY”をクリックしてドラッグすると、モジュレーションさせたい値を設定できます。
これで、Voice Stack Spreadに対して、再生スタート位置が異なる再生位置になるようになります。
1-3 音に空気感を加える
Delay+を使って空気感を加えていきます。
Delay+の主な機能とパラメーター
- Width:音の広がりを調節できます。
- Blur:音のぼかしを加えることができます。5つのキャラクターから選択できます。今回はSpaceという広がりの多いものを選びました。
- Ducking:いわいるダッキング機能。ただ音をぼかすだけでなく、音の芯を保ちながら空間系のエフェクトを加えることができます。 設定したアマウントに応じて原音が入るとエフェクトが減り、原音が減衰するとエフェクトが元の量に戻ります。
一旦好みの音に仕上がったら、次に進みましょう。
1-4 EQ+で下処理を行う
パッドなど空気感を感じることがの多い音は、200〜300 Hzあたりに音が溜まりがちなので、先に少し削っておきます。他の楽器の入るスペースをつくっておくことでアレンジもしやすくなります。
先ほど作ったDelay+の設定やこのEQ+の設定は、ミックスダウンの際に他のパートとのバランスをとりながら、再度調節していきましょう。
SamplerのトラックでMIDIクリップを再生しフレーズして完成した音を確認してみましょう。
2. Polymerでメロディーの音作り
2-1 Polymer
今回は、Bitwig Studioでもポピュラーなソフトシンセ「Polymer」を使います。オシレーター、フィルター、エンベロープを自由に選択して組み合わせることができるシンセサイザーで、ユーザー自身でシンセ内部の組み替えができるPoly Gridにも変換できます。
オシレーターにWavetableを使用します。
Wavetable右上の山のようなマーク をクリックして、Unisonを設定します。 他のトラックと音が馴染みやすくします。
2-2 Segmentsでエンべローブを描く
次に音の減衰を設定していきます。ここでバージョン5から新しく登場したMSEGsのひとつSegmentsを使います。
Segmentsはオリジナルのエンベロープの波形を描くことができるモジュールです。 一般的なADSRの4つのステージからなるエンべローブよりも自由な波形を描いて、音の変化を作ることができるのが特徴です。
波形の部分をクリックするとポップアップウィンドウが現れます。ここで波形を描くことができます。
右下のSNAPの設定やON/OFF、TOOL部分でシェイブの形を選ぶことができます。もちろんフリーハンドでの描写も可能です。
プレイモード(一直線に音を走らせる「One-shot」、あるポイントで止める「Hold」、ループ「Looping」、バックアンドフォース「Ping Pong」)とタイムベースの選択もできます。
ちなみにBitwig Studioではデバイス上で右クリック、もしくはF1キーでヘルプが確認できます。ヘルプ画面を見ながらパラメーターの調節ができるのでとても便利です。ぜひ活用してみてください。
今回は山の2つあるエンベローブを描きました。パーティクルが飛び交うようなリズミカルなメロディが演奏できます。
3. ArpeggiatorとOperatorsを組み合わせてアイデアや閃きのヒントを得る
フレーズ作りで行き詰まることって多いですよね。このセクションではBitwig Studioの機能を使ってアイディアを膨らませる方法をご紹介します。
3-1 Arpeggiatorを使ってフレーズを作る
ArpeggiatorをPolymerのデバイスの前に立ち上げます。
PADのトラックにあるMIDIクリップをPolymerのチャンネルへコピーします。 この状態で再生されるアルペジオのメロディも素敵ですが、もう一捻りしていきます。
別のインストゥルメントトラックを作成します。
次にPolymerのトラックのArpeggiatorのアウトプットを、作成したトラックのインプットにアサインします。
Arpeggiatorのノートを録音します。
Polymerのチャンネルへ録音したクリップを移します。
このクリップのパターンを聞いてみましょう。元のアルペジオパターンよりも音階に広がりのあるフレーズができあがります。
3-2 Operatorsのチャンスでフレーズにバラエティを与える
ここからは出来上がったフレーズにランダムなハプニングを起こします。 クリップを選択し、左側のインスペクターパネルにあるオペレーター部分を触ってみましょう。
ノートエディター内でオペレーターを適応させたいノートを選択します(今回は全選択)。サイコロマークのチャンスという値を変えていきます。ノートの発音確率を選択することができます。▶️マークを押すとヒストグラムが現れます。数字を変えてランダマイズしていきます。
この状態で再生すると、設定した確率でノートが発音したりしなかったりするようになります。
こうすることで、短いループの中で何通りものパターンを生成してくれるのでよりフレーズの表情豊かになります。