ここ数回はBITWIG STUDIO 2の新機能Modulation Systemの詳細を紹介している本連載。
今回も引き続き残りのモジュレータの紹介で、Modulation Systemの紹介は今回で完了です。
これまでのModulation Systemの記事は以下のリンク先も合わせてご参照ください。
Modulation SystemのMixからXYまで
Mix
シンプルな2chミキサーで、チャンネル間のクロスフェードがついています。
A/Bそれぞれの縦フェーダーとクロスフェーダーはデフォルト値が中央0%に設定されていて、この時点ではクロスフェーダーを操作しても何も起こりません。
A=0%とB=0%間をクロスフェードすることになるからですね。
例えばAを0%、Bを100%に設定した場合。
クロスフェーダーは0%から100%の値をコントロールするフェーダーになります。
更にAを-100%、Bを100%にした場合。
クロスフェーダーは中央を0とするバイポーラのコントローラになります。
最小値と最大値を簡単に設定できるノブのようなイメージで使用すると良さそうですね。
Note SideChain
他のトラックのMIDIノートをモジュレーションソースにします。
プルダウンメニューでソースとなるトラックを選択し、入力された信号を元にADSR調整した信号でモジュレーションします。
他のモジュレータと同じく右端にモジュレート量の縦スライダがあります。
ソースとなるトラックからMIDIノートを受ければ動作するので、特定のフレーズに合わせてエフェクトなどの設定を変えたいというような場合に、空のトラックにMIDIクリップのみをコピーして不要なノートを削除した上で使用したりしてみても効果的かもしれないですね。
Random
サンプル&ホールドベースでランダムに値を生成するモジュレータです。
Rate:LFOのRateと同じくプルダウンメニューで周波数の基準を選択し、ノブで調整します。基準はHz、kHz、bar、2nd、4th、8th、16th、32ndから選択可能で、bar(一小節)を選択している時にノブを2.0に設定した場合2ndに、ノブを4.0に設定した場合は4thになるという具合ですね。数値をダブルクリックで直接入力も可能です。
Smooth:左に振り切った場合、値から値にジャンプするS&H。右に振り切った場合、値から値に滑らかに移行するS&Gに変化します。
Feedback:0%(12時方向)に設定した場合、Rate/Smoothの値に忠実に、-の値に設定していくとランダム性が減って規則正しく、+の値にしていくと値の振れ幅が狭くなります。
Amount:Randomの適用量を調整します。
Bipolar:+/-ボタンをクリックして有効にするとBipolar(-100%から+100%)、無効にするとUnipolar(0%から100%)として動作します。
Trigger:Free、Note、SyncからRandomのトリガー方法を選択します。
Free:常にRandomは動作し続けています
Note:RandomはNoteを受信する度に次の値に移行します
Sync:DAWホストのテンポと同期して動作します
RandomのトリガーはRateとTriggerの関係で動作が少しややこしいです。
例えばRateのノブが1.0、単位がbarの場合、freeとSyncでは1小節毎に次の値に移行しますが、TriggerがNoteになっている場合、コードなどを入力し続けた場合は1小節毎に、1小節経過前に別のノートを入力した場合はその時にも別の値に移行することになります。
POLY:有効にした場合、入力されたノートごとに個別にランダムの値を与えます。
RandomのGUIを右クリックして表示されるメニュー内のPer-Voiceをクリックした場合もPolyと同じ役割を果たします。
Select-4
Macro-4と似ていますが、4系統の操作を様々な機能に割り当てた後、ひとつの縦スライダーで各機能を操作します。
文章では伝わりづらい機能だと思うので、図で見てみます。
Select-4を回転させて考えた図だと思ってください。
図でいうところの一番右(Select-4では一番下)にフェーダーがある場合、4つの機能の値はすべて0。
少しずつフェーダーを上げて行くと、赤に割り振った機能の値が上がってきて、赤の値が下がり始めるところから青の値が上がり始めながらクロスフェードします。
青の値が最高になる部分で赤は最小値に戻り、黄色の値が上がりながら青とクロスフェードします。
同じように青、黄、緑がクロスフェードを繰り返しながら、フェーダーを最も上げた位置は緑のみ最高の値で止まります。
これはXYとも違う独特な動きを与えられるので、特にいろいろな割り当てを試してみて欲しいモジュレータのひとつです。
Select-4のGUIを右クリックして表示されるメニューにFill Modeというチェックがあります。
このチェックが入っている場合(Fill Modeが有効の場合)、フェーダー操作時の動作が変化します。
このモードでは、一度上げたフェーダーはクロスフェードして下がらないので、フェーダーを上げるにつれて図で言うところの赤→青→黄→緑の順に最高値になります。
フェーダーを下げた場合は逆に緑→黄→青→赤の順に最小値に戻っていくということですね。
Fill Modeはすべてが全開のカオスな状態を生むので、使いどころを誤ると大変なことになったりします。
Steps
最小2から最大64ステップまで設定可能なステップシーケンス・モジュールです。
各ステップは中央を0として、グラフを上下にドラッグして値を調整します。
その他の機能は以下の通り。
Steps:上下にドラッグ、またはダブルクリックで直接ステップ数を設定。設定可能なステップ数は2から64まで。
再生方向/ループ:左右の矢印をクリックして再生方向を設定します。アイコンをクリックしてループを解除すると設定したステップ数を終了後に1ステップ目でStepsを停止します。
Clear:現在のStepsのグラフをクリアし、すべてのステップを0にします。
Random:サイコロマークをクリックしてすべてのステップをランダムで設定します。
Trigger Mode:以下の4種類からトリガーモードを選択します。
Free:Stepsは内部で常に走っている状態です
Note:ノートを入力するたびに1ステップ目からトリガーします
Note/Random:ノートを入力するたびにトリガーし直し(リトリガー)、開始位置はノート入力ごとにランダムで選択されます
Transport:DAWホストのトランスポートに同期します。ただし、ホストの拍子とStepsのステップ数の整合性が取れない場合、完全には同期できない条件が発生します。
例えば1ステップの長さが1/16でホストが4/4拍子の場合、Stepsは16ステップで1小節なので、4の倍数以外では徐々にずれて行くことになりますね。
Rate:Time Baseで設定したを増減します。
Time Base:LFOと同様にHz、kHz、bar、2nd、4th、8th、16th、32ndの他に、付点付きが多数とPitch、Holdがあります。
Pitchは入力するノートが低いほど遅くノートが高いほど速くなり、Holdはステップを進めずその場に留まります。
Phase:Stepsの開始位置を変更します。0%で通常通り、99%付近で最後のステップの辺りから開始されます。
Time BaseがHoldに設定されている場合、Phaseの値を操作することでステップを変更することができるので、RandomモジュレータなどでStepsのPhaseをコントロールするように設定すると、ランダムでステップを変更しながらコントロールする、ランダムでランダムなこともできますね。
StepsにはサイコロのRandomボタンが付いているので、設定する値も、トリガーする値も、限りなくランダム化することができます。
Depth:他のモジュレータの量(Amount)とは異なり、右に振り切って効果最大。12時方向で効果0、左に振り切ってステップの値が上下逆転というように動作します。
Vector-4
XYと似ていますが、XYが縦軸と横軸にそれぞれ機能を割り振ってポインターを操作するのに対して、Vector-4は四隅に異なる機能を割り当ててポインターを操作します。
ポインターは四隅に振り切った場合はその機能のみ、中央付近に合わせた場合は各機能は25%程度ずつのブレンドになります。
Vector-8
Vector-4の上下左右追加バージョンです。
上下左右に隣り合うポイント同士がクロスフェードするので、Select-4の上下左右版のような動作をします。
Vector-4とはことなり、中央にポインターを合わせた場合はすべての機能の値が0になります。
XY
シンプルなXYコントロール・モジュレータです。
X(横軸)Y(縦軸)にそれぞれ機能を割り振ってポインターを操作します。
ポインターを左下に合わせた場合、XYそれぞれの値は0。
右上でXYそれぞれが100%で、中央に設定した場合はXYそれぞれが50%になります。
Vector、XYともに、機能を0から100%に設定した場合なので、機能をリバース方向に設定した場合の数値は今回の本文中のものとは異なりますので、あくまでもモジュレータ側のノブやスライダの値ということで判断してください。
今回の内容にはモジュレータの設定方法等には触れていないので、この記事から初めて読んでくれた方は、Modulation Systemsの共通メニュー解説の記事も合わせてご参照ください。
さて、今回でModulation Systemの各モジュレータの詳細解説を終えたので、次回からは他の新機能について順次紹介します。
BITWIG STUDIO 2をお持ちでない方は製品ページからデモバージョンがダウンロードできるので、試しにModulation Systemに触れてみてください。
といったところで今回はこの辺で。
それではまた次回!!