【連載】Mixcraft 6で音と映像をミックス2 Vol.6!

MixCraftマスタリング編大バナー

(2014/06/20)

Mixcraftの魅力をお伝えしている本連載。ここ数回は、マスタリングを取り上げています。
前回は音圧を上げる手法をご紹介するため、マスタートラックにイコライザーとコンプレッサーをインサート(挿入)しました。

コンプレッサーを使う理由はマスタリング編第3回にご紹介いたしましたが、イコライザーを使う理由は前回からご紹介しています。前回は、

  • 人間の可聴周波数域
  • オーディオ再生機器の周波数帯域
  • イコライザーで不要な周波数を削ることで、音量レベルに余裕が生まれるため

について、ご紹介いたしました。

前回の内容を簡単にまとめると、「人に聴こえる周波数は20Hz~20000Hzの間で、安価なスピーカーなどは100Hz以上のものしか再生されない場合がある。このような不要な周波数をイコライザーで削り、音量レベルに空きを作ろう!」っというのが、イコライザーを使用する理由です。

しかし、不要な周波数をカットする効果はもう1つありますので、それを今からご紹介していきます。

音をクリアにする

前回、音量レベルに空きを作るために、低い音(50Hz以下の低い周波数)をカットする図をご紹介しました。

可聴域外低域

この低い音をカットすると音量レベルだけではなく、音質にも影響がでてきます。例えば、低い周波数帯域が多く含まれている楽曲に対し、イコライザーで50Hz以下をばっさりカットすることで、全体の音質がクリアになることがあります。

例として、以下の音源を用意しました。EQ(イコライザー)で50Hz以下をカットした音源です。EQ前、EQ後、EQ前、EQ後の順番で流れますが、とても些細な変化のため、コンピュータ内蔵スピーカーではなく、イヤホン、もしくはヘッドホンでお聴きください。
もちろん、Reloop WAVE 8のような再生周波数帯域が広いスピーカーをお持ちであれば、それでお聴きいただくのが一番です。

変化を感じていただくことができたでしょうか?「ちょっとしか、変わっていない」と感じられたかもしれませんが、マスタリングはこのように少しずつ調整していただきます。マスタリングで大きな変化を与えてしまうと、ミックスで調整した意味がなくなってしまいますからね。

超低域≠不要な周波数

先ほどの音源のように、聴こえない周波数帯域も実は意味を成してくる場合があります。

ここでは50Hz以下の低い周波数、とても低い音について考えてみたいと思います。この50Hz以下のことを超低域なんて呼ぶこともありますが、先ほどは「この超低域をカットすると、音のこもりが取れることがある」と書きましたが、超低域=不要な周波数というわけではありません。

50Hz以下の超低域が含まれていると、耳ではきちんと聴こえなくも、音に圧力を感じることができるためです。

ダンス・ミュージックなどでは、低音を身体全体で感じることが重要視されたりもするので、「どんな場合でも50Hz以下の周波数をカットするわけではない」ということを覚えておいてください。

では、この超低域を感じていただくため、EQで50Hz以下をカットした音源を用意しました。EQ前、EQ後、EQ前、EQ後の順番で流れますが、こちらも些細な変化のため、ヘッドホンやモニター・スピーカーでお聴きください。

EQ前、EQ後、どちらがダンス・ミュージックに適した処理だと感じられましたか?

EQ前の方が、低音に迫力を感じませんか?このように、楽曲ジャンルによってマスタリングのアプローチを変えなければいけないところが、面白い所でもあり、難しい所でもあります。

音を整える、音に味付けする

これらのEQ処理ですが、「ミックスの時にもうやっているはずでは?」と感じた方もいるかと思います。もちろん、マスタリングの前の段階であるミックスで、低域の処理などは行っているはずですよね。

しかしマスタリングでは、音圧を上げる行程があります。この音圧を上げる作業は、「大きい音を圧縮し、全体の音量を持ち上げる」というものでした。

この全体の音量を持ち上げる際、今まで目立っていなかった周波数が持ち上がる場合があります。また、音を圧縮した時点で周波数バランスが崩れることもあるので、崩れた周波数バランスを修正するためにEQを用いることがあります。

また、「音質を大きく変化させたくないけど、若干音を温かくしたい」という、本当に細やかな処理を行いたいときが出てくることもあります。

こういう場合、Mixcraftでおすすめなプラグインが、「EZQ Equalizer」です。

EZQ Equalizer

操作方法は、とても簡単。中央の丸を、マウスで移動させるだけ!そうすると、周波数を意識することなく、音質を変化させることが可能です。
丸を、Brightに近づければ音が明るくなり、Warmに近づければ音が温かくなるようにと、簡単に味付けが可能です。

EZQ Equalizer

ちなみに以下の音源は、EZQ Equalizerを使用しています。EZQ Equalizerの設定は上の画像の通りです。

今回は、マスタリングでイコライザーを使用する利点についてご紹介いたしました。

音圧を上げる、音を整える、音に味付けを行う、という様々な処理に、イコライザーは深くかかわっています。みなさんも、コンプレッサーやマキシマイザーだけでなく、イコライザーにも注意を向けてみてください。

それでは!