【連載】Mixcraft 6で音と映像をミックス2 Vol.3!

Mixcraft6で音と映像をミックス、マスタリング編大バナー

(2014/05/30)

Mixcraftの魅力をお伝えしている本連載。副題の通り、取り上げているお題は「マスタリング」です。

前回は「マスタリングって、何をやっているの?」という、マスタリングの概要について説明を行いました。まだ読んでいない方は、ぜひともご一読を!

前回の予告通り、今回からはみなさんが一番気になるであろう「2ミックスに対しての音質調整」に焦点を絞って解説を行って行きます。まずは、2ミックスのレベル管理についてです。


音量レベルには上限がある

マスタリングは、「2ミックスに対して行う作業工程である」ということを前回ご説明いたしました。
ということは、「マスタリングの完成度は、2ミックスの出来不出来に関わってくる」ということになります。中でも気を付けていただきたい点としては、「2ミックスの音量レベル」です。

これはどういうことかというと、まず音の最大上限は0デシベルと決まっています。

▼ 音量良好

音量良好

▼ クリップ状態

音量クリップ状態

Mixcraftでいうと、右側の画像のように赤いランプがついている状態だと、0デシベルを超えていることになります。この状態を、「クリップしている」と言います。

では、何故クリップ状態がダメかというと、「音量レベルオーバーのため、音が歪んでしまうため」です。以下の音源は、最初の4小節は適正レベル、次の4小節はクリップを起こしている状態です。

※音量にご注意ください。

クリップを起こしていると、音が歪んでしまいます。こういった理由から、0デシベルは超えないよう注意してください。

アナログ機器に録音した場合、クリップして音が歪んでしまったとしても、デジタルのような嫌な歪みではなく、音楽的な歪みが発生する場合があると言われています。そのため、アナログ機器に音を録音する際は、音質変化を狙って、あえて音をクリップさせるというテクニックがあります。

これを応用したものが、エフェクトのオーバードライブ等です。この辺りについても、機会があれば今後の連載で詳しく説明したいと思います。

音圧って?

次に、音圧について説明したいと思います。

「音圧」という言葉は、ミックス、マスタリングを行うにあたって、頻繁に用いられる言葉です。音圧とは、「聴感上の音量」のことです。音圧の違いを感じていただくために、音源 A、音源 Bという2つの音源を作成しました。
音源 Aと音源 Bは同じ楽曲ですが、音源 Aに対し、ブラッシュアップしたものが音源 Bになります。
※以下の音源は、音源 A → 音源 B → 音源 A → 音源 Bという順番で流れます。

2つの音源は、同じ楽曲です。しかし、両者には明らかな違いがありますよね。音源 Bの方が大きく聴こえたかと思います。

しかし、両者の最大音量は一緒です。ただ、音源Bは、楽曲全体の平均音量が上がっています。

まずは、2つの音源の波形を見てましょう。2つとも0デシベル以内に収まっていますが、音源 Aはギザギザ部分が目立つのに対し、音源 Bは全体的に太くなっています。

▼ 波形比較

波形比較

波形の縦軸部分は、音量を表しています。よって、波形のギザギザ部分では、音量が大きくなっています。このギザギザ部分を、「ピーク」といいます。

このことから、音源 Aは音量に波がありますが、音源 Bは「音量が高い部分を小さくし、全体的な音量を上げている」と言えます。

では、何故音量が高い部分を抑える必要があるか説明します。

以下の図は、音量が高い部分がある音源を表しています。

▼ ピーク図解

ピーク図解

この音源を大きくしようにも、0デシベルという上限が決まっている以上、この音量が高い部分が残った状態ではちょっとしか音を大きくすることができません。ボリューム・フェーダーをあげると、全体的に音が大きくなってしまい、音量が大きい部分が0デシベルを超えてしまうためです。

▼ ピーク図解(ボリュームフェーダー操作後)

ピーク図解2

では、この音源をコンプレッサーなどを使って音量が高い部分を小さくしてみます。

※コンプレッサーについては、Mixcraft 6で音と映像をミックス Vol.16!をご参照ください。

▼ ピーク図解(コンプレッション後)

ピーク図解3

そうすると、音量を小さくした分だけ余裕が生まれ、全体的に音量を上げることが可能です。

▼ ピーク図解(音圧上げ後)

ピーク図解4

こういった理由から、音量が高い部分を小さくし、音量を平均的に揃える必要があります。その後、全体的に音量を上げると、聴感上の音量が上がります。言い換えると、「音圧が上がった」と言えます。

マスタリング時の「音量が大きい部分を小さくしてから、全体的な音量を上げる作業」では、マキシマイザーというエフェクターが使用されます。今後の連載で、このマキシマイザーの説明を行いますので、今は「マキシマイザーというエフェクトがある」ということだけ覚えておいてください。

この音圧を上げる作業は、マスタリングにおいて重要な作業の1つです。

ミックスの段階で音圧を限界まで上げておくと、マスタリングで出来ることが限られてしまいます。そのため、ミックスが終了した段階で、音量レベルに余白を残しておく必要があります。

どの程度余白を残す必要があるかというと、楽曲のピーク部分がマスター・トラックのメーターで、「-3db ~ -6db」以内に収めることを推奨しているマスタリング・スタジオが多いようです。この余白のことを、「ヘッドルーム」といいます。

マスタリング・スタジオによっては、ヘッドルームについての注意点が書かれています。この機会に、「ヘッドルーム」という言葉は覚えておいてください。

マスタリングは、楽曲制作において最終行程です。そのため、レベル管理は非常にシビアに行われます。最後のマスタリングで、「ちょっと音が歪んでしまった」ってことになったら、大変ですからね。

次回も、引き続きレベルについて説明します。それでは!