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ハードウェアシンセサイザーを活用するためのMIDI知識 vol.4

今回はM4U eX / M8U eXのスタンドアローンでの使用例の中からMIDIマージ機能の活用例について紹介しましょう。

MIDIマージ機能とは?

MIDIが普及し、様々な製品が充実してきた1980年代初期には、MIDIマージボックスやMIDIスルーボックスなどのようにMIDI信号の流れ方をマネジメントする機器がありました。M4U eXやM8U eXには、これらのようなMIDI機器で行なっていたマージ機能やスルーボックス機能を装備しています。それらの使い方を知っておくことで、ハード音源を複数使用する際の効果的な環境構築において活用することができるでしょう。

さて、今回紹介するMIDIマージ機能の「マージ」は英語のMerge(取り混ぜる、併合する、合流する、などの意)のことで、複数のMIDI機器から送信されるMIDI情報を単一のMIDI機器に受信させることを言います。

MIDIマージ機能のイメージ図

端的な例では、一つの音源モジュールを異なる2台のMIDIキーボードやシンセサイザーで演奏したい場合、マージ機能を使用することによって2台のキーボードの弾き分けがMIDIケーブルの差し替え無しに行なえることが挙げられます。

では実際に設定方法について見ていきましょう。

本体の設定と接続例について

ここではM8U eXを使用して解説しましょう。

まず、フロントパネルの右側にあるMODEボタンを押して、MIDIマージモード(=モード3)に設定します。モード3に設定されているかどうかは、左側に配置されているLEDのポート16が赤色に点灯しているかどうかチェックしてください。

本体をモード3に設定した状態。尚、M8U eXの場合にはポート16を確認するが、M4U eXの場合にはポート8の部分を確認しよう。

続いて、コントロールするMIDI機器(ここではMIDI端子装備のエレクトリックオルガン(HAMMOND XB-1)とエレピ(Rhodes MK-80)のMIDI OUTをM8U eXのポート1、2に接続し、M8U eXのポート16から音源モジュール(Roland INTEGRA-7)のMIDI INに接続しています。接続が完了するとM8U eXのLED部分でポート1と2の部分が点滅状態となります。

2台のキーボードと1台の音源モジュールを接続した状態。

とはいえ静止画像だとわかり辛いかと思います。画質はあまりよくないのですが、スマホで実際につないだ状態のM8U eXのLEDがどのような動きになっているのかを数秒程度録画してみましたので、こちらをご覧下さい。

マージ機能使用時のLEDの状態。奥に見えるのがコントロール用のキーボードとして使用しているMK-80とXB-1。音源モジュールのFS1Rは電源は入っているが、今回は使用していないので、M8U eXとは接続していない。

接続例では、MK-80でINTEGRA-7の1パート目をコントロールし、XB-1の方で2パート目をコントロールしています。もちろん、MIDIチャンネルをそれぞれのキーボードで適宜切り替えれば、同じパートを2台のキーボードで弾き分けることもできますので、INTEGRA-7のピアノの音をピアノタッチタイプの鍵盤、オルガンタッチの鍵盤で必要に応じて弾き分けられるということです。特にライブ演奏時には、曲によって複数の音色を切り替えながら演奏するケースも多々ありますし、左右の手で別々の音色を同時に演奏する場合、ピアノの音色をオルガンタッチの鍵盤で弾かなければならないようなケースなどもあります。このような場合にはMIDIマージ機能を使用した複数のキーボードの弾き分けが非常に重宝するだけでなく、最適な解決策にもなるでしょう。


内藤朗

キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、サウンドクリエーターなど様々な側面を持ち、S.E.N.Sのレコーディングサポート、安部OHJIの様々なプロジェクトでのレコーディング、ライブなどに関わるなど、作編曲からレコーディング制作、ライブ演奏など多方面で活動中。MIDIやDTM関連の分野では黎明期から今日に至るまで長きに渡り関わっており、多様な経歴を持つ。また、音楽制作系のライターとしても広く知られ、近著に「音楽・動画・ゲームに活用! ソフトシンセ 音作り大全」(技術評論社刊)、共著「ミュージッククリエイターハンドブック 2023年改訂版」(ヤマハミュージックエンターテインメントホールディングス刊)などがある。有限会社FOMIS代表取締役、一般社団法人日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)正会員、MIDI検定指導研究会会員。