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ハードウェアシンセサイザーを活用するためのMIDI知識 vol.3

ESIのMIDIインターフェイスラインナップを紹介する本連載3回目は複数ポートを備えた「M4U eX / M8U eX」を紹介しましょう。

M4U eX / M8U eXの特徴について

まず、M4U eXは8ポート、M8U eXは16ポートのMIDIポートを装備しています。前回紹介したMIDIMATE eXと同様、MIDI端子のIN/OUTは固定されていないため、フレキシブルにMIDI機器の接続を変更することが可能です。

例えば、USB MIDIインターフェースとして使用した場合、各ポートをMIDI OUTとして使用すると、最大でM4U eXは8台、M8U eXは16台のシンセ、あるいは音源モジュールを使用して演奏させることができます。

更に使用しているシンセや音源モジュールがマルチティンバータイプのものであれば、実際に演奏させるパート数は最大で256パート分の演奏をコントロールできることになります(※)。

(※)M8U eXを使用した場合、かつ、コントロールするシンセ、あるいは音源モジュールが全て16パートのマルチティンバータイプのものの場合

MIDIポートという考え方について

さて、冒頭でも説明したとおり、M4U eX / M8U eXは、複数のMIDIポートを持っていますが、この「ポート」という概念が今一つ分からないという人も多いかと思います。

ソフトシンセを使用している場合は、MIDIポートということをそれほど意識しなくても、作業的に困らないことが多いのですが、ハードウェアのシンセサイザーや音源モジュールを多用する場合には、「ポート」の理解が不可欠です。

元々MIDI規格においては、「MIDIチャンネル」という考え方に則ってMIDIによる演奏情報を送受信しており、そのチャンネル数は16チャンネルと規定されています。

MIDIチャンネルのイメージ図

分かりやすく言うと、MIDIケーブル1本の中を行き来するMIDIデータは16人分の演奏情報が扱えるということです。

では、2台の16パートのマルチティンバータイプの音源モジュールを別々にコントロールしたい場合はどうでしょうか?

この場合、トータルで32パートをコントロールすることになりますが、MIDIチャンネルは16までですので、それ以上のパートはMIDIのチャンネル番号が重複することになります。

当然チャンネル番号が重複してしまえば、同じ演奏になってしまいます。そこで、どちらの音源モジュールのMIDIチャンネルをコントロールするのか識別するために、ポートという考え方が役に立ってきます。

実際には同じMIDIケーブルの中を流れる16チャンネルを1つのまとまりとしてとらえ、これを1ポートとして扱います。これによって、どちらの音源モジュールをコントロールするMIDI情報なのかが区別され、同じMIDIチャンネル番号であってもどちらの音源モジュールに対する情報なのかが、識別されるワケです。また、DAW上での設定においては、演奏トラックをどのポートのMIDI出力を割り当てるかを設定すると共に、演奏トラックと音源モジュールで演奏させるパートのMIDIチャンネル番号を同じにすることを忘れないようにしましょう。DAWの演奏トラックが1チャンネルで演奏情報を送信した場合は、音源モジュールの演奏パートも同じ1チャンネルで受信しないと意図する演奏となりません。丁度テレビを視聴する際に、見たい番組の放送局のチャンネルにテレビのチャンネルを合わせるのと同じと言えます。

DAW上での設定例

実際にM4U eXを使用して、音源モジュール2台コントロールする際の設定例をCUBASE PRO上で行う場合について紹介しましょう。

各音源モジュールを2パートずつ、全部で4パートをコントロールする場合は、以下のような設定になります。

  • 音源モジュール 1の1パート ポート:M4U eX 1 MIDIチャンネル:1チャンネル
  • 音源モジュール 1の2パート ポート:M4U eX 1 MIDIチャンネル:2チャンネル
  • 音源モジュール 2の1パート ポート:M4U eX 2 MIDIチャンネル:1チャンネル
  • 音源モジュール 2の2パート ポート:M4U eX 2 MIDIチャンネル:2チャンネル

それぞれMIDIトラックの設定状態。黄色の枠線で囲んだ部分が設定箇所。尚、MIDIチャンネルはトラック上、左のインスペクタ部分のどちらでも設定できる。

尚、M8U eXを使用した場合でも同様に設定します。M4U eXの違いはポート数のみですので、設定例を参考に行なってみると良いでしょう。


内藤朗

キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、サウンドクリエーターなど様々な側面を持ち、S.E.N.Sのレコーディングサポート、安部OHJIの様々なプロジェクトでのレコーディング、ライブなどに関わるなど、作編曲からレコーディング制作、ライブ演奏など多方面で活動中。MIDIやDTM関連の分野では黎明期から今日に至るまで長きに渡り関わっており、多様な経歴を持つ。また、音楽制作系のライターとしても広く知られ、近著に「音楽・動画・ゲームに活用! ソフトシンセ 音作り大全」(技術評論社刊)、共著「ミュージッククリエイターハンドブック 2023年改訂版」(ヤマハミュージックエンターテインメントホールディングス刊)などがある。有限会社FOMIS代表取締役、一般社団法人日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)正会員、MIDI検定指導研究会会員。