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ハードウェアシンセサイザーを活用するためのMIDI知識 vol.2

ESIのMIDIインターフェースラインナップを紹介する本連載2回目はシンプルなケーブルタイプ「MIDIMATE eX」をピックアップして紹介したいと思います。

ESIのMIDIインターフェースの特徴について

MIDIMATE eXを始めとしてESIのMIDIインターフェース製品群は、各製品共に従来多かった同種の製品のようにMIDI端子のIN/OUTが固定されていない点が大きな特徴です。これによってハードウェアのMIDI機器を多用するユーザーや状況に応じて接続を変更することが多いユーザーには大きなメリットであるとともに本製品のアドバンテージにもなっています。

今日、一般的に使用される接続規格であるUSBやThunderBoltなどは両端の端子部分の形状は異なるものの、基本的に1本のケーブルで信号を送受信していますので、1本のケーブルをつなげれば良いものになっています。

しかしながら、2つのMIDIデバイスで双方向のMIDI信号送受信を行うためには、信号を送る側の機器のMIDI OUTから受信する側の機器のMIDI INをイメージ図1のようにお互いに接続する必要があり、MIDIケーブルは2本必要となるワケです。

MIDI IN/OUTのイメージ図。

もちろん、MIDIキーボードで音源モジュールをコントロールするのみであれば、DAWやMIDIキーボードのMIDI OUTから音源モジュールのMIDI INにつなげるだけでも良いのですが、音源モジュールの音色データや本体の設定をDAWに保存したい場合などには音源モジュールのMIDI OUTとDAW側のMIDI INをつなげる必要があります。

MIDIMATE eXの活用例

一番シンプルなケーブルタイプであるMIDIMATE eXは、1つのUSB端子と2つのMIDI端子で構成され、接続バリエーションとしては1 IN/1 OUT、0 IN/2 OUT、2 IN/0 OUTのように使い分けることができます。

基本的にUSB端子はパソコンとの接続に使用し、MIDI端子側をどのように使うかを接続例として以下の3通りの方法で考えてみましょう。

(1)1 IN/1 OUTの場合


おそらく一番使用頻度が多い接続方法だと思いますが、MIDIキーボードのMIDI OUT、音源モジュールのMIDI INに接続するケースです。この場合はDAWベースでの制作の際にMIDIキーボードによる演奏のMIDIデータを録音したり、演奏トラックを音源モジュールで再生する場合などはこのように接続すると良いでしょう。

また、音源モジュール、鍵盤タイプ問わずハードウェアのシンセサイザーのファクトリープリセットの音色データのバックアップなどにも活用できます。

最近のモデルだと本体でリセットして初期状態に戻した際にプリセット音色のデータも復旧できるものも多いのですが、製造年の古いモデルの中には一度消したら戻せないモデルもあります。また、新旧問わず自分で作成したり、エディットを行なった音色データをまとめてバックアップしておきたい時などもバルクデータとしてDAWにリアルタイム録音してしまうことで、DAWをMIDIデータファイラー的に活用できます。

試しにYAMAHAのFS1Rで試してみたところ、難なくバックアップすることができました。

FS1RのリアパネルのMIDI端子部分。MIDIMATE eXのMIDI端子をそれぞれFS1RのMIDI INとOUTにつないだ状態。パソコン側にはUSB端子で接続している。

FS1Rの音色データをDAW側へ送信している際に本体上に表示されるメッセージ。DAW側への録音はまず、DAWのMIDIトラックを録音状態で走らせ、その後、音源モジュール側の送信スイッチを押すと良い。

CUBASE上にバルクデータを録音した状態。

その際、機器や設定、接続などによっては、バルクデータ送受信の際にバッファエラーを生じる場合があるかもしれません。

その場合には使用する機器やDAWなどの設定を変更したり、送信側のMIDI機器のMIDI OUTからの接続だけにして、送信側のMIDI IN端子にはケーブルを接続しないようにするなど試してみると良いでしょう。

(※)MIDIでいうところのバルクデータとは、MIDI機器の設定状態や音色データなどを一括したものを言います。

(2)0 IN/2 OUTの場合


パソコン上のDAWで作成したデータを2台の異なる音源モジュールなどで再生したい場合などに活用できます。

この接続の場合、使用する音源モジュールにもよりますが、16パートのマルチティンバー音源モジュールを2台使用した場合であれば、最大で32パートの演奏を扱えることになります。

MIDIはテレビ放送と同じように“チャンネル”という考え方で演奏情報をやり取りしており、規格として16チャンネルの演奏情報が扱えるようになっています。

そのため、DAWで作成したMIDIの演奏データをハードウェアの音源モジュールで再生したい場合には、それぞれのMIDIチャンネルを同じ数字にしておく必要があります。

DAWで作成したMIDIの演奏データを1チャンネルで送信した場合であれば、ハードウェアの音源モジュールも1チャンネルにしておくということです。

(3)2 IN/0 OUTの場合


例えば異なる2台のMIDIキーボードあるいはMIDIコントローラーなどを使用した演奏のMIDI情報を同時、あるいは個別にDAWに録音したい場合などに活用できます。

CUBASE PROの場合であれば、図5のようにMIDI INポートが表示されますので、トラック毎にどちらのMIDI機器を使用するかを選択することで入力設定が行なえます。

同じくCUBASEのMIDIトラックのMIDI入力設定部分。ポート番号をしっかり確認しておくのがベター。

また、MIDIMATE eXを使用する場合、MIDI INとOUTなどの区別ではなく、単純にポート番号のみになりますので、どちらのMIDI端子につないだのかを予めチェックしておくと良いでしょう。

内藤朗

キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、サウンドクリエーターなど様々な側面を持ち、S.E.N.Sのレコーディングサポート、安部OHJIの様々なプロジェクトでのレコーディング、ライブなどに関わるなど、作編曲からレコーディング制作、ライブ演奏など多方面で活動中。MIDIやDTM関連の分野では黎明期から今日に至るまで長きに渡り関わっており、多様な経歴を持つ。また、音楽制作系のライターとしても広く知られ、近著に「音楽・動画・ゲームに活用! ソフトシンセ 音作り大全」(技術評論社刊)、共著「ミュージッククリエイターハンドブック 2023年改訂版」(ヤマハミュージックエンターテインメントホールディングス刊)などがある。有限会社FOMIS代表取締役、一般社団法人日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)正会員、MIDI検定指導研究会会員。