INSPIRATAの各エディションの違いについて
はじめまして、今回初めて記事を投稿します、密林です。
先月の発売からプロ〜アマ問わずに人気のプラグインINSPIRATAですが、「私にはどのエディションがいいの?」というご質問をいただきますので、INSPIRATAと各エディションの紹介をしておきましょう。
INSPIRATAとは?
INSPIRATAは、非常に高品質なリバーブプラグインであることに加え、INSPIRATA内で用意されている様々な空間内に音源やリスニングポイントを自由に配置したり、それをリアルタイムで動かしたりできる、究極の次世代イマーシブ・リバーブ・ワークステーションです。「イマーシブ・リバーブ・ワークステーション」とは、「没入型」、つまりあたかも実際の劇場にいるような空間を音の定位や反響・残響で再現するソフトウェア(プラグイン)、を意味します。
プラグイン本体とは別に、現役の音響コンサルタントが長年研究・開発し、専門家のみが長年使用していたツールや測定値に基づいた、コンサートホール、劇場、礼拝堂、シンプルな室内など空間データをバーチャルで再現したルーム・コンテンツ・ライブラリー<Roompack>が付属し、それらの空間データを選択して更にパラメーターを編集することで、臨場感溢れる超リアルなリバーブサウンドを実現します。
INSPIRATAの4つのエディション
INSPIRATAは、「Lite」「Personal」「Professional」「Immersive」と別々のエディションが用意されています(Immersive Editionは近日発売予定)。
各エディションはグレードが上がるごとに機能が増え、入門版のLiteから順にPersonal、Professional、超高機能なImmersiveまで4モデルに分かれています。モデルごとにそれぞれできることが明確に異なってきますので、本記事では各モデルの違いについてざっくりと紹介します。
INSPIRATA Lite Edition
最もシンプルで使い勝手の良いバージョンです。12 GBのルーム・コンテンツ・ライブラリーを搭載したステレオ・リバーブ・ワークステーションです。
一言で言うと、Lite Editionはその名の通り容量、負荷が軽く、お手軽に使用できるコンボリューションリバーブです。
※ コンボリューションリバーブとは、実際に録音されたIR(インパルスレスポンス – インパルス応答)データを活用した、リバーブの一種です。
画面を見てみましょう。
BASICページ
BROWSERページ
Lite EditionはBASICページ、BROWSERページ、そして右側のメインコントロールパネルで構成されています。
難しそうなパラメーターやページを省いている為、シンプルで使いやすい構造になっています。
基本的な使用方法としては、BROWSERページにて空間を選択し、右側のメインコントロールパネルで基本的なリバーブのパラメーターを調整するというもので、一般的なステレオリバーブの使用方法に近いと言えるでしょう。
では一般的なコンボリューションリバーブとの違いが気になるところですが、INSPIRATA Lite Editionの大きな優位点として、使用できる空間の質と数があります。実はLite Editionは操れるパラメーターに制限はあるものの、使用できる空間の数は上位エディションと同様、49種類全て扱うことができるのです(但し、Lite Editionでは「音響空間に音源とリスニングポイントを自由に配置し、リアルタイムに調整可能」の機能はお使いいただけません)。
Lite Editionは簡単で直感的に、高品質・空間数の多いコンボリューションリバーブを使用したい、という方にピッタリなエディションです。
INSPIRATA Personal Edition
今までのサンプリング・リバーブにはなかった柔軟性を備えたステレオ・リバーブ・ワークステーションです。ユーザーは、パラメーターを細かく調整し、選択した空間に音源とリスナーを配置することができます。デフォルトのルーム・コンテンツ・ライブラリーのサイズは193 GBです。
INSPIRATAの特徴の一つである「音響空間に音源とリスニングポイントを自由に配置し、リアルタイムに調整可能」の機能は、このPersonal Edition以上のエディションで使用することができます。
画面を見てみましょう。
BASICページ
FINETUNEページ
BROWSERページ
Personal EditionにはFINETUNEというページが新たに追加されていることが分かります。
このFINETUNEページにPersonal Edition以降の目玉となる機能が搭載されています。それが上述した「音響空間に音源とリスニングポイントを自由に配置し、リアルタイムに調整可能」の機能で、このページで設定することができます。
中心のGLOBALのゾーンではリバーブやマイクの指向性等の、いわゆる「難しそうなパラメーター」の調整ができるようになっています。
右側のメインコントロールパネルにも新たにパラメーターが追加されていますね。
Lite Editionと比べると、一気に難しい印象となりましたが、これらの機能がまさに、数あるコンボリューションリバーブから発展した、INSPIRATAの「究極の次世代イマーシブ・リバーブ・ワークステーション」のコンセプトそのものと言えるでしょう。
Personal EditionはいわばINSPIRATAのベーシックなエディションで、INSPIRATAの目玉機能を使ってみたいという方にピッタリなエディションです。
INSPIRATA Professional Edition
機能セットを拡張し、今までのサンプルリバーブにはない柔軟性を備えたイマーシブ・リバーブ・ワークステーションです。その卓越した機能セットには、パラメーターの微調整や、音源とリスナーの位置合わせが可能です。ステレオ構成はもちろん、シンプルなサラウンドから7.1.2 Dolby Atmos®構成まで、幅広いマルチチャンネル出力オプションに対応しています。
Professional Editionは7.1.2チャンネルまでのサラウンド対応に加え、Personal Editionに加わったパラメーターを、更に細かく調整することができるようになったエディションです。
画面を見てみましょう。
BASICページ
FINETUNEページ(5.1チャンネルのトラックにインサートした際の画像です)
BROWSERページ
一見Personal Editionと変わらないのでは無いかと思うかも知れませんが、FINETUNEページに新たにボタンが2つ増えていることが分かります。中央の「PER SOURCE」ボタンと、下の「ルーティング設定」ボタンです。
下の「ルーティング設定」ボタンを押すと、右側のメインコントロールパネルが、ルーティング設定の画面に切り替わります。
この画面にて、インプットチャンネルと、配置されている音源のルーティング設定が出来ます。
Professional Editionはこの画面で音源を16個まで配置できます。
お次は、中央のボタン「PER SOURCE」。押すと、Personal Editionにて追加されたGLOBALゾーンのパラメーターを、配置されている音源それぞれに適用させることができます。
SPATIAL、GAIN、ENV、EARLYのパラメーターがそれぞれの音源で調整可能
Professional Editionはマルチチャンネル対応、配置できる音源の追加とその微調整ができるようになり、INSPIRATAの巨大な空間ファイルをより活かせるようになりました。
と、ここで「ステレオ制作しているからProfessionalにする必要無いのかな?」と思う方もいらっしゃると思います。が、Professional Editionでは、マルチチャンネル対応と配置できる音源の追加により、複数のトラックの音を、1つのINSPIRATAの空間内に配置できる活用法もあったりするのです(※ マルチチャンネルトラックに対応していて、バス・ルーティングが備わったホストアプリケーションが必要となります)。
詳しくは、別の記事でご紹介しておりますので、是非ご覧ください。
ご使用いただいているホストアプリケーションにもよりますが、ステレオ制作をしている方にもメリットを感じられる機能が追加されていますので、それを含め、INSPIRATAの全ての魅力を存分に引き出したいという方にピッタリなエディションです。
各エディションの機能比較を表にするとこんな感じです。
機能 | Lite | Personal | Professional | Immersive ※ |
Input / Output ゲイン | ![]() |
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Low / High カット・フィルター | ![]() |
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Dry – Wet レシオ | ![]() |
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ダイレクト – リバーブ音 レシオ | ![]() |
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プリディレイ | ![]() |
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幅 – 空間体験のコントロール | ![]() |
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クラリティコントロール – ディケイタイムを変えずに初期反射の密度を調整
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音源とリスナーの距離 | 2箇所 | 連続調整可能 | 連続調整可能 | 連続調整可能 |
DIR、ER、LATE スイッチ:ダイレクトサウンド、アーリーリフレクション、レイトリフレクションの設定
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リスナー視点のローテーション | ![]() |
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ブラウザー・ビュー | ![]() |
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音源とリスナーの自由な位置関係 | ![]() |
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最大音源数 | 2 | 2 | 16 | 48 |
ルーティング・マトリクス – プラグイン入力を異なる音源にルーティング | ![]() |
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空間、ゲイン、および遅延の詳細なコントロール | ![]() |
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アーリーリフレクション、レイトリフレクション、エンベロープエフェクトの詳細なコントロール
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音源ごとの空間、ゲイン、アーリーリフレクション、エンベロープの各パラメーターの個別コントロール
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仮想マイクロフォンの指向性の調整 | ![]() |
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サラウンド出力オプション | ステレオ | ステレオ | 最大7.1.2 | 最大22.2 |
サンプルレート | 44.1、48 kHz | 44.1、48、88.2、96 kHz | 44.1、48、88.2、96 kHz | 44.1、48、88.2、96、176.4,、192、384 kHz |
※ Immersive Editionは近日発売予定です。
いかがでしたでしょうか。今回はざっくりとですが各エディションの紹介をしました。
どのエディションを購入したいか迷っている方々に向けて記事を書いてみましたが、お力になれましたでしょうか。 もし自分に合ってたエディションが分からない場合でも、INSPIRATAにはアップグレード版(Lite → Personal、Personal → Professional他)が用意されているので、気軽に選択し、ゆっくりとエディションを上げていくのも良いかも知れませんね。
それでは次の記事でお会いしましょう。