Infected Mushroom 独占インタビュー 後編
Polyverse社との共同開発で、革新的なプラグイン I WISHを世に送り出したサイケデリック トランス界の超大御所、”Infected Mushroom”。
最近ではプラグインブランドのWAVESともコレボレーションをして、これまたユニークなマスタリング用プラグインもリリースしていましたね。
彼ら独自の世界観を反映したユニークな製品開発の経緯や裏話は、独占インタビュー 前編で詳しくお伝えしましたので、後編では彼らの音楽制作環境や使用している機材などについて、掘り下げてみたいと思います。
https://dirigent.jp/topic/69090/
95%くらいはコンピューターの中で処理できるようになってきた
Dirigent(以下 D):
現在は、どんな機材で制作をされているんですか?
エレズ:
DAWはずっとCubaseを使っていて、常に最新版にしている。僕らのスタジオは自分でもかなり充実してると思ってるよ。メインコンソールはSSLで、アウトボードエフェクトだとリバーブはLexicon 960L やEventide H8000FWがメインかな。ボーカルにはNeve(wiki)のプリアンプとか、Avalon DesignやUADのコンプレッサーをよく使うね。
アミット:
フルデジタルで制作していると思う人もいるかもしれないが、僕らはけっこうボーカル録音の回数が多いから、やはりまだアウトボードも必要なんだ。ただ、ここ数年コンピューターの外で作業する割合はどんどん減ってきていて、最近ではおそらく全体の95%くらいの作業はコンピューターの中で行っていると思うよ。
たとえばLexicon 960Lは素晴らしいリバーブだけど、最近のプラグインでは驚くほどのクオリティのエフェクトが沢山ある。何よりも、ユニークな製品を探したら、今はほとんどプラグインばかりだからね。WavesやEastWestのプラグインエフェクトは手放せないよ。
D:
それでは、インストゥルメントではどんなプラグインがお気に入りですか?
エレズ:
Xfer Records Serumはアメイジングだね。
アミット:
おっと、Spectrasonics Omnisphere2も忘れちゃいけない。心から愛しているインストゥルメントだ。エリック・パーシング(Spectrasonics創業者/サウンドデザイナー)って本当に天才だよ。あとEastWestの音源ライブラリも重要だね。
エレズ:
EastWestは最高のプラグイン・リバーブ Spacesもあるし。
アミット:
定番モノだとNative InstrumentsのReaktor、Massive、Damage、Kontaktあたりもだね、僕らはとにかくあらゆるツールを使い倒すのが好きなんだ。
そもそも20年前に音楽制作をはじめた時から、手に入るプラグインやツールはなんでも試していた。その頃はお金がなかったから、アウトボードも揃えられず、何もかもPCの中でやっていたよ。当時としてはまだまだ少数派なスタイルだったけどね。それから、徐々にアウトボードを増やしていったんだ。
エレズ:
よく日本で機材を買ったもんだよね。
アミット:
秋葉原でいろんなアナログ機材を買っては、せっせとイスラエルに運んだよ。Juno60(英語wiki)をはじめとして、Doepferのシステムとか、アナログ物はほとんど日本で買っていた。どこの店で買ったとかは全く覚えてないけど、とにかく歩き回って探していたよ。
エレズ:
初めてライブで来日したのが97年で、その時から秋葉原で機材を買い集めて、そうやってだんだん今のスタジオが出来上がっていったんだ。もちろんニューヨークやドイツなんかに行った時も、常に機材を探し歩いていた。
アミット:
ハードウェアの音楽機材はすごく高価で持ち運びも大変だったよね。ハードケース入りのJuno60をハンドキャリーで持って帰るのは大変だったな…。その頃を思い出すと、プラグインの進化はすごいスピードだと感じるよ。今はだれでもPCを持っていて、いつでも音楽を始められるからね。
今の時代は、過去と比べてBetterでもWorseでもなく、Moreなんだ
D:
逆に、最初はどんなシステムから始められたんでしょう?
アミット:
スタート時点ではImpulse Tracker(英語wiki)を使っていた。鍵盤も使わずにPCと記号のみでひたすら数字を入れていくんだ。それから鍵盤を買って、わりと早い段階でCubaseに移ったよ。
D:
PCベースの制作を始める前には、お二人にはどんな音楽的なバックグラウンドがあったんですか?
アミット:
僕ら二人とも、クラシックのキーボードを学びつつ、キーボードプレーヤーではあったけど独学でコンピューターの勉強もしていたんだ。二人が出会ってInfected Mushroomを始めるまでは、お互いに普通のロックバンドでキーボードを演奏していた。
当時はまだトランスミュージックが全く知られていない頃だったものの、その音楽性にガツンとやられて一気にトランスにハマっていった。今じゃどこの国でもラジオをつければいくらでも流れてくる、でもその頃トランスミュージックが受け入れられていたのは、世界でもヨーロッパの一部と日本だけだったんだ。
日本の文化は、いつもとても柔軟に多くのものを取り込んでいる気がするな。まだアメリカの人々がトランスミュージックの可能性に気付く前から、日本には素晴らしいシーンが出来つつあった。日本には何度も来ているけど、常に何かしら新しい発見があって、本当にたくさん刺激を受けるよ。
エレズ:
自分たちのショー以外にも、日本のクラブにはいっぱい行ったね。
D:
今回の来日は、今朝LAから成田について夜にDJ、明日飛行機で上海に移動して夜ライブなんですよね?
アミット:
そう、そして明後日LAに帰るんだ。二人とも子供がいるしLAにスタジオもある。昔は一度日本に来たら3週間とか滞在したけども、さすがに今はできないよ。やる事が沢山あるし、子供と過ごす時間を大切にしたい。
最近インタビューの時なんかに、音楽制作だけではなく、現在の音楽シーンの移り変わりや、インターネットによる生活の変化なども含めて、「今の環境は、昔と比べて良くなったか悪くなったか?」と聞かれる事があるけど、良い悪いではなくて、単純に「More(もっと/より多い)だ」と答えるようにしているんだ。音楽の入り口が広がったことによって、作られる楽曲の数も、クオリティーの幅も大きく広がった。もちろん、その幅の広さに個人的な好き嫌いはあるだろうけど、それが良いか悪いかは誰かの主観で決めることではないだろ?
だから今は昔と比べて、Better(より良い)でもWorse(より悪い)でもなく、More(より多い)なんだよ。音楽だけに限った事でなくね。その中から何を拾い上げるかで、みんなのセンスが問われてくるんじゃないかな。
https://dirigent.jp/campaign/71087/
2カ国それぞれの滞在時間が、往復の飛行機の時間より短いという強行スケジュールの中、I WISHプラグインから自らの歴史まで熱く語ってくれたお二人。インタビュー前後編を読んだ後に彼らの楽曲を聴くと、また違った印象を受けるかもしれませんね。
今後の彼らの活動と、それを支えるPolyverse製プラグインの活躍にご注目ください!
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