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【前編】ディリゲントと愉快な仲間たち Vol.7 ~Infected Mushroom~

Infected Mushroom 独占インタビュー 前編

5月末に国内発売となったPolyverse社の革新的なプラグイン I WISH

サイケデリック トランス界の超大御所、”Infected Mushroom”との共同開発による製品で、アーティスト名だけでなく、楽曲の名前を名称に冠しているところが目を惹きます。

日本発売の2日後、絶妙なタイミングでInfected Mushroomのお二人が来日されるということで、開発の経緯や裏話など、がっつりとインタビューしてみました。

※後編はこちら

【後編】ディリゲントと愉快な仲間たち Vol.7 ~Infected Mushroom~


金曜夕方にLAから成田に着いて、そのまま深夜に渋谷でDJセット、翌日土曜の昼に上海に移動してフルバンドのライブ、そして日曜午後にはLA行きの飛行機に乗るという弾丸日程の中、渋谷のホテルにチェックインした直後の、アミットとエレズの二人を拘束。

10数時間のフライト後に2時間のリムジンバスで旅疲れMAXにもかかわらず終始笑顔のインタビューとなり、激しいステージや楽曲とは裏腹な、”ザ・きさく”な対応に感謝です。

はじめはI WISHという曲を作るためのツールだった

Dirigent(以下 D):
”I WISH”プラグイン開発の第一歩はどこから始まったんですか?

アミット:
最初のアイデアは2003年頃、楽曲I WISHを書いている時だから、ちょうどアルバム”Converting Vegetarians”が出た頃だね。
I WISHの曲を作り始める段階で、とても面倒くさくてユニークな方法を思いついた。
僕のボーカルを細かくバラバラにチョップして、その細かいパーツのチューンを一つ一つ変更してフレーズを組み立ててみたんだ。
これがI WISHプラグインの始まり、アイデアの第一歩だよ。
その時は、まさかこの作業が簡単にできるプラグインを作るなんて考えもしなかったね。

im_amit01

エレズ:
1日目は、さんざんオーディオデータのエディットを繰り返して、結局うまくいかなかったから、次の日にはNative Instruments Reaktorで簡単なパッチを組んで、試したりしていた。
たまたまスタジオに来ていた、友人でプログラマーのAssaf (Polyverse社 CEO)に相談したら、「いいよ、じゃ今ちょっと作ってみるかい?」と言って、プロトタイプのプログラムを20分で書き上げたんだ。

D:
20分!? それはReaktorでパッチを組んだんですか?

エレ
いや、ゼロからC++でプログラムを書いた。彼は本当に天才だよ。

アミット:
僕らはプログラマーではないから、当時は何か新しいアイデアがあるとReaktorをいじくり回すしかなかったんだ。今ほど音楽用プラグインの種類もなかったしね。
Assafの作ったプログラムを使って、楽曲 I WISHはそれまでにない斬新なサウンドとなったんだ。

その後、僕らの実際の楽曲制作の中で、考え付く限りのアプローチで2年かけて様々なテストをした。これは、他のどのプラグイン制作会社にもできない事で、本来の意味でのミュージシャン目線で作られたプラグインと言えるだろう。

その期間中に作ったConverting Vegetarians II は、すべての曲でI WISHが使われているよ。しかも、全部違う使い方でね。
同じサウンドにはしたくないから、I WISHのいろんなオプションをフル活用しているんだ。

 

※ I WISHを使い倒したアルバム ”Converting Vegetarians II”はこちら!

D:
I WISHはいわばあなた方の”秘密兵器”だったわけですが、プラグイン製品として販売することになったきっかけはあったんですか?

アミット:
もちろんエレズと僕には、I WISHをはじめとしていくつかの秘密のサウンドツールがあるよ。ただ結局のところ、大事なのは楽曲であって、それを作るためのツールはみんなが好きなものを好きなだけ使えばいいと思うんだ。
秘密兵器があるからいい曲がかけるわけじゃないだろう?僕らがI WISHを隠す必要はないのさ。

エレズ:
むしろ僕らが素晴らしいと思ったツールは、ぜひみんなにも使って欲しいと願ってるよ。

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アミット:
それで、さらに新しい音楽を聴けるなんて最高じゃないか。

D:
自分たちと同じツールを使っても、誰もInfected Mushroomにはなれないぜ!という自信の表れでもあるんですね。

アミット:
まったく同じ制作環境でも同じ音にはならないし、特にI WISHの場合は、使い方すら人によって違うからね。
ネットでI WISHユーザーが作ったムービーや音楽をチェックしたけど、僕らがまったく思いつかなかったやり方もたくさんあって、もっと他のみんなのアイデアに刺激を受けたいくらいだよ。

エレズ:
そう、僕らは音楽で誰かと競っているわけじゃなくて、みんなで高め合っていくことが目的なんだ。

ミュージシャン目線での、真の「シンプル」を求めた

D:
2年のテスト期間を経て、製品になるまでにはどんな調整があったんですか?

エレズ:
サウンドクオリティーの向上、クロスフェードやフォルマントシフターの追加などがあって、すべてのパラメーターがパーフェクトだと確信できるまで、何度もAssafとやりとりをした。
あらゆる楽曲で、ボーカルだけでなくベースやドラムなどにも使ってみて、とにかく注文をつけまくったんだ。

アミット:
あとは、どんなプラットフォームでも動くようにしたかった。まぁ僕らが言うのは簡単でも、プログラムを書く方は大変だけどね。
それから安定性も重視したよ。僕は一人のヘビーユーザーとして、I WISHの安定性にはとても満足している。

D:
I WISHは、CPU負荷が軽いですもんね。

アミット:
なのにあれだけの効果が得られるなんてすごい事だよ。

D:
有名エンジニアとコラボしたエフェクトなどはありますが、I WISHはミュージシャンとのコラボだし、機能も画面の見た目もかなり特殊ですよね。

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エレズ:
僕らはエンジニア目線の「シンプル」ではなく、ミュージシャン目線での「シンプル」を目指したんだ。
エンジニアは機能の全てを理解できているから、一つのプログラムにたくさんの機能を詰め込んで、「ほら、こんなにシンプル」とか言ってしまうんだ。
でもそれは多くの場合ミュージシャンには理解しにくいものになってしまっているよね。

アミット:
ミュージシャン同士だと、「エフェクトのプラグインに”Sugar”ボタンがあったらいいのに」なんて誰かが言うと、「そうか、ONにするだけで音がSweetになる機能なんて最高じゃないか」みたいに、感覚で通じる部分があるけど、エンジニアにはなかなか伝わらない。そういう感覚的な部分を大事にしたかったんだ。

D:
I WISHユーザーたちからのリアクションはありましたか?

アミット:
たくさんのI WISHユーザーたちとコミニュケーションをしているよ。I WISHをボコーダーのように使っている作品が多いかな。大体はとてもジェントルに使っていて、すごくラジオ向きな聴きやすい作品に活かされているみたいだね。
でもユーザーの中には、僕らの想像できなかったような使い方で、魔法のようなサウンドを作り出したり、映画などのサウンドFX制作につかっていたりする人もいる。

正直、99%のユーザーはポジティブだよ。ごく稀に、グリッチャーやボコーダー的な効果を期待していたのに、という人がいるかもしれないが、これはそういうプラグインじゃないしね。

次のプラグインも開発中ですと!?

エレズ:
実は次のプラグインももうすぐ発表できると思うよ。

アミット:
そう、他のプラグインメーカーと進めている話もあるし、Polyverseと作っているやつも近日中にアナウンスができるはずだ。
I WISHは単品のプラグイン製品ではあるけれど、今後展開していくInfected MushroomとPolyverseとのコラボレーションシリーズの旗印となる第一弾だと思って欲しい。

安くて良いプラグイン、これまで実現できなかったようなサウンドを作れるプラグインにしたかったんだ。しかも使えば使うほどアイデアが広がるようなやつさ。
僕らにとっては、I WISHはまさにそんなプラグインだったし、今開発中のものも、ちょうどI WISHと同じような感覚で使っているところだから、期待して待っていて欲しい。

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アーティストとしての自由な発想から生まれた、Polyverse社製プラグイン I WISH。彼らのアルバム Converting Vegetarian IIが一枚丸ごとデモサウンドになっている感じですよね。

個人的には、8曲目 Zoan Zoundのイントロなんかが、I WISHサウンド全開で特にわかりやすいです。

次回、インタビュー後編ではInfected Mushroomのお二人にフォーカスして、実際の制作環境やお気に入りのプラグインなど、彼らの音楽のバックグラウンドを明かします!

【後編】ディリゲントと愉快な仲間たち Vol.7 ~Infected Mushroom~