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Vertigo マスターガイド 〜 アディティブシンセのアクティブ活用術 〜 vol.1

Spireのプリセットサウンドを更に良くするチョイ足しエディット術”ではアナログシンセと同様の減算方式のサウンドメイクを紹介していますが、コチラではある意味真逆のシンセシスのサウンドメイクをチョイ足し感覚で紹介していきます。

まずは、アディティブシンセシスの概要を解説したいと思います。

アディティブシンセシスとは?

一般的にアナログシンセサイザーではオシレータから出力されたシンセ波形の倍音をフィルターによってカットしていく(=引いていく)ことで音色を作っていきますが、このような方式を「倍音減算方式」といいます。

それに対してアディティブシンセシスは「倍音加算方式」の音源システムです。加算というのは“足し算”のことですので、意図する音色になるように倍音成分の含有レベルや時間的変化などを決め、音色にまとめていくというプロセスとなります。

倍音加算方式の最もわかりやすい例は、ハモンドオルガンの名機“B-3”に代表されるエレクトリックオルガンの音色設定でしょう。

これらのオルガンにはドローバーという音色を設定するためのレバーを9本装備しており、それらを調整して演奏に適した音色を設定しています。各ドローバーはどの高さの倍音を調整するのかが予め決まっているため、それらの設定は倍音の音量レベルを設定していることになります。

Vertigoでは最大で256倍音までの倍音加算が行なえますから、オルガンのドローバーに例えるなら256本のドローバーを設定して核となる音色の元を作ることができると言えるでしょう。

また、フェイズA、Bという2面構成で倍音の設定などが行え、その2面をモーフィングさせることができるため、多彩かつ複雑な音色作りを行えるワケです。

Vertigoマスターへの道程

次回からはVertigoのプリセット音色をチョイ足し感覚でエディットしつつ、そのポイントを紹介すると共に、各セクションの機能や設定法などにも都度触れたいと思います。

しかしながら、なんと言ってもVertigoの魅力は画像ファイルやオーディオ波形を読み込んでエディットしたり、手書きで倍音構成を決められるなど、1から音色を作るのも非常に楽しいシンセです。

倍音設定を行っている状態。各倍音の状態をマウスをドラッグして手書き感覚で設定できる。

インポートした画像データを元にエディットを行っている状態。画像ファイルはjpgやpngなどが読み込み可能だ。

それらの機能も実際に試しつつ、アディティブ音源をアクティブに活用してみたいと思います。乞うご期待。


内藤朗

キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、サウンドクリエーターなど様々な側面を持ち、S.E.N.Sのレコーディングサポート、安部OHJIの様々なプロジェクトでのレコーディング、ライブなどに関わるなど、作編曲からレコーディング制作、ライブ演奏など多方面で活動中。MIDIやDTM関連の分野では黎明期から今日に至るまで長きに渡り関わっており、多様な経歴を持つ。また、音楽制作系のライターとしても広く知られ、近著に「音楽・動画・ゲームに活用! ソフトシンセ 音作り大全」(技術評論社刊)、共著「ミュージッククリエイターハンドブック 2023年改訂版」(ヤマハミュージックエンターテインメントホールディングス刊)などがある。有限会社FOMIS代表取締役、一般社団法人日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)正会員、MIDI検定指導研究会会員。