“Spireのプリセットサウンドを更に良くするチョイ足しエディット術”ではアナログシンセと同様の減算方式のサウンドメイクを紹介していますが、コチラではある意味真逆のシンセシスのサウンドメイクをチョイ足し感覚で紹介していきます。
まずは、アディティブシンセシスの概要を解説したいと思います。
アディティブシンセシスとは?
一般的にアナログシンセサイザーではオシレータから出力されたシンセ波形の倍音をフィルターによってカットしていく(=引いていく)ことで音色を作っていきますが、このような方式を「倍音減算方式」といいます。
それに対してアディティブシンセシスは「倍音加算方式」の音源システムです。加算というのは“足し算”のことですので、意図する音色になるように倍音成分の含有レベルや時間的変化などを決め、音色にまとめていくというプロセスとなります。
倍音加算方式の最もわかりやすい例は、ハモンドオルガンの名機“B-3”に代表されるエレクトリックオルガンの音色設定でしょう。
これらのオルガンにはドローバーという音色を設定するためのレバーを9本装備しており、それらを調整して演奏に適した音色を設定しています。各ドローバーはどの高さの倍音を調整するのかが予め決まっているため、それらの設定は倍音の音量レベルを設定していることになります。
Vertigoでは最大で256倍音までの倍音加算が行なえますから、オルガンのドローバーに例えるなら256本のドローバーを設定して核となる音色の元を作ることができると言えるでしょう。
また、フェイズA、Bという2面構成で倍音の設定などが行え、その2面をモーフィングさせることができるため、多彩かつ複雑な音色作りを行えるワケです。
Vertigoマスターへの道程
次回からはVertigoのプリセット音色をチョイ足し感覚でエディットしつつ、そのポイントを紹介すると共に、各セクションの機能や設定法などにも都度触れたいと思います。
しかしながら、なんと言ってもVertigoの魅力は画像ファイルやオーディオ波形を読み込んでエディットしたり、手書きで倍音構成を決められるなど、1から音色を作るのも非常に楽しいシンセです。
それらの機能も実際に試しつつ、アディティブ音源をアクティブに活用してみたいと思います。乞うご期待。