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SYNAPSE AUDIOでシナプス接続:Episode 5

【連載】SYNAPSE AUDIOでシナプス接続:Episode 5 – Hydra

今回はマルチモデル・シンセサイザーの“ Hydra ”を紹介したいと思います。

Hydraとはどんなシンセ?

同社の販売している製品ラインナップでは最初期にリリースされたHydraはWindows/Mac OS X用64ビット対応のマルチモデル・シンセサイザーです。

3基のオシレーターを搭載し、そのオシレーターを使用したフェーズ・モジュレーションやリング・モジュレーションなどが用いられたルーティング・モデルを3種類装備しています。オシレーター1と2では個々にサチュレーションが可能な39種類のプリセット波形を有しており、それらを使用したプリセット音色が128種類用意されています。また、Hydraをドラム・シンセサイザーとして活用できるパーカッシブ・モードに切替可能なエンベロープを装備するなど、ユニークな機能を備えている点が特徴となっています。

Hydraの細部をチェック

それではHydraの細部を見ていきましょう。

まず、3基装備されているオシレーターセクションは本製品の大きな特徴となっている部分です。ルーティング・モデルはA、B、Cいずれかのボタンをクリックして選択します。

図1:左からルーティング・モデル A、B、C のストラクチャーとなっている。

オシレーター1と2で選択可能な39種類の波形は図のような波形を使用することが可能です。

図2:39種類の波形はこのようなものが用意されている。

オシレーター2と3には内蔵のアンプエンベロープとしてディケイタイムとサスティンレベルがそれぞれ用意されており、後述のエンベロープセクションにあるアンプエンベロープの調整とは別に各オシレーターの音量的な時間変化を設定できるのも特徴的な点と言えます。

図3:黄色の枠線で囲んだ部分がオシレーター2と3のアンプエンベロープとなる。

フィルターセクションは一般的なパラメーター構成になっていますので、アナログシンセサイザーのフィルターセクション同様の作法で使うことができます。カットオフフリケンシーは24dBのキレ味のローパス、ハイパス、バンドパスタイプに加えてローパス + ノッチタイプという独自タイプを有しています。

図4:黄色の枠線で囲んだ部分がフィルタータイプの選択部分。一番下がLowpass + Notchタイプ。

エンベロープセクションはフィルター用、アンプ用のADSR型エンベロープジェネレーターが用意されており、“ INV ”ボタンをオンにするとフィルターエンベロープが反転して動作し、これはハイバスフィルターを使う際に用いると効果的です。

図5:黄色の枠線で囲んだ部分がINVスイッチ部分。

モジュレーションセクションには、テンポ同期可能な1基のLFOと2基のピッチエンベロープが用意されています。これらのピッチエンベロープはそれぞれが上方向用、下方向用になりますが、同時使用ができるため、個性的なピッチ変化を持ったサウンドメイクが行なえます。

図6:黄色の枠線で囲んだ部分の上がPitch Up、下がPitch Down。

エフェクトセクションには、コーラスとBASS FX(ベースエフェクト)の2種類が用意されています。このコーラスエフェクトはどちらかというとモジュレーションディレイエフェクトに近く、ディレイタイムを始めとしたいくつかのパラメーターを設定することによってコーラス以外にもフランジャー、ディレイなどの効果を得ることができます。

また、BASS FXの方はサウンドの低周波帯域のブーストとサーチュレーション効果を加えるエフェクトです。クセのあるベースサウンドや、音圧感あるシンセベースなどのサウンドメイクの際に使用すると効果的です。

図7:エフェクトセクションの全体。上にコーラス、下にBASS FXが配置される。

HydraのGUI右部分には、パフォーマンスセクションとマスターセクションが配置されています。

図8:パフォーマンスセクションとマスターセクション。なお最下部ではプリセット音色の切替が行なえる。

パフォーマンスセクションでは、ベロシティ、モジュレーションホイール、アフタータッチの演奏設定を行ない、出力ボリュームの音質に関する調整の他、デュアル、ユニゾンなどの設定、ドラムサウンド用パーカッシブ・エンベロープ・モードの設定を行なうことができます。

内藤朗

キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、サウンドクリエーターなど様々な側面を持ち、S.E.N.Sのレコーディングサポート、安部OHJIの様々なプロジェクトでのレコーディング、ライブなどに関わるなど、作編曲からレコーディング制作、ライブ演奏など多方面で活動中。MIDIやDTM関連の分野では黎明期から今日に至るまで長きに渡り関わっており、多様な経歴を持つ。また、音楽制作系のライターとしても広く知られ、近著に「音楽・動画・ゲームに活用! ソフトシンセ 音作り大全」(技術評論社刊)、共著「ミュージッククリエイターハンドブック 2023年改訂版」(ヤマハミュージックエンターテインメントホールディングス刊)などがある。有限会社FOMIS代表取締役、一般社団法人日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)正会員、MIDI検定指導研究会会員。