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Current沼にハマってみよう Vol.1

第1回:Currentとは?

Minimal AudioのCurrentは、幅広いシンセシス技術に加えてエフェクトやその他の拡張機能を統合した新しいバーチャル・インストゥルメントです。その全容を知るほどにサウンドメイクが楽しくなるCurrentの各部分について順を追って深掘りしてみたいと思います。

今回はまずは、Currentの主な特徴と、中でも大きな特徴となっているコンテンツ・ブラウザー“Stream”部分を紹介しましょう。

Currentの主な機能

Currentのサウンドエンジン部は2基のウェーブテーブル・オシレーター、グラニュラー、アディティブシンセシスによるサブオシレーターに加えタイムストレッチング・サンプラーで構成され、モーフィング、バウエル、コムなど、50種類以上のフィルタータイプを有する2基のフィルターや多彩なモジュレーション・オプションの他、コード・ジェネレーターとアルペジエーターを使用したMIDIエフェクトやFMシンセシスなどによる独特のサウンドメイクが可能です。また、Currentのエフェクトは、Polar Distortion、Flex Chorus、Fuse Compressor、Morph EQなどのMinimal Audioのスタンドアローン・プラグインの読込や並び替えが自由に行なえます。

コンテンツ・ブラウザー“Stream”とは?

今日ではシンセシスのためのエンジンを複数装備するシンセサイザーは、特に珍しいものではなくなりましたが、Currentが他のマルチシンセシスのシンセサイザーと大きく異なるのは、クラウド接続のコンテンツ・ブラウザー“Stream”を内蔵している点です。Streamは、インターネットでクラウドに接続することによって、プリセット、サンプル、ウェーブテーブルを必要作業に応じて制作に使用することができます。それらの素材はプレビュー、ダウンロードによってコンテンツをお気に入り登録なども可能です。Streamのブラウザー内では左側のエリアが素材を選ぶための検索機能部分、右側が検索結果で抽出されたコンテンツのリストが表示され、プレビューやダウンロードなどが行なえます。また、プリセット、サンプル、ウェーブテーブルの各素材はタブでページを切り替えて選べるようになっていますが、それぞれ次のようなものになります。

プリセット:Currentのシンセ機能を使用して作成した音色プログラム

図1:Streamのプリセットタブの画面。使用したいプリセットをリストからロードすることでCurrentのシンセシス機能で作り込まれたサウンドがすぐに使用できる。

ウェーブテーブル:ウェーブテーブル波形は、CurrentのシンセエンジンのオシレーターAあるいはBでオシレーター波形として使用可能

図2:Streamのウェーブテーブルタブの画面。こちらも同様にリストから使用したいウェーブテーブル波形をオシレーターAあるいはBにロードすることで音色作りの元となるオシレーター波形にすることができる。

サンプル:SOUNDSタブのページで選択可能なサンプル素材で、グラニュラーエンジンあるいはサンプラーで読み込んで使用可能

図3:Streamのサンプルタブの画面。同じく同様にリストから使用したいサンプルを選び、グラニュラーエンジンで加工するか、サンプラーで使用するかを選択できる。

なお、Streamは、クラウド接続時だけでなく、コンピューター内にコンテンツがインストールされていればローカルモードにすることで、クラウド接続することなく作業を行なえます。

気をつけるポイントが一つありますが、Currentの永続ライセンスには、340以上のプリセット、180以上のウェーブテーブル、160以上のサウンドを含むファクトリー・コンテンツ・スイートが含まれており、永続ライセンス所有者は、拡張パックからの無制限のアプリ内ダウンロードと、個々のプラグインとしてCurrentのすべてのエフェクトに即座にアクセスできるCurrent All Accessを1年間無料で利用できます。Current All Accessは随時追加更新される新しいサウンドやプリセット、エフェクトなどを自由に使用可能なサブスクリプション・プランですが、継続して使用する場合はCurrent All Accessを延長していく必要があるようですので、注意しましょう。

次回からは各セクションごとに細部をチェックしていきたいと思います。

Current All Accessのサブスクリプション課金については、2024年1月現在Minimal Audioウェブサイトのみでの取扱いとなります。

内藤朗

キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、サウンドクリエーターなど様々な側面を持ち、S.E.N.Sのレコーディングサポート、安部OHJIの様々なプロジェクトでのレコーディング、ライブなどに関わるなど、作編曲からレコーディング制作、ライブ演奏など多方面で活動中。MIDIやDTM関連の分野では黎明期から今日に至るまで長きに渡り関わっており、多様な経歴を持つ。また、音楽制作系のライターとしても広く知られ、近著に「音楽・動画・ゲームに活用! ソフトシンセ 音作り大全」(技術評論社刊)、共著「ミュージッククリエイターハンドブック 2023年改訂版」(ヤマハミュージックエンターテインメントホールディングス刊)などがある。有限会社FOMIS代表取締役、一般社団法人日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)正会員、MIDI検定指導研究会会員。