The Legend HZ:プリセットから作るサウンドトラック
今回は1個のプリセット、つまりThe Legend HZを1台のみを使用した作成例を紹介しましょう。
作成するサウンドトラックをよりリアリティあるイメージに近づける際のエディットのポイントについて解説しましょう。
使用したプリセットと作成したトラックについて
プリセットを選んで試していると、プリセット名からイメージされるシチュエーションなどとは異なる使い方をすることも多々あります。
今回はまさにその最たる例なのですが、たまたまプリセットを選んで弾いていたら思いついたのがこのトラックになります。
まずはデモ音源“ across_the_river_demo.mp3 ”を聴いてみてください。
このトラックは大きな川に架かった鉄橋の近くで左から来る列車が自分の上を通り過ぎて右の方へ走り去っていく、というシーンをイメージして作成しました。このトラックで使用したプリセットはSFXカテゴリーの “Destroyed Boom KS HZ” の1音色のみです。
ちなみに、 “Destroyed Boom KS HZ” のプリセットは、デモ音源 “Destroyed Boom KS HZ_demo.mp3” のようなサウンドです。
トラック制作の流れとポイント
使用した音色 “Destroyed Boom KS HZ” は、シンプルに鍵盤を弾けば「ドーン」というサウンドのプリセット名どおり激しい爆発音を表現できるものです。ただ、サウンドの広がりを出すためにディレイエフェクトが元々設定されていることから、一定のリズムで演奏するとディレイ成分の音のタイミングと相まってループフレーズに聴こえてくるようになり、今回の場合ではこれが電車の走行音のように感じられたことがトラック制作のキッカケとななりました。
元々のプリセット自体が良くできていたので、実際にチョイ足しエディットで変更したのは図のようにフィルターとアンプのエンベロープと、
ディレイ及びリバーブを少々調整したぐらいで後はほとんど元のプリセットの設定をそのまま活かしました。
列車が近づいてきたり、遠ざかっていく様子を表現するためにDAWのトラックオートメーションを使用しました。
設定としては左から右方向へ進行していく定位の変化はインストゥルメントトラックのパンを左から右へ変化するように設定し、その動きに合わせてマスターボリュームを小さい状態から大きくし、遠ざかるにつれて小さくしていくように設定を行なっています。また、今回はDAWのマスターフェーダーのオートメーションで設定していますが、インストゥルメントトラックのボリュームで同様に設定しても良いでしょう。
今回のように何某かの効果音のサウンドトラックを制作する上では、ディレイエフェクトのディレイタイムやフィードバック量、パンの動きとそれに伴う音量の変化の調整は数値だけを設定して終わりにしてしまうと、リアルさの感じられないサウンドになりがちです。
設定したら必ずプレイバックして、イメージ通りに変化するように微調整を重ねて最良の状態になるようにするのが良いでしょう。
特に動画素材などがある場合には、その映像の動きとシンクロするようにトラックを作っていくことが必須となりますので、数値的な同期だけでなく、聴感あるいは体感的に自然に聴こえるようなトラックにできると理想的です。