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The Legend HZ:プリセットから作るサウンドトラック – vol.2

The Legend HZ:プリセットから作るサウンドトラック

The Legend HZに収録されているプリセットを使って実際にサウンドトラック的作品を作ってみましょう。

今回はSF映画の冒頭部分で流れるような雰囲気をイメージして作ってみました。早速、その制作プロセスを見ていきましょう。

使用したプリセットと作成したトラックについて

では始めに今回制作したトラックが実際にどのようなトラックになったのか、デモ音源 “The Legend HZ demo 02.mp3” を聴いてみてください。

このトラックではLegend HZ Factoryバンクのプリセットを4音色使用して作成しましたが、使用したプリセットはSequencesカテゴリーの “Dark Master KS HZ“、Texturesカテゴリーの “Certainty KS HZ” と “We start it KS HZ“、”Copper Crystals KS HZ” です。

各プリセット音色を単体で演奏させると次のようなサウンドになります。

トラック制作の流れとポイント

The Legend HZのプリセットのパラメーター設定をチェックしてみると、内蔵のアルペジエーター/シーケンサーを使用したものが多く収録されています。これらのプリセットを演奏してみると、音色自体はもちろんですが、フレーズの持つグルーヴ感などによって曲のイメージやアイディアが浮かびやすくなります。

ゼロから作る際には、アルペジエーター/シーケンサーの設定が組まれているプリセットを選んできっかけになるフレーズを考えてみるのも一つの方法として試してみると良いでしょう。

図1:GUI下部に配置されているARPEGGIATOR/SEQUENCERセクション。フレーズの入力やパラメーターの設定法などについては別の機会に紹介予定。

まずはSequencesカテゴリーの “Dark Master KS HZ” を選んで、低音域で鳴らしているとSF映画の冒頭部分のような風景が浮かんできました。

図2: “Dark Master KS HZ” の設定においては、MSEG 1の設定もグルーヴ感を出すポイントとなる。

今回はこのイメージが浮かんできたと同時に幻想的で意味深長なシンセパッドと高音域のシーケンスフレーズを加えたいという全体の大枠的なアレンジのアイディアも出てきました。

それぞれイメージに一番近いプリセットを選んでいったところ、シーケンスフレーズは “We start it KS HZ“、シンセパッドは “Certainty KS HZ” に落ち着きました。

これで概ねトラックの骨格はできましたが、シンセパッドの高音域が少しバランス的に聴こえ辛かったので、図のように各オシレーターのミックスバランスをエディットして整えています。

図3: “Certainty KS HZ” のオシレーターボリュームの調整は黄色の枠線で囲んだ部分で行なっている。プリセットの設定からオシレーター1、2、4のボリュームを小さくし、オシレーター5のボリュームを大きくしてフレーズのヌケを調整した。

全体を聴いてみて、ちょっとしたアクセントになるフレーズを足してみようと思い、”Copper Crystals KS HZ” を加えてデモトラックの完成となります。

図4: “Copper Crystals KS HZ” のマトリックスモジュレーションの設定状態。今回のトラックでは使用していないが、モジュレーションホイールによるコントロールでサウンドに動きを加えることもできる設定になっている。

トラック構成は4パートですので、少々物足りなさが少なからず感じられますが、パートを足しすぎるとシンセパッド “Certainty KS HZ” のフレーズ感やサウンド変化の良さが活きてこないため、装飾的なフレーズは盛り込み過ぎないように極力控えると良いでしょう。

内藤朗

キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、サウンドクリエーターなど様々な側面を持ち、S.E.N.Sのレコーディングサポート、安部OHJIの様々なプロジェクトでのレコーディング、ライブなどに関わるなど、作編曲からレコーディング制作、ライブ演奏など多方面で活動中。MIDIやDTM関連の分野では黎明期から今日に至るまで長きに渡り関わっており、多様な経歴を持つ。また、音楽制作系のライターとしても広く知られ、近著に「音楽・動画・ゲームに活用! ソフトシンセ 音作り大全」(技術評論社刊)、共著「ミュージッククリエイターハンドブック 2023年改訂版」(ヤマハミュージックエンターテインメントホールディングス刊)などがある。有限会社FOMIS代表取締役、一般社団法人日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)正会員、MIDI検定指導研究会会員。