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The Legend HZ:プリセットから作るサウンドトラック – vol.1

The Legend HZ:プリセットから作るサウンドトラック

Synapse Audio SoftwareのThe Legend HZにはプリセットを選んで、そのサウンドを奏でるだけで様々なシーンや情景などのイメージを想起させるものが多数収録されています。 そこで本連載では、実際に収録されているプリセットを使ってサウンドトラック的な作品を作ってみたいと思います。

使用したプリセットと作成したトラックについて

では始めに今回制作したトラックが実際にどのようなトラックになったのか、デモ音源“ The Legend HZ demo 01.mp3 ”を聴いてみてください。

一般的にサウンドトラックは作成した楽曲が主体となるのではなく、何某かのシーンがあり、そのシーンをより深く印象付けることを目的として作成します。

今回のデモトラックは、「とある大草原に群生する植物が次々に発芽し、開花していく」というシーンをイメージした作品となります。ただ、最初に仮のイメージを想定していたワケではなく、後述の通り、The Legend HZのプリセット音色を何気なく選んで弾いていながら、そのフレーズにインスパイアされて思い浮かんだものになります。

今回のデモトラックで使用したプリセットは以下の通りです。

このトラックではいずれもLegend HZ Factoryバンクのプリセットですが、Arpカテゴリーの “Dream Book KS HZ“、Texturesカテゴリーの “Endless World KS HZ“、Drumsカテゴリーの “Radar Toms KS HZ” という3個のプリセットを使用しました。

各プリセット音色は次のようなサウンドのものになります。

トラック制作の流れとポイント

今回のトラックがどのように作られていったかというと、”Dream Book KS HZ” のフレーズを選んで演奏している時にイメージが思い浮かんできたのをきっかけにトラック制作が始まりました。このプリセットは鍵盤を押している間は2小節フレーズが延々とループ再生されるのですが、鍵盤を押している長さ(=演奏する音符の長さ)を変えるとフレーズの一部分が再生されます。

これを利用してこのトラックの核となるフレーズのトラックが出来上がりました。

このフレーズに合わせて何かリズムを加えたいと思い、Drumsカテゴリーでプリセットを選んでいたところ “Radar Toms KS HZ” の無機的なビート感がサウンドのイメージに近く、これを加えてリズムトラックを作成しています。

この2トラックでほぼ完成と言えば完成なのですが、全体の空気感が今一つ物足りなかったので、もう1トラック追加しようと色々なプリセットを選んでフレーズを入れてみようと試行錯誤した結果、”Endless World KS HZ” をバックでシンプルに鳴らすという形で落ち着きました。

トラック制作のポイントとしては2点ほどあります。

一つはプリセット “Dream Book KS HZ” の音色エディット、二つ目は “Endless World KS HZ” のトラックにおけるトラックオートメーションの設定です。

Dream Book KS HZ” のエディットは図示したパラメーターの設定値を調整したのですが、

図1:黄色の枠線で囲んだ箇所が “Dream Book KS HZ” のシンセパラメーターエディットを行なった部分。

図2:黄色の枠線で囲んだ箇所が “Dream Book KS HZ” のエフェクトパラメーターエディットを行なった部分。

大きな変更点はプリセットで設定されているリバーブの質感を調整していることです。ROOM、CHORALE、DEEPの各スイッチをオンにすることでThe Legend HZならではのリバーブサウンドが得られます。もちろん、曲調や求めるサウンドによっての向き不向きはありますので使い所次第ですが、サウンドメイクの際の一つのアイディアとして試してみるのも良いでしょう。

もう一つのポイント “Endless World KS HZ” のトラックで設定したトラックオートメーションですが、全体としてはこんな感じで設定しています。

図3:黄色の枠線で囲んだ部分が “Endless World KS HZ” を使用したトラックでボリューム調整のためのオートメーション設定の状態となる。

このプリセットはリリースが非常に長く、何小節にも渡ってその余韻が残ってしまうため、他のパートのサウンドと重なって意図しない部分で不協和な響き方になるのを避けるための設定です。

このようなケースだとプリセット自体のEGの設定でリリースタイムを短くする方法もありますが、今回の場合は音色設定を変更するとトラック全体の余韻の雰囲気が変わってしまうため、オートメーションでボリュームを上げ下げする方法を取っています。リリース調整においてどちらの方法を用いるかは、ケースバイケースなので、都度どちらにするかを選択するのが良いでしょう。

内藤朗

キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、サウンドクリエーターなど様々な側面を持ち、S.E.N.Sのレコーディングサポート、安部OHJIの様々なプロジェクトでのレコーディング、ライブなどに関わるなど、作編曲からレコーディング制作、ライブ演奏など多方面で活動中。MIDIやDTM関連の分野では黎明期から今日に至るまで長きに渡り関わっており、多様な経歴を持つ。また、音楽制作系のライターとしても広く知られ、近著に「音楽・動画・ゲームに活用! ソフトシンセ 音作り大全」(技術評論社刊)、共著「ミュージッククリエイターハンドブック 2023年改訂版」(ヤマハミュージックエンターテインメントホールディングス刊)などがある。有限会社FOMIS代表取締役、一般社団法人日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)正会員、MIDI検定指導研究会会員。