RobPapen社最新キラーシンセ、Predator2の機能解説を行っている本連載。
Predator2はPredator1から大幅にアップデートされて、目立った追加機能も多数ありますが、既存の機能のブラッシュアップも随所に見られます。
今回はそんな既存の機能のブラッシュアップ点の中から、Predator2で強化されたエンベロープやLFOなどについて紹介したいと思います。
この連載を今回初めて読んでくれた方は過去の記事も合わせてご覧ください。
【連載もくじ】READY 2 HUNT YOUR TRACKS! Predator2徹底解説!!
強化されたENVELOPE
画面中央下、Multi-PageからENV/LFO/PBメニューを開くと、サブメニューでENVELOPE、LFO、PITCH LFO/PBの3ページに分かれています。
まずはENVELOPEページから見ていきます。
ENVELOPE
Predator1ではシンプルなエンベロープを2系統使うことができましたが、Predator2では4系統に増えています。
Predator1 ENVELOPE
エンベロープ自体はRobPapen製シンセらしく引き続きADSFRが採用されています。
シンセサイザー用語ではお馴染みのAttack、Decay、Sustain、Releaseですが、Predator2ではSustainの後に第二のDecayともいえるFade(Sustain Fade)があります。
マニュアルから図を引用してみます。
Attackでシグナル入力から最大値までの時間を設定し、DecayでSustainの値までの時間を設定。
SustainはDecay後に信号を維持するレベルを設定し、シグナルが停止してから値が0に戻るまでの時間をReleaseで設定するというのが一般的なADSRですが、Fadeの値を中央から右に設定するとDecay後にSustainの値に達したシグナルが、再度Fadeで設定した値まで上昇します。
逆にFadeの値を中央から左に設定した場合は、Decay後にSustainの値に達したシグナルが、Fadeで設定した値まで下降後、Releaseの時間を掛けて0に戻ります。
Fadeの値を0にした場合は一般的なADSRとして動作します。
その他Predator1と同一のメニューを先に紹介します。
Vel>SPEED:エンベロープのスピードをベロシティによって変化させる値を設定します
KEY>SPEED:エンベロープのスピードをノートナンバーによって変化させる値を設定します
SYNC:ADSFRの値をホストに同期するか時間で設定するかを変更します
BYPASS:現在のエンベロープ設定を使用しません
AMOUNT:DESTINATIONで選択した項目をエンベロープで操作する量を設定します
DESTINATION:エンベロープで操作したい項目を選択します
AMOUNT CONTROL:選択した項目でAMOUNT量をコントロールします。ノブでコントロールする量を調整します
Predator2でブラッシュアップされた機能は、エンベロープ自体が2系統から4系統に増えた以外に、プリディレイとリピート機能があります。
PRE-DELAY:シグナル入力からエンベロープが開始されるまでの時間を設定します。SYNCが有効の場合はノート長で、無効の場合は秒数で指定します
REPEAT NUMBER:1から8までと12、16、Infiniteから選択可能で、選択した回数分エンベロープをループします。Infiniteを選択した場合はエンベロープを繰り返し続けるので、特殊なLFOのように使用することもできます
REPEAT TIME:REPEAT NUMBERで指定した回数エンベロープを繰り返す際の間隔を調整します。SYNCが有効の場合はノート長で、無効の場合は秒数で指定します。
REPEAT NUMBERで設定した値は、その値の数を繰り返すという点に注意が必要です。
シグナル入力からエンベロープを2回繰り返したい場合、REPEAT NUMBERは2と入力したいところですが、この場合は元のエンベロープが1度走ったあと、もう1度エンベロープを繰り返して全体で2回ということになるので、REPEAT NUMBERは1と設定します。
また、REPEAT TIMEはその時間ごとにエンベロープを繰り返すので、例えばSYNCが有効な状態で1/1に設定した場合は、エンベロープの設定を1小節ごとに繰り返すことになります。
また、PLAY MODEでPolyまたはMonoが選択されている場合、ノートごとにエンベロープをトリガーし、Legatoが選択されている場合はレガート入力中はエンベロープをリトリガーしません。
実際の使用方法については他のメニューと合わせて最後に動画でご覧ください。
視覚的に捉えやすいLFO
Predator2ではLFOも機能が強化されています。
連載その2で紹介した通り、Predator2はウェーブフォームやサウンド出力時の波形が視覚的に捉えやすくなりましたが、LFOも視覚的に捉えやすくなりました。
LFOもENVELOPEと同じく以前の2系統から4系統に増設されたのと、以下のメニューがENVELOPEと共通です。
Vel>SPEED:LFOのスピードをベロシティによって変化させる値を設定します
KEY>SPEED:LFOのスピードをノートナンバーによって変化させる値を設定します
SYNC:LFOの値をホストに同期するか周波数で設定するかを変更します
BYPASS:現在のLFO設定を使用しません
AMOUNT:DESTINATIONで選択した項目をLFOで操作する量を設定します
DESTINATION:LFOで操作したい項目を選択します
AMOUNT CONTROL:選択した項目でAMOUNT量をコントロールします。ノブでコントロールする量を調整します
その他の機能を見ていきます。
MODE:Poly、Free、Monoの3種類からモードを選択します。それぞれの詳細は以下の通りです
Poly:各ノートごとにLFOをトリガーします
Free:ノートの入力の有無に関係なく常にLFOが走っています
Mono:Freeと似ていますが、ノートを入力するたびにリトリガーされます
SPEED:LFOの周波数を設定します。SYNCが有効の場合はノート長で、無効の場合はHz(ヘルツ)で指定します
WAVE:LFOが使用するウェーブフォームを選択します。一般的なウェーブフォームやS&Hなどの他に、前回解説したUser Wavesも使用可能です
SHAPE:PHASEの左右対称性を調整します。一般的にSymmetryと呼ばれる機能です
PHASE:ウェーブフォームのスタートポイントを選択します。0Degでデフォルト、180Degで反転します
Predator2ではSHAPEやPHASEを設定する際にリアルタイムでグラフに反映されるので、行った設定が視覚的にも捉えやすくなっています。
試しにサイン波でPHASEの値を少しずつ変えていった画像を並べてみると、スタートポイントが徐々に左にずれていくのがわかりやすいと思います。
シンセサイザーのPHASEは、コンプレッサーのKneeなどやEQのベルカーブなどと同じで、初めの頃は設定をいじっても何のことが判りづらいことも多いと思いますが、視覚化されていると目で見て納得なので嬉しい機能ですね!
ピッチ専用PITCH LFO / PB
ENV/LFO/PBメニューの最後はPITCH LFO / PBページです。
ここではピッチ専用のLFOと、ピッチベンドのベンド幅の調整を行います。
WAVE:PITCH LFOが使用するウェーブフォームを選択します。LFOと同じく一般的なウェーブフォームやS&Hなどの他に、User Wavesも使用可能です
SPEED:LFOの周波数を設定します。SYNCが有効の場合はノート長で、無効の場合はHz(ヘルツ)で指定します
AMOUNT:PITCH LFOの適用量を設定します
AMOUNT CONTROL:選択した項目でAMOUNT量をコントロールします。ノブでコントロールする量を調整します
DELAY:PTCH LFOが開始されるまでの時間を設定します
ATTACK:PITCH LFOの効果のフェードインタイムを設定します
DECAY:PITCH LFOの効果のフェードアウトタイムを設定します。右に振り切るとオフになります
Vel>SPEED:PITCH LFOのスピードをベロシティによって変化させる値を設定します
PITCH LFO / PBページ右側ではピッチベンドのベンド幅を上下個別に設定します。
設定幅はそれぞれ1から12セミトーンの他に2オクターブ、3オクターブ、4オクターブとオフを指定できます。
最後にENVELOPE、LFO、PITCH LFOの文章では伝わりづらい部分を動画でまとめました。
ご覧ください。
いかがでしょうか。
時間軸に沿ったサウンドメイクや数値だけではいまいちイメージが掴みづらいPHASEなども、ノブを操作した時に実際に何が起こっているのかを把握しやすいので、これからシンセサイザーを使ってみようという人にも優しい機能向上だと思います。
それではまた次回。
Predator2に興味を持ってくれた方は製品ページからデモバージョンをダウンロード/インストールして試してみてくださいね!
今回はこの辺で。
それではまた次回。