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Rob Papen “SOUND SHOWCASE” – vol.2

第2回:Vecto

Rob Papenの各製品を使用してデモトラックを制作しつつ、トラック制作で使用したプリセットを紹介しつつ、製品の魅力を紹介したいと思います。

今回はVectoを紹介しましょう。

図1:デモトラックを制作したCUBASEのメインスクリーン

Vectoの製品概要

Vectoは、独自のサウンドメイクに役立つ様々なウェーブフォームとモジュレーション・オプションなどのプリセット・ベクトルパスを豊富に備えた4オシレーターのベクトルシンセサイザーです。

図2:VectoのメインGUI

このベクトルパスを描くことによってキャラクターの異なるサウンドを作り出すことができます。Vectoの内蔵波形にはアナログ波形、アディティブ波形、スペクトラム波形、サンプリング波形などが用意されており、サンプリング波形以外はアナログシンセのパルス幅変調やPWMのように波形のデューティー比を変化させたり、4基のオシレーター出力のルーティングを任意のオシレーターに設定してFM変調も可能です。この他フレキシブルに変調が行なえる8個のフリーモジュレーション、2基のエフェクト、アルペジエーター機能などを装備し、それらを活用した1100以上のプリセットサウンドが用意されています。

Vectoのプリセット音色を試奏してみた

Vectoのプリセット音色を試してみたところ、4オシレーターをベクトルコントロールによって複雑に変化させるサウンドを活かしたシンセパッド音色の良さが一番感じられました。また、FX系の音色も捨てがたい良いプリセットが多く、SF映画の効果音制作などに適しているように思います。

GUIの操作性などが似ている前回紹介したQUADとやや方向性は同じなのですが、全体的にQUADはファットでウォームなサウンド、Vectoはエッジの効いたデジタルシンセらしい複雑な音色変化がサウンドの特徴のように感じられました。

Vectoのプリセットを使用したデモトラック

Vectoでもプリセット音色を活用したデモトラックを作成しました。前回同様に基本的にプリセットは音色によってエフェクトやエンベロープなどを調整を行なっていますが、極力エディット無しで使用しています。エフェクトについてもVectoに装備しているもののみを使用し、他のプラグインエフェクトなどは不使用です。

なお、使用したVectoは全部で9台で、デモトラック中で使用したプリセットは以下のとおりです。

BS SpeakerTweaker-Odd

サブベースに適したシンセベース音色です。ベースパートのトラックで使用しています。

Rddym

リズムボックスのリズムパターンのループのようなプリセットです。曲中ではオシレーターのボリュームバランスを調整してキックがメインで聴こえるようにしています。

Show me the Money LP

こちらもリズムループのプリセットですが、キックの音は生ドラム系のアタック感があるサウンドで、前述のRddymと組み合わせて一つのリズムパートに仕立てています。

Modular Sphere Piano

この音色はメロディパートで使用しています。プリセット名にPianoと入っていますが、どちらかというとクロスモジュレーションで変調したような金属的な響きが特徴です。Free LFOでDelay Lengthを変えているため、ピッチがランダムに変化したディレイ成分が効果音的な演出になっています。

Mellow SynTar

曲中のエレピのコードで使用しています。FMエレピのようなサウンドの音色ですが、プリセットの状態だとエンベロープの設定がしっくり来なかったため、ディケイやリリースを少しエディットしています。

Pads and SpaceVox

色々なジャンルで使える汎用性のあるシンセパッドとクワイアのレイヤー音色です。

Hairy Copter

ボコーダーボイスにワウを深めにかけたようなウォブル系音色です。曲中では1分04秒ぐらいからこの音色を使用したパートが演奏されます。

Swirl SynVox

シンセボイス系の音色です。アタックがそれほど遅くないので、曲中では1分04秒ぐらいからベルのようなカウンターラインで使用しています。

Love da Vecta

曲中でほとんど通奏しているカウベルのようなパーカッションを使用したループです。ベクトルパスを動かすことで音量と音色を変化させています。

内藤朗

キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、サウンドクリエーターなど様々な側面を持ち、S.E.N.Sのレコーディングサポート、安部OHJIの様々なプロジェクトでのレコーディング、ライブなどに関わるなど、作編曲からレコーディング制作、ライブ演奏など多方面で活動中。MIDIやDTM関連の分野では黎明期から今日に至るまで長きに渡り関わっており、多様な経歴を持つ。また、音楽制作系のライターとしても広く知られ、近著に「音楽・動画・ゲームに活用! ソフトシンセ 音作り大全」(技術評論社刊)、共著「ミュージッククリエイターハンドブック 2023年改訂版」(ヤマハミュージックエンターテインメントホールディングス刊)などがある。有限会社FOMIS代表取締役、一般社団法人日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)正会員、MIDI検定指導研究会会員。