【連載】Mixcraft 6で音と映像をミックス2 Vol.5!

MixCraftマスタリング編大バナー

(2014/06/13)

Mixcraftの魅力をお伝えしている本連載。ここ数回は、マスタリングを取り上げています。
前回は、以下の点について説明を行いました。

  • 音圧を上げるメリットとデメリット
  • ダイナミクスと音のアタックについて

前々回で「音圧」について説明を行い、前回では「音圧を上げることのメリットとデメリット」のご紹介を行いました。

今回からは、実際に音圧を上げる手順について解説したいと思います。ちなみに、今回ご紹介する手順が絶対ではありません。
楽曲によってマスタリングの手法は様々なので、あくまで「数あるマスタリング手順のうちの1つ」と思って、参考にしてみてください。

「曲を作る」という点において、正解なんてものはないですからね!


音圧を上げるためには何を使う??

では、実際に音圧を上げようと思った際、どういったエフェクトを使用しますか?
マキシマイザーやコンプレッサーを深くかければもちろん音圧は上がりますが、どこかで音に歪みが生じてしまったり、詰まるような音になる可能性があります。

詰まるような音とは、以下のような音です。前半はマスタリング処理前、後半はコンプレッサーを深くかけたマスタリング処理を行った楽曲です。

上記の音源を聴いていただくと、コンプレッサーで処理を行った方が、より目の前で鳴っているような印象を受けるかと思いますが、音が「すーっ」と伸びていくような空間の広さは失われていると私は感じます。

もちろん音圧を上げるには、マキシマイザー、コンプレッサーは使いますが、「1つのエフェクトだけを使う」ということはあまり無いと思います。
複数のエフェクトを使用し、その楽曲に適した調整を行いましょう。

EQを使おう!

私がマスタリングを行う際、まずはEQとコンプレッサーをマスタートラックにインサート(挿入)します。

EQアドオン

コンプレッサーは分かるとして、何故EQをインサートしたか疑問を持たれた方もいるかと思います。
これは、「不要な周波数を削る」ためです。

では、「何故EQで不要な周波数を削る必要があるか」について、ご説明したいと思います。
それには、人間の可聴周波数域が大きく関わっています。

可聴周波数域とは?

人間の可聴周波数域とは、平たく言うと「人間に聴こえる周波数の範囲」です。
A4=440Hzというように、音は周波数で表すことができます。周波数が低くなれば音程も低く、周波数が高くなれば音程も高くなります。

そして人間の可聴周波数域は、20Hz~20000Hzと言われています。この可聴周波数域は個人差があり、年齢を重ねると高い周波数が聴こえなくなってくると言われています。ちなみに、若者にしか聴こえない高い周波数のことを最近では「モスキート音」と呼ばれています。

モスキート音自体は不快な音のため、若者がたむろしてしまう公共のスペースにモスキート音を流し、若者のたむろ防止などに利用されています。

少し話がそれてしまいましたが、改めていうと人間の可聴周波数域は、20Hz~20000Hzです。そうすると、楽曲にそれ以外の周波数が含まれていても、人間の耳には聴こえないことになります。
また、楽曲を聴くスピーカーも重要です。例えば、Reloop WAVE 8のようなモニター・スピーカーなら、20Hz~20000Hzまで再生可能ですが、コンピュータの内蔵スピーカーなどでは、200Hz以上しか再生できないなんてものもあります。

そのため、自分が今マスタリングを行おうとしている楽曲は、「どのような環境で聴かれる類いの楽曲なのか」と考えることが大切です。

それは、クラブ・ミュージックであれば大きなスピーカーで聴かれますし、アニメ・ソングであればiPodやコンピュータの内蔵スピーカー、ジャズやクラシックなどは、こだわり抜かれたオーディオ機器といったように、楽曲が再生されるオーディオ機器を想定できるためです。

これらを考えると、例えば0Hz~25000Hz(これだけ周波数帯域が広い楽曲というのは、通常ありえませんが)を持っている楽曲のマスタリングを行う際、必要な周波数帯域は以下の図のようになりますよね。

人間の可聴周波数域とモニタースピーカーの関係

次に不要な周波数帯域をカットすることで得られる効果ですが、まずは音量レベルに余裕が生まれます。専門用語でいうと、ヘッドルームに空きができます。

※ヘッドルームについてはマスタリング編第3回をご参照ください。

何故余裕が生まれるかというと、楽曲によっては人間には聴こえづらいとても低い音が含まれている(言い換えると、低い周波数が含まれているともいえます)
場合があります。このような低い音が多く含まれていたりすると、その低い音のせいで音量レベルが埋まっている場合があります。

では、この低い音をカットして、音量レベルに空きを作ろうというのが、イコライザーを使用する理由です。これらを図で表してみました。

▼再生可能範囲外調整前

可聴範囲外処理前

▼再生可能範囲外調整後

可聴範囲外調整後

ちなみに、上記のような図はMixcraft Pro Studio 6にバンドルされている「Voxengo Spectrum Analyzer」で確認することができます。

Voxengo Spectrum Analyzer

不要な周波数をカットする効果はもう1つありますが、ここからの説明がまた長くなってしまうため、次回に持ち越します。

また、人間が聴こえない周波数は全てカットしていいかというと、もちろん例外もあるため、その点についても次回解説いたします。

それでは、今回はこの辺で!