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【ソフトシンセ入門】サウンドメイクの基本をSPIREでマスター(vol.6)

第6回:エンベロープセクションの役割

今回は前回にも少し出てきたエンベロープセクションについて解説したいと思います。

エンベロープとは

エンベロープとは一般的にエンベロープジェネレーター(以下、EG)と呼ばれているものです。オシレーターに使用するとピッチの時間的な変化、アンプに使用することでボリュームの時間的な変化、フィルターに使用すると音色の時間的な変化が得られます。

図1:EGのイメージ図。

EGは多くのシンセサイザーにおいてADSR方式という4ポイントのパラメーター構成のものが使用されています。ADSRはエンベロープジェネレーター各部分のパラメーター名の頭文字を取ったもので、大まかに言うと以下の4つになります。

  • A:Attack Time(アタックタイム)・・・音の立ち上がり方を決める
  • D:Decay Time(ディケイタイム)・・・アタックタイムで達したピーク値からの減衰の仕方を決める
  • S:Sustain Level(サスティンレベル)・・・ディケイタイムで設定した減衰地点に達してからそのレベルが持続する量を決める
  • R:Release Time(リリースタイム)・・・鍵盤を離した後に変化する時間を決める

Spireのエンベロープについて

Spireに用意されている4基のEGはいずれも6ポイントの設定ができます。一般的なADSR型との違いはSLT(スロープタイム)とSLL(スロープレベル)というパラメーターが増えている点です。

図2:黄色の枠線で囲んだ部分がSLT(スロープタイム)とSLL(スロープレベル)を設定するパラメーターとなる。

SLT(スロープタイム)とSLL(スロープレベル)とはどのような設定を行なう部分かというと、SLTはSUSからSLLに減衰する時間、SLLはSUSの終了後にサウンドが持続するレベルを設定するパラメーターとなります。SLTとSLLを調整することでセカンドアタック的な音色変化を持つサウンドを作成することができます。

SpireにおけるEGの6ポイントのパラメーターの中で、ATT(アタック)、DEC(ディケイ)、SUS (サスティン)、REL(リリース)は一般的なシンセサイザーと同様の動作をします。後述のSLT(スロープタイム)値=0の場合、SLL(スロープレベル)は反映されないため、EGの時間的変化はA、D、S、Rのみで設定することができます。初期状態からの音色作成においては、ADSRのみで設定をしてみると理解しやすいでしょう。その後で細部のエディットを進める際に他のパラメーターを調整していくとスムースです。

ちなみにプリセット音色をエディットする場合、各ENV設定でSLT値=0であれば、概ねADSRの部分を調整するだけでチョイ足しエディットができる、とエディットのコツとして覚えておくと良いでしょう。

変化曲線の調整

これは見落としがちな機能になりますが、各ENV画面のスライダー上部にあるグラフィック部分において各ステージの線上をクリックすると、変化曲線のタイプを変更することができます。

スライダーで設定した値が同じでも変化曲線のタイプを変えることでサウンドのテイストが変化します。

図3
図4

図3、4:変化曲線のタイプは図中の各ステージの線上をクリックすることで変更する。例えば図3のような状態から図4のように変化させることができる。

各ENVをエディットしてもしっくりこない場合は、スライダー上で値を変えるだけでなく、変化曲線のタイプを変えてみるのも良いでしょう。

ちなみに以前の連載においてもエンベロープジェネレーターについて解説していますので、併せて参考にしてみてください。

内藤朗

キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、サウンドクリエーターなど様々な側面を持ち、S.E.N.Sのレコーディングサポート、安部OHJIの様々なプロジェクトでのレコーディング、ライブなどに関わるなど、作編曲からレコーディング制作、ライブ演奏など多方面で活動中。MIDIやDTM関連の分野では黎明期から今日に至るまで長きに渡り関わっており、多様な経歴を持つ。また、音楽制作系のライターとしても広く知られ、近著に「音楽・動画・ゲームに活用! ソフトシンセ 音作り大全」(技術評論社刊)、共著「ミュージッククリエイターハンドブック 2023年改訂版」(ヤマハミュージックエンターテインメントホールディングス刊)などがある。有限会社FOMIS代表取締役、一般社団法人日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)正会員、MIDI検定指導研究会会員。