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Inside Newfangled Audio vol.4

シンセの音作りに行き詰まったら? すぐに試せるスランプ脱出法

今回の記事では、シンセサイザーの音作りで発想が行き詰まったときに試せる、6つのアプローチを解説していきます。Newfangled Audioのシンセサイザー「Generate」を例に、モジュレーションによる音の変化、録音した素材の切り出し、音源方式の変更、演奏に反応するパラメーター設定などを紹介。「カオス」や偶然の変化を活用し、音の断片を制作に使える素材へと発展させるための具体的な手順を取り上げています。


音作りのスランプは、たいてい同じような形で忍び寄ってきます。シンセを立ち上げて、つまみをいくつか回してみる。でも……ピンとくる音がない。予想外のことも起きない。思わず「おっ!」となる瞬間もない。どれもプリセットを少し手直ししただけか、これまで何度も作ってきた音にしか聴こえない。

でも、意外なことに……。

尽きてしまったのは創造力ではなく、自分を驚かせてくれるきっかけなのです。 パッチ(シンセの音色設定)の中に、耳が反応したくなるものがない。動きも、耳に引っかかるような刺激も、「待って……いまの何?」という瞬間もない。だから、創造力はまだちゃんとあるのに、行き詰まったように感じてしまいます。

ここから紹介するのは、そんな「驚き」を、自分で呼び戻すためのシンプルなワークフローです。音の動きや、その場で生まれる変化、思いがけない「うれしい偶然」を作り出し、頭がまた反応できるきっかけを用意します。どんなシンセでも使える方法ですが、まだ十分に使い込んでいないシンセで試すと、また違った面白さがあるはずです。

1. 音色の完成形より、まずは「動き」から


多くの人は、すっきりした素直なパッチを読み込み、そこから余分なものを削るように音を整えていきます。今回は、その逆をやってみましょう。

まずは動きを作るのです。LFO、エンベロープ、ランダムに変化するモジュレーター、複雑な変化カーブ。音に命を吹き込めるものなら、何でも構いません。動きがあれば、耳には反応するきっかけが生まれます。ごくわずかなモジュレーションでも、アイデアの火種になります。

  • 音量がゆっくりと揺れる

  • 音程がわずかに揺らぐ

  • フィルターが動く

  • 重ねたノイズが少しずつ姿を変える

この段階では、まだ「音色を完成させる」必要はありません。思わず耳を傾けたくなる、生き物のような音を作るのが目標です。何かが動き始めると、創造力の働き方が「ひねり出す」から「反応する」へと切り替わります。そこから、アイデアがまた流れ始めるのです。

2. いつも「初期設定」から始めるのをやめる


音作りで行き詰まる原因の多くは、こんな習慣にあります。

  • シンセの初期パッチ(音作りの出発点になる、シンプルな初期設定)を読み込む

  • じっと見つめる

  • 意識して「いい音」を作ろうとする

それでは、創造力を働かせる前にプレッシャーがかかってしまいます!代わりに、あえて「おかしい」状態から始めてみましょう。

  • 耳に刺さるほど高域が強い波形

  • 開きすぎたフィルター(カットオフ周波数を大きく上げた状態)

  • 壊れたのかと思うようなエンベロープ

  • 速すぎるモジュレーション

  • ランダマイズボタン(設定をランダムに変える機能)があるなら……押してみる!

いまの目標は、使える音を作ることではありません。自分の中に何かしらの反応を起こすことです。最初に「うわ……なかなかひどい音だな」と思ったなら、いい感じ。これで素材ができました!

3. 録音ボタンを押して、弾いてみる


ここで、早々に諦めてしまう人がたくさんいます。でも、私たちが作っているのは「音」です。プリセットを完成させることだけが目的ではありません!

パッチを完璧に仕上げようとするより、録音ボタンを押して、しばらくシンセを好き勝手に暴れさせてみましょう。おいしい音は、保存された設定そのものよりも、設定を動かしている途中に潜んでいます。こんなことを試してみてください。

  • 単音やコードを長く伸ばす

  • マクロ(複数のパラメーターをまとめて動かす操作)、カオス※の量、ウェーブフォルダーのドライブを大きく動かす

  • ジェネレーター(発音部)の種類やモードを切り替える

  • モジュレーションホイールやアフタータッチを積極的に使う。対応機器があれば、MPE(MIDI Polyphonic Expression)のTimbre(音色を変化させるためのコントロール情報)も使う

  • 何より、楽しむことを忘れずに!

※訳注:ここでいう「カオス」とは、わずかな設定の違いから、複雑で予測しにくい変化が生まれる性質のことです。Generateは、この性質をオシレーターに取り入れたシンセサイザーで、音色に独特の揺らぎや変化を生み出します。

鳴らしている最中に、いちいち良し悪しを判断しないでください。まだ音を仕上げる段階ではありません。いまは、偶然を録音しているのです。そのあとで、次の作業に進みます。

  1. 長めに録音したテイクをDAWに取り込む

  2. 切り分けていく

  3. グルーヴのある1小節、強烈なアタック(音の立ち上がり)、じわじわ盛り上がる音、グリッチ感(音が細かく途切れたり乱れたりする質感)のある余韻を探す

そんな小さな断片こそ、本当の出発点になります。ループさせる。タイムストレッチする。重ねる。こうして、何も起きていない初期化パッチからではなく、面白い動きを出発点に音作りを進められるようになります。それから、録音したものの90%は使いものにならないでしょう。ええ、それが普通です。録音ボタンを押したのは、残りの10%に出会うためなのですから。

4. 音源エンジンを替える――音作りの仕組みを、あえて変える


どのパッチを作っても、似たような音や感触になってしまう。そんなときは、あなた自身に問題があるというより、音作りがいつものパターンに入り込んでいるだけかもしれません。

普段とは違う仕組みのシンセを使ってみましょう。昔ながらの減算方式(フィルターで倍音を削って音色を作る方式)から、ウェーブテーブル方式やFM方式へ移ってみるのもいいですし、私たちのカオスを利用したシンセ、Generateを試してみるのもいいでしょう。例えば、こんなふうに発想を変えてみます。

  • 一般的なフィルターを、ウェーブフォルダー(波形を折り返すように変形させて倍音を増やすもの)+ローパスゲート(LPG。音色と音量を組み合わせて制御するもの)に置き換える

  • ノイズやカオス、エフェクトで生成した音を、単なる「味付け」ではなく、主役の音源として使う

カオスを利用したシンセでは、ほんの少し操作するだけで、音全体ががらりと変わることがあります。

  • カオスの量や形状を少し変える → 新しい倍音や、不安定な揺らぎが生まれる

  • ウェーブフォルダーのDrive(入力レベル)、Folds(波形の折り返し回数)、Symmetry(対称性)を動かす → いつもの冴えないノコギリ波とはひと味違う、明るく尖った倍音が現れる

  • ローパスゲートを使う → 音色と音量が連動して動き、音全体にいっそうの生命感が生まれる

Generateは、Buchla(電子楽器の先駆者ドン・ブックラによるブランド)に代表される「ウェストコースト・シンセシス」の考え方を取り入れています。基本波形をフィルターで削ることから始めるのではなく、波形そのものを曲げ、変形させるのです。ウェーブフォルダーが波形をねじり、ローパスゲートが音色を整え、全体が有機的で予測しにくい反応を返してくれます。音源そのものが、予測できそうでできない振る舞いをするからこそ、聴き手の興味を引きつけ続けられるのです。

本当に新しい刺激をくれるものであれば、新しく試すシンセは何でも構いません。大切なのは、ゼロからひねり出そうとする前に、こちらが反応したくなる音を返してくれる音源を用意することです。

5. 演奏に応えるパッチにする


音が生き生きと動き始めたら、今度は、あなたの演奏に反応する仕組みを加えましょう。ここで必要なのは、さらにカオスを増やすことではなく、コントロールする手段です。Generateなら、VEL、MOD、PRS、そして対応していればMPEを使って、シンプルな演奏用のコントロールを組み立てます。

ベロシティ(VEL)

ベロシティ(鍵盤を弾く強さ)は、音量ではなく音色の変化に使ってみましょう。こんなパラメーターへの割り当てがおすすめです。

  • LPG Frequency:ローパスゲートのカットオフ周波数

  • Wavefolder Drive:ウェーブフォルダーへの入力レベル

  • Chaos Amount:カオス成分の量

強く弾けば、ぐっと主張のある音に。やさしく弾けば、よりクリーンな音に。

モジュレーションホイール(MOD)

MODは、自分専用の「マクロ」のように考えてみてください。ひとつの操作で、音全体の雰囲気を変えられるようにします。

  • Chaos Amountをわずかに変える

  • ステレオの広がりを変える

  • リバーブやディレイを少しだけ足す

コツは、控えめに効かせることです。

アフタータッチ/プレッシャー(PRS)

鍵盤を押さえたあと、さらに押し込む力に応じて、音がふわっと開いていくような表現にぴったりです。

  • Animate:音に動きを与えるパラメーター

  • Folds:波形の折り返し回数

  • LPG Resonance:ローパスゲートの共振の強さ

MPEのTimbre(対応機器があれば)

音ごとに異なる動きを与えると、パッチはさらに生き生きと感じられます。

  • Interval:基準となる発振器とカオス・ジェネレーターの音程差

  • Wavefolder Shape:ウェーブフォルダーでの波形の変形の仕方

  • FX Amount:エフェクトの量

演奏時に使う操作は、多くても2〜3種類までに絞りましょう。飛行機のコックピットばりに、操作を増やす必要はありません。触れたときに、音楽的な反応が返ってくれば十分です。

6. 疲れ切る前に、作業や聴き方を変える


ときには、音作りの行き詰まりを解く方法が、文字どおり「音作りをしないこと」だったりします。パッチと長くにらめっこしすぎたら、こんなことを試してみましょう。

  • ドラムの作業に移る

  • 新しく作った音だけを残して他をミュートし、ループで聴く

  • 10分ほど席を離れる

耳をリセットすると、さっきまで見えなかった答えが、すっと見つかります。たいていは、こんなふうに思うはずです。

「待って。この音、実はすごくいいじゃないか」あるいは、「全体としては違うな……でも、ここの2秒間こそ主役だ!」

いま行き詰まっているなら、この手順で


すぐ試せる、短いレシピをまとめておきましょう。

  1. シンセを立ち上げる。Generateを持っているなら、ぜひそれを。

  2. 音色を作り込む前に、まず動きを加える。

  3. 明らかに「おかしい」と感じるパッチを作る。

  4. その後段に、大胆すぎるくらいのエフェクト・チェーン(複数のエフェクトをつないだもの)を組む。

  5. MIDIのベロシティとモジュレーションホイールをパラメーターに割り当て、演奏に反応するようにする。

  6. 気ままに弾いたり、つまみを動かしたりしながら音を探り、その様子を3〜5分録音する。

  7. 何かがひらめいた瞬間を切り出す。

これだけです。たった1回のセッションで、最初から狙っていては出会えなかった音が、ひとつ生まれます。カオスも、動きも、生命感も、音源の仕組みそのものに組み込まれている。そんな、このワークフローにぴったりのシンセを探しているなら、Generateで、この記事のアイデアをひと通り実践してみてください。


Generate

Generateは、Newfangled Audioが開発した、カオスを音作りに取り入れたソフトウェアシンセサイザーです。8種類のカオスオシレーター、5種類のウェーブフォルダー、ローパスゲートを組み合わせ、滑らかな音色から複雑に変化するサウンドまで、多彩な音作りに対応します。

LFOやエンベロープによる柔軟なモジュレーション、MPE対応、コーラスやディレイ、リバーブなどの内蔵エフェクトも搭載。パッドやベース、リード、動きのあるテクスチャーまで、幅広いサウンドを作り込めます。

 


本記事は、Newfangled Audio公式ブログの記事を、メーカーの許諾を得て日本語翻訳・編集したものです。