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【連載】eXplorer 9でサウンドメイキング – vol.1

Albino-3 Legend

先頃リリースされたRob Papen社製品の全てが揃う総合バンドルパッケージ「eXplorer 9」には「LowSane」「Go2-X」「Albino-3 Legend」が新たに追加されています。

その中から今回は「Albino-3 Legend」をピックアップして紹介しましょう。

Albino-3 Legendとは?

AlbinoはLin Plug社から2006年にVirtual InstrumentデザイナーのPeter Linsenerとオランダのサウンドデザイナー兼ミュージシャンのRob Papenのコラボレーションから生まれたソフトシンセですが、VST3サポート、GUIサイズの変更、最新PC/Mac OSとプロセッサーとの互換性が追加され「Albino-3 Legend」としてリリースされました。Albino-3 Legendは、先日リリースされた「eXplorer 9」にも収録されています。

Albino-3 Legendは、フレキシブルに設定可能なオシレーターと4種類のステレオフィルターや自由度の高いモジュレーションオプションなどに加え、最大32ステップのアルペジエーター機能、1プリセットに対して最大4レイヤーを組み合わせ可能なレイヤー構造など豊富なパラメーターや機能を有しながらもサウンドメイクのための使いやすさが考えられたインターフェースを持った32音ポリフォニック・バーチャル・サブトラクティブ・シンセサイザーです。

また、既存のAlbino-3のプリセットデータもAlbino-3 Legendで読込可能なため、これまでに作成した音色データの資産を有効活用することが可能です(下記ビデオ参照)。

Albino-3 Legendの主な仕様について

続いて主な仕様についてみていきましょう。

Albino-3 Legendは1レイヤーにつき4基のオシレーターを使用したサウンドメイクが行なえるだけでなく、それを4個分使用したレイヤー音色を作成できますので、重厚かつ複雑なサウンドが得られます。また、Rob Papenと様々なアーティストによる2,100以上のプリセットが用意されていますので、まずはそれらを活用するところから始めてみるのも良いでしょう。

Albino-3 Demo Song 1

前述のオシレーター・モジュールはアナログ、デジタル、ノイズの他、オシレーターのソースとしてオシレーター1にはオーディオ入力が用意されている点がユニークです。加えてFMとAM変調が行なえる他、アナログ・オシレーター2と4でオシレーター・シンクも可能などオシレーターの機能は充実しています。

図1:オシレーターセクション。上下2段に配置され、上はオシレーター1と3、下はオシレーター2と4を切り替えて表示する。

フィルター・モジュールにおいてはSilk(シルク)、クリーム(Cream)、スクリーム(Scream)コーム(Comb)という4タイプが用意されており、コーム以外(Silk、Cream、Scream)のマルチモード・フィルターは、基本設計がそれぞれで違うため、フィルター効果で得られるサウンドも異なります。また、フィルターはステレオ仕様になっており、パンニングやパンニング・モジュレーションが行なえる点も本製品の特徴になっています。

図2:フィルターセクション。こちらも上下2段に配置され、上がフィルター1,下がフィルター2となっている。また、右側部分にはアンプセクションが配置されている。

エンベロープやLFOによる変調機能も充実しています。

エンベロープは8基あり、ADSFRタイプとループ機能付きの5ステージ・エンベロープ・タイプが用意されている他、オシレーターごとにボリューム・エンベロープを装備しています。

図3:エンベロープセクション。ADSFRタイプと5ステージタイプを任意に切替可能。図の状態はADSFR型の場合の表示例。

LFOは4基あり、MIDIによる同期が行なえる他、LFO波形の開始時の位相や波形の対称性などが調整できます。

図4:LFOセクション。4基のLFOは右側のL1からL4のボタンをクリックして切り替えられる。

これらのエンベロープやLFOを含めた27ソースと36デスティネーションが設定可能なモジュレーション・マトリックスを装備し、16個の変調ルーティングが設定できます。

図5:モジュレーションマトリックス機能はLFOセクションと同じ部分に配置され、右側のMXボタンをクリックして表示させる。

サウンドメイクに不可欠なエフェクトは、ステレオ・エフェクト12種類(コーラス×2タイプ、ディレイ×2タイプ、フィルター、フェイザー、リバーブ、フランジャー、ゲーター、ワウワウ、コンプレッサー、LoFi)を各レイヤーに4基搭載する他、

図6:エフェクトセクション。各レイヤーごとに4基用意されており、各エフェクトにおいて12種類のエフェクトが選択可能。

指定した条件下でパラメーターをランダムに生成するGenコントロール機能による音色作りも可能です。

図7:Genコントロール機能はマスターセクションに装備され、図中の黄色の枠線で囲んだ部分をクリックすることでパラメーターの設定値をランダマイズして設定する。

プリセットを組み合わせたレイヤーサウンドの作成方法

では4レイヤー構成によるAlbino-3 Legendの重厚なサウンドを容易に体感する方法を紹介しましょう。

「バンク:z init preset」「プリセット:initial preset」を選択し、初期設定状態にします。

図8:マスターセクションにおいて図中の黄色の枠線で囲んだ部分でバンク、プリセットを選択する。

図中の「L」ボタン(黄色の枠線で囲んだ部分)をクリックすると、

図9:読み込みたいレイヤーの番号の「L」をクリックする。ここでは2番のレイヤーにサウンドを読み込ませる。

プリセットを読み込むダイアログが表示されますので、Windowsの場合であれば、「ドキュメント > Rob Papen > Albino 3 > Albino3Banks > ******」のように進み、読み込むプリセットサウンドを選択します。この時、プリセット自体に既にレイヤーが組まれているプリセットは読み込めないので注意が必要です。

同様に2番のレイヤーも読み込ませてみましょう。

図10:2番のレイヤーにサウンドを読み込ませた状態。

読み込ませた後、図示した部分をクリックするとそのレイヤーが発音可能な状態になります。

図11:黄色の枠線で囲んだ部分をクリックしてオンにすると2番のレイヤーサウンドが発音可能な状態となる。

各レイヤーのボリュームやパンを適宜調整するとリッチなレイヤーサウンドの完成です。

図12:ボリューム、パンは図中の黄色の枠線で囲んだ部分で調整する。他にもキーレンジやベロシティレンジなども調整することで、表現力あるサウンドが作成可能だ。

内藤朗

キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、サウンドクリエーターなど様々な側面を持ち、S.E.N.Sのレコーディングサポート、安部OHJIの様々なプロジェクトでのレコーディング、ライブなどに関わるなど、作編曲からレコーディング制作、ライブ演奏など多方面で活動中。MIDIやDTM関連の分野では黎明期から今日に至るまで長きに渡り関わっており、多様な経歴を持つ。また、音楽制作系のライターとしても広く知られ、近著に「音楽・動画・ゲームに活用! ソフトシンセ 音作り大全」(技術評論社刊)、共著「ミュージッククリエイターハンドブック 2023年改訂版」(ヤマハミュージックエンターテインメントホールディングス刊)などがある。有限会社FOMIS代表取締役、一般社団法人日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)正会員、MIDI検定指導研究会会員。