Go2-X True Romance / DJ KIRA
Rob Papen繋がりでまたレビューを執筆させていただきます、DJ KIRAです!
オランダのRob Papen社製品の全てが揃う総合バンドルパッケージ「eXplorer 9」にも入っているソフトシンセ「Go2-X」を使用し、CUBASE13でトラックメイキングしてみました。
モーフィングシンセサイザープラグイン「Go2」の最新アップグレードバージョンにあたり、独自の波形によるモーフィングが可能なモーフオシレーター、ラチェット機能、ランダマイズに特化したマジックモード、新搭載のアルペジエーター、エフェクト内のFXセクション等、オリジナリティ溢れる新機能を備えています。
トラックのイメージ
曲作りのイメージとして、「ハイパーポップとブロステップの要素を取り入れたしっかり踊れるダンスミュージック」を意識して制作してみました。
“Go2-X True Romance” by DJ KIRA
ソフトシンセのアプローチ
普段からソフトシンセを多数使っていますが、モジュラーシンセサイザーのように一から音作りをするのは一割程度で、プリセット選びをしてから他の音との兼ね合いをはかり、各設定をいじって音を仕上げていくスタイルです。イメージする欲しい音へのアクセスの良さを第一に、速度感重視で考えます。
「Go2-X」はプリセットだけで1700以上ありますが視認しやすく、探している音への到達速度はかなり早いです。プリセット選び中のセレンディピティも重要ですが、創作アイデアを刺激する大変ユニークなプリセットが沢山入っていましたので、想定外の曲の出来も期待できると思いました。
各パートの解説
まず最初イントロから取り掛かり、一手目にパッド系を置きたく、PRESETのQuick BrowseからPads、一番上にあった[Ayres Pad]がいきなりかっこよかったのでこれに決定。設定もいじっていません。
続いてその下に敷くベースも同様にPRESET、Bassesから探し、[D-Click Spec Bass]を選択。アタックを少しまろやかにしたく、オシレーターのMorph Amountスライダーを上目に設定。
ピアノは生音っぽいものが欲しかったのでreFX NEXUS4を使用。
最初は静かな印象、次の展開には激しい動的な印象のパートを置き、静→動と順番に出てくる展開を想定。0‘07~のリード音は今作の主役と呼べるものが欲しいので、片っ端からプリセットをチェックし、[SEQ-Guitarwave]が耳に止まりました。
アルペジオもかっこよかったのですが音自体が好きでしたので、Play ModeをArpからPolyに切り替え、手弾きでフレーズを考えました。
後ろのバッキングシンセは、プレーンでチープな音が良いかと思い、デフォルト状態からオシレーターにSawとSquareを配置し、Morph Amountスライダーを真ん中にしたシンプルなのものにしました。オシレーターのSYMつまみをほんの僅か左に回し、プラグインでSideを上げ、音を立たせています。
ここのベースは[Digi Go2X Bass 05]をプリセットのまま使用、Waves Renaissance Bassでローを増幅しています。
ドラム等のリズム系は全てSpliceから選び、Sausage FattnerやFaturatorで大きく歪ませたり、個別にCUBASE付属のコンプで調整、グループ化して更にコンプをかけて処理しています。
次の展開のARPシンセはPRESETの一番先頭にある[A Way 2 Go2-X]と、[Charp JoMal]を混ぜて使用。双方ともARPモードの状態でフレーズを弾いています。[A Way 2 Go2-X]は、右下に4基あるエフェクトのREVERBをONにし、良い感じに馴染むよう調整。ゴテゴテと余計なエフェクトが無く本当に必要なものだけあるので、簡潔で扱いやすく助かります。
ちなみにこのJoMalのプリセット群は特に興味深い音が多数散見されました。
0‘24~の声のチョップは、長年使っているOUTPUT EXHALEを使っています。
0‘30~出てくる速いコードバッキングは、[Classic Tech Chd Arp RF]を、
ベースの汚しの重ねるHigh用にローカットした[Go2 Wob 04]を使用。
Wobble Bass系へのアクセスが良好でした。
0‘36~の変化をつけるためのリードシンセは、[LD Abraxas-Odd]を、少しWAVESのSquare寄りに設定、CUTOFFは少し切る方向に。PLAY MODEのUNISON MODEを3に上げDETUNEを多めにかけて幻想的なニュアンスにしています。
0‘48~のブレイクパートのアルペジオシンセは[LD Mahltex-Odd]を手弾きし、Waves Oneknob Filterでフィルターオートメーションを書いています。
Padは[Into Thin Airpad]で、今までと少し違う鳴りのパッドを使用。
Vengeance TAPESTOPで最後切っています。
0‘59~のARPシンセには、重ねて使用していたサブの[Charp JoMal]に新しいレイヤーとして[Arp with Velocity ARP]を重ね、WAVE BのTriangle寄りに設定して使用。
後半1‘05~からグライドして上がっていくリードシンセに[LD Time Matters-Odd]を、PLAY MODEでMONOにし、PORTでポルタメントを上げ、PORT MODEをConstant Timeに設定し、PANを振りまくって盛り上げ感を出しています。
トラック全体にFabFilter Pro-Q 3を各インサートし、帯域のカブりをDynamic EQ等で防いでいます。
iZotope Ozone11等も使用してミックスし、整えています。
アウトボードは今回は使っていません。
最後に
まだまだとても沢山の使用していない機能があるのですが、プリセットを選ぶだけでも存分に作れてしまいますので、DTMをはじめて間もない方から上級者まで、Go2-Xは幅広い層で間違いなく活躍すると強く感じました。
基本的なものからかなりクレイジーな音までサウンドの選択肢がかなり広く揃っており、トレンドを踏まえたポップスからGarage系、Future系、Dubstep、最新のTrapやJersey Club等クラブミュージック全般、劇伴まで網羅できます。捨てプリセットも見受けられません。CPU負荷もかなり軽めでサクサク動いてくれます。
モーフィングによって容易に音作りが無限大にでき、尚且つ恐るべきコストパフォーマンスを誇り音も良い、これは実装しない手はありません!
“Go2-X True Romance” by DJ KIRA 〜 .WAVバージョン(48 kHz/32 bit浮動小数点)
DJ KIRA

90年代ダンスに明け暮れクラブミュージック全般の虜に、10代後半にHIRO(ex ZOO, EXILE)に弟子入り、その後DJ活動なども経て、トラックメーカーの道へ。
DANCE MUSICを基盤としてCMや舞台、EXILEをはじめ様々なアーティストへ楽曲を提供。
DIGITAL ROCK UNIT「BOOBEE BROTHERS」、DJ MAKIDAIとのユニット「Sound Goes Around」 の名義も持つ。
DJ・作曲家・トラックメーカー・アレンジャー。
☆EXILE・PKCZ®の楽曲やリミックス、三代目 J SOUL BROTHERS・GENERATIONSやLDH所属のLIVEパフォーマンス曲、“武者修行”使用曲、舞台や映画、CM音楽まで幅広く手掛ける。DJ MAKIDAIのマニピュレーターとしても活動。