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Auto-Tune Tips – vol.1

Auto-Tune Tips 第1回 〜 Vocal EQ入門 〜

ピッチ補正、自動ハーモニー生成、マイク・モデリングなどボーカルトラックの編集おいて必要なツールが揃っているAuto-Tune Unlimitedは、今やマストアイテムと言える製品でしょう。
そのAuto-Tune Unlimitedに追加されたVocal EQは、Antaresならではの技術が活かされたプラグインEQです。

ここでは、Vocal EQのポイントを紹介しましょう。

Vocal EQの特徴

Vocal EQは、Auto-Tuneならではのピッチトラッキング技術を内包した6バンドのフル・パラメトリック・ダイナミックEQ、ローパス、ハイパスの各フィルター、“エアバンド”というハイエンドの存在感を加えるためのEQを装備する他、スペクトルの高域と低域のバランスをとるためのチルトEQフィルターなどを装備したEQプラグインです。
また、ダイナミックフィルターを追加するための外部サイドチェーン機能や特定のバンドのみをモニタリングするのに便利なバンド/ソロモードなどを備えるなど、ボーカルトラックのEQ調整を行なう際に便利な機能が備わっています。

Vocal EQを使ってみよう

それではVocal EQのウリとなる機能3つについて紹介しましょう。

(1):ボーカルのピッチをリアルタイムで把握可能

Vocal EQは、ボーカリストのピッチのリアルタイム変化をGUI上部のピアノロール表示部分に具体的なオクターブやピッチで音名表示されますので、音楽的にボーカルトラックの調整を把握しやすくなっています。

GUI左上部にある“Auto-Tune Pitch Metering”をオンにすると、ボーカルの基本ピッチに追従した視覚補助が表示されます。

(2)効率良いEQ調整をフォローするVocal Learning機能

ボーカルトラックのEQ調整は、ボーカリストの音域や声質を考慮して行ないますが、Vocal EQには入力されるボーカルのタイプを自動的に判別して、最適な声域(アルト、テナー、ソプラノ)のレンジを設定する機能があります。
また、ボーカルだけではなく、楽器の音域にも対応していますので、実はボーカル以外のトラックにも使えるのもポイントです。
設定手順は至ってシンプルです。
Vocal EQを使用したいトラックにインサートしたら、GUI中のセンター上部からやや左にある“Learn”ボタンをクリックし、DAWを再生します。

再生と同時に最適音域の解析が開始され、

解析が終了するとレンジが設定されます。

音域が設定されると同時にそれに合わせてハイパスフィルターも設定されます。

ミックス作業においてドラムのキックやベースなどの低音楽器との競合を避ける理由から、ボーカルトラックの低域はカットするのが一般的です。
音域を自動で解析できるだけでなく、低域カットも同時に行なってくれるのは、非常に作業効率が良いでしょう。

(3)ボーカリストの倍音構成に追従したEQ調整が可能

また、Vocal EQはピッチトラッキングによるボーカリストの声質の基音や倍音をフォーカスしてピッチ追従できるのもユニークな特徴です。
これによって、ボーカリストの声質に含まれる特定の倍音のみを的確かつ容易に調整し、耳障りな高域のピークや気になる中域の膨らみなども容易に調整可能です。

いかがでしょうか。
エアバンド”の使い方や実際のサウンドメイクのポイントなどは次回紹介したいと思います。

内藤朗

キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、サウンドクリエーターなど様々な側面を持ち、S.E.N.Sのレコーディングサポート、安部OHJIの様々なプロジェクトでのレコーディング、ライブなどに関わるなど、作編曲からレコーディング制作、ライブ演奏など多方面で活動中。MIDIやDTM関連の分野では黎明期から今日に至るまで長きに渡り関わっており、多様な経歴を持つ。また、音楽制作系のライターとしても広く知られ、近著に「音楽・動画・ゲームに活用! ソフトシンセ 音作り大全」(技術評論社刊)、共著「ミュージッククリエイターハンドブック 2023年改訂版」(ヤマハミュージックエンターテインメントホールディングス刊)などがある。有限会社FOMIS代表取締役、一般社団法人日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)正会員、MIDI検定指導研究会会員。