Youtubeで驚異的な閲覧数をたたき出すピアニスト
まずは、この動画を見てください!
どうです? 背筋がゾクゾクするような演奏じゃありませんか?
私がこのビデオを初めて見たときは、失礼だとは思いますが、「魔女みたいだ」と思いました。ものすごい演奏テクニック、スピード感、爆発するようなダイナミック感、どれをとってもこの世のものとは思えない感じです。このビデオの最後に流れるクレジットのフォントが、もしかして本当に魔女?という感じを引き立てています。ものすごくカッコいいラフマニノフです。
彼女はヴァレンティーナ・リシッツァ(Valentina Lisitsa)という米国在住のウクライナ出身のピアニストです。興味がある方はそこまで情報が載っているとは思えせんが、以下の情報をご覧ください。
日本ではまだあまり知られていないようですが、このYoutubeビデオがきっかけで世界で人気を博すようになったようです。閲覧回数も驚異的な数字をたたき出しています。
上記のビデオを載せた理由などを語っているインタビュー・ビデオがありましたのでご覧ください。魔女といってしまいましたが、意外とかわいらしい人みたいです。
(インタビュー内容)
インタビューア(以下I):(上記のビデオに関して)今まで聞いた中で最もエキサイティングなものでした。
ヴァレンティーナ・リシッツァ(以下VL):そうですね。本当にエキサイティングであるとともに、非常に感情的に張り詰めたものでした。
I:ですが、この曲に対してあなたは別の次元を与えたと思います。どういっていいかわかりませんが、ダイナミクス、スピート、柔軟なテンポとかを。
VL:そして、ビジュアル的にも凝ったものになっています。他の曲もできたかと思いますが、ここでは言いません。いつか時期がきたら言います。このYoutubeで撮ったビデオクリップは、本当に素晴らしいもので、実はマイアミの学生が撮ったものでした。これがこれまでの中でベストなもので、ワイルドなものだったので、これをYoutubeで出すことになりました。
I:この番組の冒頭でも申し上げましたが、このビデオは90万ビューア*にまでなったようですね(*現在は160万ビューアです)。
VL:ビデオのクオリティ自体はそれほど完璧なものではなかったんです。この曲を知っている人は映像と音がシンクしていないと気がつくことでしょう。というのも、異なるカメラで撮って全て学生が制作したもので、この番組のスタジオでの撮影みたいにプロが撮ったものではないですからね。ですが、このビデオには多くの人を引きつける何かがあった。見ている人の中にはミュージシャンではない人たちがいました。彼らはコメントを残してくれていますが、私もこれらのコメントを見て、このビデオについてどう感じたのかについて確認していました。もちろん、これらのコメントを見て本当に嬉しく思いました。
I:今では多くのファンがいらっしゃると思いますが。
VL:でもビデオをアップして最初の年のコメントでは、「このビデオは分けて撮ったんじゃないか」というものがありました。パフォーマンスをこれほど簡単にやっているからだと。正直この演奏は私にとってはそれほど難しいものではありません。難しいように見せなければなりませんでしたが。そして、ビデオをなくして音声だけにしても、「編集を重ねたからできたので、そうじゃなければこんな演奏ができない」というコメントもありました。なので、私がこういう演奏ができるのだということを証明するビデオを制作することに決めました。それでも、やっぱり結局は分割して撮ったんだというコメントでした。
I:本当ですか(笑)
VL:あの頃は結構ナイーブだったのだと思います。というのも、ビデオ撮影とか、Youtubeの可能性とかもあまり分かっていなかってですからね。
I:とはいえ、いずれにしてもあなたはYoutubeで有名になった。コンサートの仕事にはどうですか?
VL:本当に多くのYoutubeでのファンがコンサートに来てくれます(笑)。彼らはいろんな国から来ています。ここ(オランダ)でコンサートをしても、ハンガリーの人が来たり、日本の人が来たり。本当に素晴らしいことですよ。
上記の疑念を払拭するためにも(?)、この番組で演奏しているパフォーマンスがありましたので、見てみてください。
これまで色々なアーティストがYoutubeに自分の演奏をアップしていると思いますが、クラシック音楽のアーティストも例外ではありません。Youtubeはグローバル化が進んでいき、それに伴い価値もどんどん相対化してきています。Youtubeでは、Gangnam Styleなどのアーティストが話題を集めたりするかと思いきや、こうしたクラシックのアーティストにもスポットライトがあたる。
どれを選ぶか、どれに興味を持つかは個々人の自由です。クラシックのピアノ曲に全く興味がなかった人でも、もしかするとYoutubeを通して興味を持つかもしれないし、そうでないかもしれない。ですが、これはクラシック音楽のアーティストにとっては大きなプラスであると思います。
昨今クラシックを聞く人口はどんどん減っていっているというのが現状でしょう。ジャンルが異なるアーティストたちがYoutubeという同じ土俵で自分の魅力を披露する。聞く機会があれば、好きになってくれる可能性が広がる。
今となっては当たり前のことですが、Youtubeというのは、そうした新しい可能性を引き出してくれるものだな、と再認識させられました。