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Spireでゼロからのサウンドメイク vol.22

今回はできる限りリアルな質感を持たせたエレクトリックオルガン音色を作成してみたいと思います。
オルガン音色を作ると同時にオシレータセクションのFMモードについても少し詳しく見ていきましょう。

今回の作成音色を読み込んだメイン画面

<デモサウンド>

今回作成した音色のデモサウンドです。マトリックス機能を使用してコーラスエフェクトのかかり具合をリアルタイムコントロールしています。

エレクトリックオルガン音色の作成のポイント

エレクトリックオルガンと言えば、ハモンドのB-3に代表される電気モーターでトーンホイールを駆動して音色を作り出すオルガンサウンドをイメージする人が多いと思います。この楽器では、9本のドローバーを組み合わせることで様々なオルガンサウンドを得られるようになっているのが特徴です。このドローバーは、楽器本体内部で生成された基音を含めた9個の異なる高さのサイン波出力のボリュームバランスを調整するためのもので、いわゆるアディティブシンセシスと同じ方法論に基づいた音色合成方法と言えます。Spireを使用して可能な限りリアルな音色に仕立てたい場合には、以下の2つの点に留意しつつ作成するのがポイントとなります。

1:4基のオシレータをそれぞれ1本のドローバーに見立ててミックスバランスを調整しながら作成する
2:オシレータセクションのFMモードを使用し、オルガンに適した倍音を含んだ波形を作り出す

オシレータのFMモードを使用する利点

SpireのFM変調では、オシレータセクション下部にある波形リストで選択した波形を変調するのが特徴です。モジュレータはサイン波が使用され、CtrlAでモジュレーションの強さ、CtrlBでモジュレーション周波数を設定します。

ここで選択する波形をサイン波にすれば、モジュレータとキャリアが両方ともサイン波となり、DX7のような変調感が得られます。

FMモードに設定した状態。黄色の枠線で囲んだ部分でサイン波を指定している。

また、FMモードにするとサイン波が得られるという点は、エレクトリックオルガン音色を作成する場合に非常に有効です。

単純に4基のオシレータ全てをFMモードにして、何の変調も行わずそれぞれのコースチューニングやオクターブ設定を行い、出力レベルのバランスを調整するだけで、ドローバー4本分の調整を行えるオルガンのように扱えるワケです。

オシレータの設定

それでは各オシレータの設定について解説しましょう。

全てのオシレータはFMモードに設定し、サイン波が出力される状態になっています。オシレータ3と4だけは高域の倍音を加えるために少しだけ変調を施しています。

それぞれのオシレータのオクターブやコースチューニングについては下図を参照してください。

各オシレータの設定状態。各画像は、上から順に、「オシレータ1」「オシレータ2」「オシレータ3」「オシレータ4」の設定となっている。

また、各オシレータはデフォルト状態のままだと、やや音の厚みに欠けるので、それぞれユニゾンモードを個別に使用して音の厚みを加えています。

<音色データ>

今回作成してるサウンドのプリセット・データ(音色データ)です。
以下のリンクをクリックしてダウンロードされる「B3_Organ_1.spf_.zip」ファイルを解凍後、現れた「B3 Organ 1.spf」ファイルを、SpireのLoad Presetから読み込みます。

Reveal Sound SPIRE

Spire

ポリフォニック・シンセサイザー

内藤朗

キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、サウンドクリエーターなど様々な側面を持ち、S.E.N.Sのレコーディングサポート、安部OHJIの様々なプロジェクトでのレコーディング、ライブなどに関わるなど、作編曲からレコーディング制作、ライブ演奏など多方面で活動中。MIDIやDTM関連の分野では黎明期から今日に至るまで長きに渡り関わっており、多様な経歴を持つ。また、音楽制作系のライターとしても広く知られ、近著に「音楽・動画・ゲームに活用! ソフトシンセ 音作り大全」(技術評論社刊)、共著「ミュージッククリエイターハンドブック 2023年改訂版」(ヤマハミュージックエンターテインメントホールディングス刊)などがある。有限会社FOMIS代表取締役、一般社団法人日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)正会員、MIDI検定指導研究会会員。