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Spireでゼロからのサウンドメイク vol.40

さて、今回は1からシンセドラムの各音色を3回に渡って紹介していきましょう。

既製のシンセドラム音色が曲のイメージに合わない時などの他、既にあるドラムキットへのチョイ足し成分としてレイヤーする場合など覚えていくと色々と応用できると思います。

まずはキックから作ってみましょう。

今回作成した音色の設定を表示した全体像。

<デモサウンド>

今回はキック、スネア、ハイハットを作成してドラムキットを組み、
Spireのシンセベースと共にリズムトラックを作成しています。

ちなみにミックスの際に使用したリバーブはFabFilterのPro-Rです。
エフェクトのセンドリターン用トラックを作成し、各ドラムキットに適宜かけています。

キックの音色のポイント

1970年代頃のリズムボックスにおいてキックの音色は、サイン波を減衰音型のエンベロープ変調して作成されているものが多く見受けられるように、Spireにおいてもサイン波を使用して同様にエンベロープを設定すればおおよその音色は作成できます。

この設定をベースにSpireならではの4オシレータを活かし、よりキックらしさを加えていきます。

オシレータの設定

4基のオシレータの1と4はキック音色のボディとなる基本部分、2と3でアタック成分を作成してミックスしています。

各オシレータセクションの設定状態。それぞれ上からオシレータ1、オシレータ2、オシレータ3、オシレータ4となっている。

設定のポイントは、基本部分となるオシレータ4のオクターブをオシレータ1より更に1オクターブ下げていることです。低いピッチのサイン波なのでパッと聴いた感じの違いはわかり辛いかもしれませんが、これによってサブベース的な重低音を加える役割をしています。また、オシレータ2と3を使用したアタック部分は、アタック感を表現するのにFM変調が適していますので、HardFMモードに設定しています。

フィルターの設定

今回の音色はオシレータ1、2、4をフィルター1、オシレータ3のみフィルター2で加工しています。

フィルターセクションの設定状態。

フィルターを変えることで同じローパスフィルターを使用しても音色変化のニュアンスが異なるため、同じような波形をフィルタリングしても違うサウンドが得られるなどのメリットがあります。それぞれのフィルターカットオフにはENV 3をカットオフ1、ENV 4をカットオフ2で変調していますが、それぞれのアタックとディケイを異なる設定し、より良いアタック感を得られるように調整しています。

上からそれぞれENV3、ENV4の設定となる。尚、カットオフそれぞれに対するベロシティセンス値の設定もここで行なっている。

その他の設定のポイント

その他設定のポイントとしては、ベロシティ感度の設定も重要です。リズム楽器ですので、強弱変化による音色変化は設定しておいた方がドラムトラックを打ち込む際に便利です。今回はマスターボリュームとカットオフ1と2を最高感度に設定していますが、この辺は用途によって適宜調整すると良いでしょう。

マスターボリュームのベロシティセンス値はENV1の黄色の枠線で囲んだ部分で設定している。

この他、マスターアウトのX-COMPも使用して、音圧感を増していますが、これについてもお好みで調整してみてください。

マスターアウトセクションのX-COMPはこのように設定している。

<音色データ>

今回作成してるサウンドのプリセット・データ(音色データ)です。
以下のリンクをクリックしてダウンロードされる「AnalogKick.spf_.zip」ファイルを解凍後、現れた「Analog Kick.spf」ファイルを、SpireのLoad Presetから読み込みます。

Reveal Sound SPIRE

Spire

ポリフォニック・シンセサイザー

内藤朗

キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、サウンドクリエーターなど様々な側面を持ち、S.E.N.Sのレコーディングサポート、安部OHJIの様々なプロジェクトでのレコーディング、ライブなどに関わるなど、作編曲からレコーディング制作、ライブ演奏など多方面で活動中。MIDIやDTM関連の分野では黎明期から今日に至るまで長きに渡り関わっており、多様な経歴を持つ。また、音楽制作系のライターとしても広く知られ、近著に「音楽・動画・ゲームに活用! ソフトシンセ 音作り大全」(技術評論社刊)、共著「ミュージッククリエイターハンドブック 2023年改訂版」(ヤマハミュージックエンターテインメントホールディングス刊)などがある。有限会社FOMIS代表取締役、一般社団法人日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)正会員、MIDI検定指導研究会会員。