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Spireでゼロからのサウンドメイク vol.10

ゴシック系やクラシック系のアレンジにはオーケストラのストリングスやクワイアなどが良く使用されていますが、今回はそれらと共に比較的使用されることが多いパイプオルガンをSpireで作成してみましょう。

<デモサウンド>

今回作成したパイプオルガン音色を使用したフレーズ例です。
リバーブやディレイは本体内蔵エフェクトのみ使用しています。

まずはオシレータ周りの設定から解説していきます。

4個のオシレータを使用する

パイプオルガンはたくさんのストップ(ハモンドオルガンなどのエレクトリックオルガンのドローバーに相当する役割を持つ部分)を設定して一つの音色を作り出すため、非常にレンジの広い音色になります。それをシンセサイザーでシミュレートする場合にはオシレータの数が多いほど良いと言えます。Spireの場合は4オシレータ仕様ですので、今回はそれを全て使用します。それぞれのオシレータの設定は以下のようになっています。

オシレータ1の設定

オシレータ2の設定

オシレータ3の設定

オシレータ4の設定

最初に今回の音色を作成し始めた段階では、全てクラシックモードで矩形波の設定でオクターブやデチューンを設定していたのですが、それらしくならないため、まずオシレータ3と4はデューティ比を少し変えてみました。

次にオシレータ1と2をノコギリ波にしてみたところ、だんだんらしくなっていたため、更に波形を変えてみたり、オシレータのモードを色々と変えてみるなどしていたところ、オシレータ1をハードFMモードに設定してバイオリン波形を変調してみたところ、一番イメージに近いサウンドになったため、今回のような設定になりました。このハードFMモードへの変更やバイオリン波形の選択などは、何らかの根拠があって最初から行ったワケではなく、トライ&エラーを繰り返す過程で偶然にたどり着いたものです。

シンセサイザーの音色作りは、この繰り返しによってノウハウが蓄積されていくので、今回の音色に限らず、まずはパラメータを気に入ったサウンドが出るまで調整してみることが秘訣となります。

オシレータバランスの調整

各オシレータの設定が固まったら、イメージするサウンドになるように各オシレータのボリュームレベルのバランスを調整していきます。

オシレータバランスの設定例

オシレータ1と2だけで聴いてみてもらうとわかるのですが、この2つだけだとシンセストリングス的な音色に聴こえると思います。つまり、パイプオルガン的なテイストはオシレータの3と4のバランス調整がポイントとなりますので、主にこの2つのオシレータを使用するシチュエーションに応じて調整してみると良いでしょう。

<音色データ>

今回作成してるサウンドのプリセット・データ(音色データ)です。
以下のリンクをクリックしてダウンロードされる「CathedralOrg.spf.zip」ファイルを解凍後、現れた「Cathedral Org.spf」ファイルを、SpireのLoad Presetから読み込みます。


Reveal Sound SPIRE

Spire

ポリフォニック・シンセサイザー

内藤朗

キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、サウンドクリエーターなど様々な側面を持ち、S.E.N.Sのレコーディングサポート、安部OHJIの様々なプロジェクトでのレコーディング、ライブなどに関わるなど、作編曲からレコーディング制作、ライブ演奏など多方面で活動中。MIDIやDTM関連の分野では黎明期から今日に至るまで長きに渡り関わっており、多様な経歴を持つ。また、音楽制作系のライターとしても広く知られ、近著に「音楽・動画・ゲームに活用! ソフトシンセ 音作り大全」(技術評論社刊)、共著「ミュージッククリエイターハンドブック 2023年改訂版」(ヤマハミュージックエンターテインメントホールディングス刊)などがある。有限会社FOMIS代表取締役、一般社団法人日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)正会員、MIDI検定指導研究会会員。