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Spireのプリセットサウンドを更に良くするチョイ足しエディット術 vol.26

今回はマトリックス機能を使用したシンセリード音色の設定例について解説したいと思います。

エッジの効いたシンセリード音色の作成例

シンセリード音色は、オシレータ1個で作成するとどうしても線が細い音色になりがちです。R&B系のサウンドでよく耳にするサイン波系リードのような音色の場合はむしろその方が良いのですが、音圧感のあるディストーションギターがメインの曲のような場合や主旋律をシンセリードで演奏する場合などにはエッジの効いたサウンドがほしいところです。

そこでチョイ足し感覚で作成したのが今回の音色です。使用しているオシレータは1つで、歪系のエフェクトも使っていませんが、マトリックス機能を活用するとエッジの効いたシンセリードを作成することができます。

まず、元となる音色はアナログシンセ波形の矩形波をベースに作ります。OSC1をクラシックモードに設定し、Ctrl Aを右に振り切って矩形波状態にします。

今回の音色もイニシャル状態から図のようにエディットを行った。ポイントとしては黄色の枠線で囲んだオシレータ1のCtrl Aの設定の他、シンセリードらしさを出すために発音モードをmono 2に設定している点だ。

Ctrl Bはパルス幅の設定が行え、LFOでコントロールすることでPWM波形になります。

ここでマトリックス機能を使用して図のように、

マトリックスの設定は図の通り。音色例のように各SLOTのアマウント量を変調することでより緻密なサウンドメイクが行える。

SLOT1と2を設定したのがこの音色のポイントで、この設定によって矩形波の変化に一工夫しているワケです。

LFOの1と3は図のような設定を行っている。LFO 1は音色の変調用、LFO 3はモジュレーションホイールでコントロールを行うビブラート用に使用している。

SLOT 1の設定はオシレータ1の出力でオシレータ1のCtrl Bを変調します。オシレータ出力はLFOよりも周波数が高くなりますので、SLOT 1のAmt 1のレベルの大きさに比例して波形の歪み感が増します。

SLOT 2の設定はLFO 1でSLOT 1のAmt 1レベルを変調します。この結果としてオシレータ1の出力レベルが周期的に変化するため、通常の設定では得られない歪み感を持った一癖あるPWM変調効果が得られます。

また、シンセリード音色をリアルタイムで演奏する際にはモジュレーションホイールでビブラート効果をつけたいので、SLOT 3でモジュレーションホイールでLFO 3のAmtレベルをコントロールできるように設定しています。

後はリード系と相性の良いディレイを適宜加えて空間演出を行うと完成となります。

音色例では図のような設定でディレイを加えているが、曲調やテンポによって適宜調整すると良いだろう。

<デモサウンド>
本文中で解説した音色による演奏例。作成例の状態では少々歪み感を控えめにしていますが、SLOT 1、2の変調レベルを大きくするとよりエッジの効いたサウンドになります。


Reveal Sound SPIRE

Spire

ポリフォニック・シンセサイザー

内藤朗

キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、サウンドクリエーターなど様々な側面を持ち、S.E.N.Sのレコーディングサポート、安部OHJIの様々なプロジェクトでのレコーディング、ライブなどに関わるなど、作編曲からレコーディング制作、ライブ演奏など多方面で活動中。MIDIやDTM関連の分野では黎明期から今日に至るまで長きに渡り関わっており、多様な経歴を持つ。また、音楽制作系のライターとしても広く知られ、近著に「音楽・動画・ゲームに活用! ソフトシンセ 音作り大全」(技術評論社刊)、共著「ミュージッククリエイターハンドブック 2023年改訂版」(ヤマハミュージックエンターテインメントホールディングス刊)などがある。有限会社FOMIS代表取締役、一般社団法人日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)正会員、MIDI検定指導研究会会員。