今回からはSpireが装備しているその他の機能を紐解いていきたいと思います。まずは「マトリックス機能」について解説したいと思います。
マトリックス機能とは?
例えば、ハードウェアのモジュラーシンセサイザーの場合、オシレータやフィルターなど各セクションのモジュールを自由に組み合わせて、自由に信号のルーティングをパッチングして音色エディットを行えますが、その他のシンセサイザーは、予め各モジュールセクションのパラメータの動きが決められており、EGやLFOなどのパラメータで変調可能なパラメータも限定されている場合が多々あります。それが個々のシンセサイザーの音色キャラクターの違いにもつながってきますので、決してそのことが悪いワケではありませんが、音色エディットに慣れてくると、自由にEGやLFOを使いまわしたい、というニーズも増えてくることでしょう。
そのニーズを満たしてくれる機能は一般的にマトリックスモジュレーションと呼ばれています。この機能を装備したシンセサイザーであれば、通常の信号のルーティングでは行えない変調を任意に行えるため、音色エディットの自由度が格段にアップします。ちなみにマトリックスモジュレーションという呼称は一般的な総称で、製品ごとに呼称が異なる場合があります。Spireでは「マトリックス」と呼ばれるセクションがこれにあたります。
Spireのマトリックス機能
Spireのマトリックスは15のスロットを装備し、3スロット×5ページで構成されています。各スロットは2つのソースと4つのターゲットの設定が行え、オシレータ、LFO、エンベロープ、ステッパー、MIDI信号、MIDIコントローラなどによって、ほぼSpireの全パラメータの変調が行えることになります。ここで出てくるソースとは変調を行うパラメータ、ターゲットとは変調されるパラメータのことを言います。例えば、Env2でオシレータ1のピッチを変調する時は、Env2がソース、オシレータ1のピッチがターゲットとなります。
さて、実際にマトリックス機能を使用すると、EGやLFO上で行う変調設定と同様のこともできます。マトリックス上ではEGやLFOがソースに、各セクションのAmtで割り当てていたパラメータがターゲットに相当しますので、まずはこれらの設定をマトリックス上で実際に試してみると良いでしょう。
マトリックスのスロットでソースを指定している状態。EGやLFOなどは音色自体に直接関わる変調元として使用する以外に、ベロシティやモジュレーションホイールなどは主にMIDIキーボードなどを使用してリアルタイムでコントロールしたいパラメータを設定する際にもマトリックス機能は活用できる。
単純に各セクションで行えるAmt設定と比較しても2倍のパラメータがソースで割り当てられますので、エディットの自由度がより柔軟になるのが実感できると思います。
次回は、実際にマトリックス上の設定例を紹介したいと思います。