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Spireのプリセットサウンドを更に良くするチョイ足しエディット術 vol.28

前回に続いてもう一つデチューンを活用したテクを紹介しましょう。
今回は独自のSuperSaw風サウンドを作る方法です。

デチューン効果を応用してSuperSaw風サウンドを得るには

前回はユニゾンセクションの設定を使用した方法でしたが、今回はシンセサイザーの音色作りのセオリーに則った方法でアプローチしてみましょう。
音色作りのポイントの一つには、オシレータごとのチューニングを微妙にズラして音色の原味を出すというのがありますが、これはシンプルに波形を出力した音の場合、うねりや揺れがなく単調になりがちなため、意図的に音を揺らすことで単調さを軽減させているワケです。
その定番ワザともいえるのが、オシレータのピッチズラしなのです。

さて、前回の最後にマニュアルに載っているSuperSaw風サウンドの設定を紹介しましたが、同様のサウンドをSpireの4オシレータをフル活用してシミュレートしてみましょう。
基本となる音色は前回作成したシンセリードとほとんど同じですが、今回はユニゾンセクションの設定を使用せずに、オシレータのデチューンで設定しています。



デチューンテクを盛り込んだ音色設定の状態。
ほとんど前回作成したシンセリードと同様のセッティングにしている。

設定を行う上ではデチューン具合を決定するwaveセクションのfineパラメータの設定加減がポイントとなります。




各オシレータのfineのセッティング。
SuperSaw風に仕立てたい場合には気持ち設定値を大きくすると良いが、ズラし過ぎると単にチューニングがズレてしまっている感じに聴こえてしまうので、出音を確認しながら設定すると良いだろう。

fineというパラメータは、各オシレータの微妙なチューニングを調整するパラメータですが、設定の際に全オシレータをズラすのではなく、1個はズラさないオシレータを用意しておくことです。これによって基準のピッチが維持できるので、他のパートと混ぜた時にも破綻し辛いこと、音の芯となってサウンドの線がハッキリしやすいこと、などが理由です。

この設定に内蔵エフェクトのディレイ、リバーブ、お好みでコーラスなどを加えるとデモサウンドのような音色となります。

<デモサウンド>
本文中で解説した音色による演奏例です。デチューン効果の違いを聴き比べられるようにフレーズは前回と同じフレーズにしているので、是非聴き比べてみてください。


Reveal Sound SPIRE

Spire

ポリフォニック・シンセサイザー

内藤朗

キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、サウンドクリエーターなど様々な側面を持ち、S.E.N.Sのレコーディングサポート、安部OHJIの様々なプロジェクトでのレコーディング、ライブなどに関わるなど、作編曲からレコーディング制作、ライブ演奏など多方面で活動中。MIDIやDTM関連の分野では黎明期から今日に至るまで長きに渡り関わっており、多様な経歴を持つ。また、音楽制作系のライターとしても広く知られ、近著に「音楽・動画・ゲームに活用! ソフトシンセ 音作り大全」(技術評論社刊)、共著「ミュージッククリエイターハンドブック 2023年改訂版」(ヤマハミュージックエンターテインメントホールディングス刊)などがある。有限会社FOMIS代表取締役、一般社団法人日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)正会員、MIDI検定指導研究会会員。