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Spire Topics & Tips – vol.7

あの曲のあの音をSpireで再現してみた(その3)

ベル系音色の作成ポイントは今回で一区切りとなります。

最後にオシレータ出力バランスの調整や、エフェクト設定などについて解説していきましょう。

オシレータバランスについて

今回作成した音色は4つのオシレータのそれぞれに音色の構成要素を振り分けていますが、基本的にはオシレータ1の音色に対して、他のオシレータの音量を調整してバランスを取っています。

図14:オシレータの出力バランスを調整するミキサーセクションの設定状態。音色の構成要素を分けて作成する際にはそれぞれのバランス調整が重要となるので、十分に調整すると良い。

音色的にはオシレータ2と4のバランス次第で聴こえ方が変わってくるでしょう。

また、オシレータ3はオケの中に入ると、目立たなくなる部分ですので、合わせ込んだ際の聴こえ方次第で音量を上げて調整します。音量バランスだけでしっくりこない場合には、ENV 2のディケイの長さを再調整すると良いでしょう。

図15:黄色の枠線で囲んだ部分がディケイの長さを調整する部分となるが、ディケイを上げ過ぎると、アタック感が逆になくなるので注意が必要だ。

エフェクト設定について

この音色で使用しているエフェクトはコーラスとリバーブです。

コーラスは、広がり感がもう少し欲しかったため使用していますが、ポイントとしてはwideは最大に設定しつつもレートは遅めに設定して、広がり感を増しつつも音揺れが目立たないように調整しています。

図16:コーラスエフェクトの設定状態。

リバーブについては、残響感を加えるという目的の他に、ベルのリリース部分の一部とみなした調整を行なっています。

図17:リバーブエフェクトの設定状態。

今回の設定ではdampの設定がポイントとなっています。元々dampは高周波成分の調整を行なうパラメータですが、残響音の明るさを変化させることができることから、ここではリバーブ的な響きの調整というよりは、元音のリリースのようなサウンドへ疑似的に仕立てるために使用しました。

これはオーソドックスな使用テクニックではないですが、目的とするサウンドが得られるような場合には、活用してみるのもアリですね。

音色作成のポイントとしては以上ですが、具体的なパラメータ設定は今回の音色のプリセットデータを用意していますので、本文と併せてチェックしてみてください。

↑ 今回作成してるサウンドのプリセット・データ(音色データ)です。ダウンロードされる「Kimetsu Bell.spf2.zip」ファイルを解凍後、現れた「Kimetsu Bell.spf2」ファイルを、SpireのLoad Presetから読み込みます。

内藤朗

キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、サウンドクリエーターなど様々な側面を持ち、S.E.N.Sのレコーディングサポート、安部OHJIの様々なプロジェクトでのレコーディング、ライブなどに関わるなど、作編曲からレコーディング制作、ライブ演奏など多方面で活動中。MIDIやDTM関連の分野では黎明期から今日に至るまで長きに渡り関わっており、多様な経歴を持つ。また、音楽制作系のライターとしても広く知られ、近著に「音楽・動画・ゲームに活用! ソフトシンセ 音作り大全」(技術評論社刊)、共著「ミュージッククリエイターハンドブック 2023年改訂版」(ヤマハミュージックエンターテインメントホールディングス刊)などがある。有限会社FOMIS代表取締役、一般社団法人日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)正会員、MIDI検定指導研究会会員。