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Spire Topics & Tips – vol.6

あの曲のあの音をSpireで再現してみた(その2)

前回に続いて、ベル系音色の作成ポイントについて解説を進めていきましょう。

今回はフィルターセクション、EGの設定などを中心に紹介したいと思います。

フィルターセクションの設定

フィルターセクションでは、ローパスフィルターを使用して調整を行なっています。イメージとしてはオシレータから出力されたFM変調波形の表面のザラつきを取る、位の感覚の調整です。

図11:フィルターセクションの設定状態。

あまりカットオフを閉じすぎるとベルらしい金属感がなくなってしまいますので、この辺は出音を聴きつつ、丁度良いポイントを探しながら調整するのがオススメです。

また、フィルターレゾナンスは設定していませんが、もう少しシンセらしい感じにしたい場合には、カットオフを気持ち下げめにして、レゾナンスの量を調整していくと良いでしょう。

EGの設定について

前回の冒頭で最初にアンプとフィルターのEGをおおよその形で作成しておくと良いと書きましたが、ではその次にどうするかを補足しましょう。

ENV 1はアンプセクション、ENV 3はフィルターセクションに対するEGとなっていますので、この2つについては都度、ディケイとリリースを調整しますが、

図12:ENV 1と3は黄色の枠線で囲んだ部分を都度調整すると良い。

これだけだとベルのアタック部分の感じが出せないため、ENV 2を使用してアタック部分用のオシレータ3専用のEG設定を行ないます。

図13:ENV 2の設定状態。かかり具合については黄色の枠線で囲んだ部分で調性を行なう。

これを加えることで、よりベルらしい雰囲気を表現することができます。

ENV 2の設定のポイントはディケイですが、長すぎても短すぎてもアタックらしくならないので、他のオシレータ出力と混ぜた時に程よく「カキッ」という音が残っているのが理想的です。

尚、EGの設定で注意したい点は、リリース(特にアンプのリリース)の設定です。

ベルや鐘の場合、ロングリリースにするのは良いのですが、必要以上に長く設定すると次に発音するノートと重なって、フレーズやサウンドが濁ったり、不明瞭になったりするなどのケースが良く見受けられます。実際に曲で使用する際には一度曲中で他のパートと一緒に鳴らしてみて、アンサンブル的にどうなのかをモニターしつつ、リリースの調整を行なうのも良いでしょう。

内藤朗

キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、サウンドクリエーターなど様々な側面を持ち、S.E.N.Sのレコーディングサポート、安部OHJIの様々なプロジェクトでのレコーディング、ライブなどに関わるなど、作編曲からレコーディング制作、ライブ演奏など多方面で活動中。MIDIやDTM関連の分野では黎明期から今日に至るまで長きに渡り関わっており、多様な経歴を持つ。また、音楽制作系のライターとしても広く知られ、近著に「音楽・動画・ゲームに活用! ソフトシンセ 音作り大全」(技術評論社刊)、共著「ミュージッククリエイターハンドブック 2023年改訂版」(ヤマハミュージックエンターテインメントホールディングス刊)などがある。有限会社FOMIS代表取締役、一般社団法人日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)正会員、MIDI検定指導研究会会員。