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Spire Topics & Tips – vol.5

あの曲のあの音をSpireで再現してみた(その1)

今回はちょっと趣向を変えて、既製曲の中で使用されているシンセ音色をSpireで再現してみようと思います。

お題は巷で話題になっている映画版「鬼滅の刃」の主題歌のイントロに出てくるベル音色です。

Spireでできる限りオリジナルの音色をシミュレートして、それらしい音色を作ってみました。

図1:今回作成した音色の設定

今回作成したベル音色を使用したシンプルなフレーズのデモです。

エフェクト処理はSpire内蔵エフェクトのみで調整していますが、実際に曲の中で使用する際には、リバーブなどの空間系エフェクトを他のトラックと馴染むようにセンド&リターンで別途かけると良いでしょう。

ベル音色の質感はFM変調で作る

Spireのチュートリアル「ゼロからのサウンドメイク」(28~30回)でもベル音色の作成方法は紹介したことがありますが、ベル音色はズバリ、オシレータセクションのFM変調を活用するのがポイントです。

音色を作る手順としては、最初にエンベロープ設定のおおよその形を作っておくと良いでしょう)。

図2:ENV 1と3の設定状態。1がアンプセクション、3がフィルターセクションの設定となる。尚、オシレータ3に対して使用しているENV 2の設定については後述。

アンプ、フィルターともにディケイとリリースを調整して減衰音状態に設定すれば音色全体の輪郭ができますので、最初にある程度設定しておくと、金属的なサウンドを決めるFM変調の調整などに注力しやすくなります。

FM変調(FMモード、Hard FMモード共)を使用する場合には、オシレータのCtrl AとCtrl Bのパラメータの設定が一番重要です。イメージに近いサウンドになるように十分調整しましょう。

今回の作成例ではオシレータ4基をそれぞれ以下のモードで使用しています。

図3:オシレータ1:FMモード
図4:オシレータ2:Hard FMモード
図5:オシレータ3:FMモード
図6:オシレータ4:クラシックモード。図3~6は各オシレータの設定状態。それぞれ図3:オシレータ1、図4:オシレータ2、図5:オシレータ3、図6:オシレータ4の設定となっている。

実際のベルや鐘などの音は複雑なサウンド構成になっているため、オシレータ1基では十分にシミュレートすることが難しいので、複数のオシレータを使用して作成しています。

各オシレータはオシレータ1:高音域部分、オシレータ2:中音域、オシレータ3:はアタック部分、オシレータ4:音色全体のサウンドの補強というような役割分担にしています。

もう1つのポイントとしては、各オシレータのサウンドをデチューンさせることによって、コーラス効果を得るだけでなく、ベルらしいサウンドのうねりが出てくることから、今回はユニゾン機能を積極的に使用しました。

特にオシレータ4ではオクターブユニゾンでのデチューンに設定していますが、ベルサウンドをまとめ上げるためのサウンド補強の点で効果的に働いているのが確認できるでしょう。

図7
図8
図9
図10:図7~10は各オシレータのユニゾン機能の設定状態。それぞれ図7:オシレータ1、図8:オシレータ2、図9:オシレータ3、図10:オシレータ4の設定となっている。

内藤朗

キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、サウンドクリエーターなど様々な側面を持ち、S.E.N.Sのレコーディングサポート、安部OHJIの様々なプロジェクトでのレコーディング、ライブなどに関わるなど、作編曲からレコーディング制作、ライブ演奏など多方面で活動中。MIDIやDTM関連の分野では黎明期から今日に至るまで長きに渡り関わっており、多様な経歴を持つ。また、音楽制作系のライターとしても広く知られ、近著に「音楽・動画・ゲームに活用! ソフトシンセ 音作り大全」(技術評論社刊)、共著「ミュージッククリエイターハンドブック 2023年改訂版」(ヤマハミュージックエンターテインメントホールディングス刊)などがある。有限会社FOMIS代表取締役、一般社団法人日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)正会員、MIDI検定指導研究会会員。