アルペジエーターを活かしたサウンドメイク(前編)
今回は内蔵されているアルペジエーター機能をピックアップして紹介したいと思います。
以前に“Spireでゼロからのサウンドメイク”でもアルペジエーター機能について採り上げていますが、今回は実際のフレーズ作りと音色の調整方法などの観点から解説していきましょう。
アルペジエーターを使用する際における音色決めのポイント
アルペジエーターの使用が前提となっている場合、アルペジエーターのテンポやフレーズによっては、使用する音色が合わないケースがあります。これはテンポに対して音色のアタックが遅い場合には発音が追い付かず、意図する演奏にならなかったり、また、音色のリリースが長い場合にはフレーズの歯切れが悪くなったり、音のリリースが重なり合ってフレーズが音の塊状態のようになることもあるでしょう。
これはプリセット音色を使用する場合によくあるケースですが、もちろんデフォルト状態から音色を作成する場合にも音色のアタックの速さやリリースの長さの調整は必要です。
その音色調整を行なう際に効果的なのは、シーケンスを走らせながらパラメータを調整することです。 音色をある程度エディットするまでは、その都度音の状態を確認するのでも良いのですが、最終的な音色の合わせ込みはフレーズを演奏させてながら行なうと、アタック感や音の切れも曲に適したサウンドになります。
フレーズを再生させる場合は、私の経験則では頭から終わりまでではなくても聴きどころとなる部分の数小節程度で十分だと言えます。極端に言うとシンプルなアルペジオ的なフレーズであれば、そのフレーズが1周りする長さ(1~2小節程度)のループ再生で良いでしょう。
これはSpireを使用する場合に限ったことではなく、どちらかというと音色エディットのセオリー的な話になりますので、他の音源などを使用する際にも同様です。
今回作成したベース音色について
少々前置きが長くなりましたが、今回は「アルペジエーターと相性の良いベース音色」というテーマで作ってみました。
音色作りは前述のセオリー通り、フレーズを走らせつつ、「シンセで作ったスラップベースサウンド」をイメージして作り込んでいきました。
音色自体は、3オシレーターを使用して作成しています。エディットを行なったパラメータについては、オシレーターセクションで3基のオシレーター設定を調整した他は、フィルターセクションとEGの調整という比較的シンプルな設定になっています。
そのオシレーターセクションの設定についてですが、まずはオシレーター1と2で本体となるアナログシンセベースサウンドを作成しています。使用しているシンセ波形はノコギリ波の状態から少し矩形波寄りに波形を変えたサウンドキャラクターにしていますが、オシレーター1と2で波形を少し違う形にしているのがポイントです。
そしてAM Syncを使用したオシレーター3でデジタルシンセ的な質感を加え、アタックのサウンドを補強しています。
これでほぼ音色のイメージは固まったのですが、シンセベースらしい音圧感や厚みが物足りなかったため、オシレーター1と2はユニゾンモードを使用して4ボイスユニゾンに拡張し、それぞれデチューン値を変え厚みを加えました。オシレーター3については、ユニゾンによるボイス数を増やすとやや目立ち過ぎな印象があり、元々味付け程度のものだったので、ユニゾンモードは不使用となっています。
フィルターセクションとEGの設定、アルペジエーターの設定などについては後編で解説します。