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Spire Topics & Tips – vol.26

ひと味違うバージョン 1.5.11のアップデート

本コーナーも久しぶりの更新になりましたが、今回は先日リリースされたバージョン1.5.11のアップデート内容について紹介したいと思います

バージョン1.5.11の主なアップデート内容について

Spireは、これまでもバグや細部の変更が定期的に行なわれており、より動作が安定した音源へと成長してきました。
今回も基本的にはマイナーアップデートですが、個人的には、これまでのSpireの印象が変わるようなアップデートになっているように感じられました。
バージョン1.5.11の追加機能と修正点は以下の通りです。

  • 5種類の新しいリバーブを追加
  • プレミアム・サウンドデザイナーによる140の新サウンドを追加
  • FL Studio、およびPro ToolsでのGUIスケーリングを実現
  • Apple M1において、いくつかのプリセットの問題を改善
  • その他、いくつかの細かな改善を実施

これらの中でポイントとなるのは、新規に追加されたリバーブタイプとファクトリープリセットでしょう。
これまでもリバーブは装備していましたが、プレート系リバーブのみ(plate 1とplate 2)でしたので、本体内でのサウンドメイクには限界がありました。
しかしながら、今回リバーブタイプは、待望のhallを始め、sparkles、ambience、dmension、auraという5種類が追加され、一気にサウンドメイクの自由度がアップしたように思います。

図1:新規追加されたリバーブも従来と同様のメニューで選択する。

新たに追加されたプリセットは、従来よりも実践向きなプリセットになっているように感じられました。

図2:プリセットマネージャーを開いて「Tag」を選択すると、「2022 Update」フォルダを選択すると、新規追加のプリセットを表示させることができる。

特に新規追加されたリバーブの質感の印象も大きいと思いますが、パッド系プリセットのサウンドが非常にイイ感じです。
Spireといえばプラック系音色が代名詞的なサウンドですが、パッド系の音色もそれと肩を並べるサウンドになったと言っても良いでしょう。
ちなみにパッド系音色ではないのですが、ビンテージリズムマシンのTR-808風のドラムサウンドも追加されているのも興味深いところです。
特にあの実機の特徴あるカウベル音をシミュレートしたプリセットもありますが、かなりよくできていると思います。

新規追加されたシンセパッド音色をチェック

そのシンセパッド音色のプリセットの中から、いくつかピックアップしましたので、そのサウンドをお聴きください。

まず一つ目は、デジタルシンセ的なアタックと柔らかいパッド音色がレイヤーされたようなサウンドのプリセット「ATM Particle Flow」です。

このプリセットでは新規追加されたリバーブのsparklesが使用されているのが、ポイントです。

図3:プリセットのATM Particle Flowを選んだ状態。黄色の枠線で囲んだ部分で新規追加されたリバーブが選択されているのが確認できる。

続いて、こちらもデジタルシンセ的なパッド系サウンドですが、フランジャー的なスウィープ感が特徴のプリセット「PD Digital Dreams BJP」です。

この音色では、オシレータ3をShaperエフェクトのドライ/ウェットバランスの変調に使用している点がポイントとなっており、オシレータ3のレベル調整によって、サウンドのバリエーションが得られます。

図4:プリセットのPD Digital Dreams BJPを選んだ状態。黄色の枠線で囲んだ部分のオシレータ3の設定がポイントとなる。

3つ目は、ハウス系の曲のコードバッキングなどでよく聴かれる1ノートでコード演奏できるタイプの音色で、「PD Deep Chords」です。

このシーケンス的な演奏は、Stepperを2基使用してパターンを作成しており、各ステップの変化を細かく設定しているのがポイントです。

図5:プリセットのPD Deep Chordsを選んだ状態。黄色の枠線で囲んだ部分がStepperの設定状態となる。

他にも紹介したいプリセットはたくさんあるのですが、Spireユーザーの方でまだアップデートを試されていないようでしたら、ぜひチェックされることをオススメします。
ちなみに今回のバージョンアップに関して、補足しておきますと、3月16日時点では、バージョン1.5.11(build 5226)のリリースがアナウンスされていましたが、軽微な改善が施され、4月14日現在では1.5.11(build 5227)が最新となっています。

内藤朗

キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、サウンドクリエーターなど様々な側面を持ち、S.E.N.Sのレコーディングサポート、安部OHJIの様々なプロジェクトでのレコーディング、ライブなどに関わるなど、作編曲からレコーディング制作、ライブ演奏など多方面で活動中。MIDIやDTM関連の分野では黎明期から今日に至るまで長きに渡り関わっており、多様な経歴を持つ。また、音楽制作系のライターとしても広く知られ、近著に「音楽・動画・ゲームに活用! ソフトシンセ 音作り大全」(技術評論社刊)、共著「ミュージッククリエイターハンドブック 2023年改訂版」(ヤマハミュージックエンターテインメントホールディングス刊)などがある。有限会社FOMIS代表取締役、一般社団法人日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)正会員、MIDI検定指導研究会会員。