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Spire Topics & Tips – vol.20

Pluck系音色作成のポイント(その1)

Pluck系の音色の良さは、ご存知の通りSpireの代名詞にもなっていますが、今回はPluck系音色作成の際のポイントをあれこれ紹介してみたいと思います。

図1:今回作成した音色の設定

今回の音色の参考例となるデモサウンドです。ハープ系の音色なので、グリッサンドなどを頭と終わりに入れてみました。

Pluck系の音色を作成するには?

シンセサイザーの音色カテゴリーなどでよく使われている“Pluck(プラック)”とは、“(弦楽器を)かき鳴らす”という意味から、アタックの鋭い弾けるような音色のことを言います。
音色のイメージは撥弦楽器であるギターやハープなどのようなピックや指などで弾いて演奏する楽器の音色がこれに相当します。
このカテゴリーに属する音色の特徴は大きく分けると次の2種類になります。

  1. 音の減衰が速く、リリースも短い音色
    このタイプを例えて言うと、エレキギターのミュート奏法のサウンドのような音色です。
    シーケンスフレーズなどのような単音フレーズの演奏に適しています。
  2. 音の減衰がなだらかで、リリースが長い音色
    こちらは前述の1のタイプの音色と逆の特徴になりますが、例えばギターのストロークやハープのグリッサンドなどのような音色がこれに相当し、和音演奏などに適しています。

さて、今回は2の方のタイプの音色音色を作成してみましょう。イメージとしては、複雑に音色が変化するハープ風のPluck系音色です。

オシレータ1と2の設定について

まずは、オシレータ設定です。オシレータは1から3までの3基を使用し、オシレータ1と3はクラシックモード、オシレータ2はFMモードに設定しています。

図2
図3
図4

図2~4:各オシレータのの設定状態。それぞれ2:オシレータ1、3:オシレータ2、4:オシレータ3、となっている。

それぞれのオシレータの使い途については、オシレータ1と2でS&Hを使用したランダムにピッチが変化するエフェクティブなサウンド部分、オシレータ3はオーソドックスなハープ風のサウンド部分となるように元となる波形を作成し、2つの要素を持ったサウンドにしました。
オシレータ2でFMモードを使用したのは、アナログシンセ波形だけだと今一つアタック感と芯のあるサウンドに仕立てづらい傾向があります。そこで、それらを得意とするFMシンセシスのサウンドを加えて補っているワケです。
ちなみに、ユニゾン設定はオシレータ1と2はパッド的な広がりや厚みが欲しいので4ボイス、オシレータ3はシンプルなハープサウンドにしたいため2ボイスに設定し、デチューン値は全て異なる設定にしています。

次回はフィルターセクションやLFO設定などについて解説したいと思います。

今回作成した音色設定の詳細は、デモサウンドと共にSpireユーザーの方は音色のプリセットデータ(ファイル名:“Magical Harp 01.spf2”)をチェックしてみてください。

↑ からダウンロードされる「Magical_Harp_01.spf2_.zip」ファイルを解凍後、現れた「Magical Harp 01.spf2」ファイルを、SpireのPreset Managerの「Import」から読み込みます。

内藤朗

キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、サウンドクリエーターなど様々な側面を持ち、S.E.N.Sのレコーディングサポート、安部OHJIの様々なプロジェクトでのレコーディング、ライブなどに関わるなど、作編曲からレコーディング制作、ライブ演奏など多方面で活動中。MIDIやDTM関連の分野では黎明期から今日に至るまで長きに渡り関わっており、多様な経歴を持つ。また、音楽制作系のライターとしても広く知られ、近著に「音楽・動画・ゲームに活用! ソフトシンセ 音作り大全」(技術評論社刊)、共著「ミュージッククリエイターハンドブック 2023年改訂版」(ヤマハミュージックエンターテインメントホールディングス刊)などがある。有限会社FOMIS代表取締役、一般社団法人日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)正会員、MIDI検定指導研究会会員。