王道のアナログシンセブラス音色を作成する(その1)
これまでSpireの機能を活用して様々な音色の作成方法を解説してきましたが、改めて目次を見直してみると、いかにもアナログシンセという音色の作成方法を紹介していないことに気がつきました。
王道のアナログシンセを代表するサウンドと言えば、ノコギリ波形を使用したシンセストリングスやシンセブラスなどをイメージする人も多いでしょう。
そこで、今回はSpireで王道のシンセブラス音色の作成方法を紹介しつつ、アナログシンセの音作りの基本を今一度確認していきたいと思います。
今回作成したシンセブラス系音色の使用例です。曲中のドラムパート、シーケンスパートなども全てSpireのプリセット音色で作成しています。
フィルターでセカンドアタック以降の音色変化は、他のトラックを再生させつつ、曲のテンポや雰囲気に合わせてスロープタイムとレベルを微調整しているのが音色設定のポイントとなっています。

オシレータ設定について
アナログシンセらしいシンセブラスを作成するのであれば、Spireではオシレータセクションをすべてクラシックモードを選択し、波形をノコギリ波に設定すればオーケーです。
使用するオシレータの数は、トランペットやホルンなどのソロ楽器風音色であれば1オシレータでもそれらしくなりますが、いわゆるシンセブラスサウンドを作成したいのであれば、2基以上のオシレータを使用してデチューンによるコーラス効果を得るのが作成のコツです。
Spireは4オシレータ仕様ですから、今回は4基すべてを使用して作成してみました。設定は以下のようになっています。




図2~5:各オシレータの設定状態。それぞれ2:オシレータ1、3:オシレータ2、4:オシレータ3、5:オシレータ4となっている。
オシレータの設定としては、オシレータ2と3のデチューン値をそれぞれ+2と-2に設定して左右にパンを振り分けて広がりを出している点と、オシレータ4のオクターブレンジを1オクターブ低く設定して厚みを補強している点がポイントです。
ちなみにデチューンの値が大きくなるほど、コーラスエフェクト感が増しますが、アタック感が甘くなりやすい傾向があります。どちらを優先するかは、求めるサウンドに応じてケースバイケースで決めると良いでしょう。
また、今日よくEDM系の曲で使用されているようなSuperSaw系のブラスサウンドにしたい場合には、各オシレータのユニゾン機能を使用して調整するとそれらしくなります。
なお、最終的な仕上げにも関わってきますが、それぞれのオシレータのボリュームバランスの調整も重要です。
今回は以下のように設定していますが、デチューン感はオシレータ2と3のレベルで調整し、オクターブ下に設定しているオシレータ4のレベルによって芯となる音色部分の質感が変わってきます。

図6:ミキサーセクションの設定状態。ボリュームバランス設定の目安は芯となるオシレータ1のレベルとの兼ね合いを確認しつつ調整すると良いだろう。
特に今回のようにフィルターを2基使用している場合には注意が必要です。詳しくは次回に解説したいと思います。