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Spire Topics & Tips – vol.12

マトリックス機能による変調を音色作りに活かす(その2)

前回に引き続きマトリックス機能を使用した音色作りについて見ていきましょう。

今回のポイントとなるマトリックス機能の設定はどのようになっているのかについて中心に解説したいと思います。

マトリックス機能設定のポイント

まず、今回の音色ではスロットを3個使用しました。

図5

今回の音色のマトリックス機能の設定状態。

スロット1ではソースにオシレータ1、ターゲットにオシレータ2のピッチを設定し、スライダーで変調の深さを正方向(=右側)に大きめ(=深い変調)に設定しています。
この設定は、オシレータでオシレータを変調していますので、リングモジュレータやAM Syncなどのような変調と似た傾向のサウンドが得られます。
変調を深くするほど壊れたサウンドに変化していきますので、インパクトある効果音などを作る際にも応用できるでしょう。

図6

マトリックス機能スロット1の設定部分。今回の設定ではスライダーを正方向の真中あたりにするとクセのあるデチューンコーラスのようなサウンドも得られる。シンセブラスやシンセストリングスなどを作る時にも応用できるので試してみよう。

続いてスロット2ではソースにLFO1、ターゲットにSlot1 Amt1(=スロット1の深さ)を割り当てています。

図7

マトリックス機能スロット2の設定部分。このようにスロットのかかり具合を別のスロットの設定で変化させられるのもマトリックス機能ならではのメリットだ。

これは前述のスロット1の設定の変調の深さを周期的に変化させるという意図で設定しており、音色の元となる波形の状態を常に変化させることで演奏中の単調さを軽減させることができます。

そして、スロット3ですが、ここではソースにベロシティ、ターゲットにオシレータ1から3のアンプが割り当てられています。
スロット1と2が直接音色に関わる変調の設定だったのに対し、スロット3の設定は、演奏やコントロールによる変化をつけるための設定です。スロット3の設定によって演奏中のタッチによる強弱で音量のダイナミクスが表現できるようになっています。

図8

マトリックス機能スロット3の設定部分。音量以外にもタッチによる強弱をつけたい場合にはソースにベロシティ、ターゲットに変化させたいパラメータを割り当てると良い。例えばターゲットにフィルターのカットオフを割り当てることでタッチによる音色変化が得られる。

オシレータ設定について

オシレータは3基使用しており、それぞれの設定は以下のようになっています。

図9
図10
図11

図9、10、11:それぞれ9:オシレータ1、10:オシレータ2、11:オシレータ3の設定状態。

オシレータ1と2はマトリックス機能のスロット1、2の設定によって2つのオシレータを1つのサウンドとして調整するのですが、サウンドのバリエーションが欲しい場合には、各オシレータのオクターブレンジやミキサーセクションのオシレータバランスなどを調整すると良いでしょう。

図12

ミキサーセクションのオシレータバランスの設定状態。

また、オシレータ3の設定については、高域成分を補強するためにサイン波を足しているのがポイントとなっています。もちろん、オシレータ3もミキサーセクションのオシレータバランスで適宜、高域の質感を調整可能です。

↑ 今回作成してるサウンドのプリセット・データ(音色データ)です。ダウンロードされる「Osc-Mod-Bell-1.spf2_.zip」ファイルを解凍後、現れた「Osc Mod Bell 1.spf2」ファイルを、SpireのPreset Managerの「Import」から読み込みます。

内藤朗

キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、サウンドクリエーターなど様々な側面を持ち、S.E.N.Sのレコーディングサポート、安部OHJIの様々なプロジェクトでのレコーディング、ライブなどに関わるなど、作編曲からレコーディング制作、ライブ演奏など多方面で活動中。MIDIやDTM関連の分野では黎明期から今日に至るまで長きに渡り関わっており、多様な経歴を持つ。また、音楽制作系のライターとしても広く知られ、近著に「音楽・動画・ゲームに活用! ソフトシンセ 音作り大全」(技術評論社刊)、共著「ミュージッククリエイターハンドブック 2023年改訂版」(ヤマハミュージックエンターテインメントホールディングス刊)などがある。有限会社FOMIS代表取締役、一般社団法人日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)正会員、MIDI検定指導研究会会員。