マトリックス機能による変調を音色作りに活かす(その1)
Spireはオシレータ、フィルターなどの音色作りのための入出力信号の流れが予め決められているので、GUI上の主なパラメータをエディットすることで十分な音色作りが行なえます。しかしながら、マトリックス機能を活用することで複雑な変調が得られ、音色作りの可能性を広げられます。
今回は積極的にマトリックス機能を使用してのサウンドメイクを紹介しましょう。
マトリックス機能とは?
本コーナーやチョイ足しの時にも紹介しましたが、今一度マトリックス機能について復習しておきましょう。
マトリックス機能とは、任意のパラメータ出力を用いて別のパラメータを変調する機能のことで、ほぼすべてのパラメータをSpire上で自由に接続して変調することができます。マニュアルにもある通り事実上無制限の信号ルーティングが可能なワケです。
マトリックスは15スロットで構成され、各スロットには2つのソースと4つのターゲットを設定でき、オシレータ、LFO、エンベロープ、ステッパーなどSpire上のパラメータに加えて、MIDI信号、MIDIコントローラなども割り当てることが可能です。
このソースとターゲットとは、変調信号を出すパラメータがソース、変調されるパラメータがターゲットとなります。
例えばSpireのEGやLFOはそれぞれ4基あり、各LFOで2つのパラメータを変調できますが、言い方を変えるとLFOのソース1つで2つのターゲットを変調できると言えます。
しかしながら、1つのソースで3つ以上のパラメータを変調することはできませんので、そのような場合にマトリックス機能を使うことで解決できます。
それ以外にもMIDIキーボードのモジュレーションホイールやピッチベンドホイールを使用してリアルタイムで変調をコントロールするなどマトリックス機能の用途は多岐に渡ります。
ソースとターゲットに割り当てられるパラメータについて
それではSpireでソースとターゲットに割当可能なパラメータを見てみましょう。
まず、ソースには図のようなパラメータを割当可能です。
リストの左側にはSpire内部の変調使用可能なパラメータ、右側にはMIDIによるコントロール系のパラメータが確認できますが、音色の根幹的なサウンドを決めるのはSpire内部のパラメータであるオシレータ、EG、LFOとなります。
EGやLFOが変調に使用できるのはわかりやすいですが、オシレータがなぜ変調に使用できるのかについて補足しておきましょう。
ちなみに、Moogの名機minimoogは3オシレータ仕様ですが、オシレータ3は一番低いレンジ設定にするとLFOとして使用できるようになっています。
このことからもわかるように、多くのシンセではその出力する周波数のレンジが異なるだけで、通常のオシレータもLFOと同じように使おうと思えば使えるのです。
続いてターゲットを見てみると、以下の図のようなパラメータを割当可能です。
図からもわかりますが、変調を受ける側はほとんどのSpireのパラメータが割り当てられるようになっていますので、設定次第では予想しないサウンドを得られることもあります。
少々マトリックス機能についての解説が長くなりましたが、次回から実際の音作りについて解説したいと思います。
Spire Topics & Tips – vol.11 プリセットデータ
↑ 今回作成してるサウンドのプリセット・データ(音色データ)です。ダウンロードされる「Osc-Mod-Bell-1.spf2_.zip」ファイルを解凍後、現れた「Osc Mod Bell 1.spf2」ファイルを、SpireのPreset Managerの「Import」から読み込みます。