今回は、DJ/ProducerであるSamuel Smoky Purpleさんが愛用するReloop製DJコントローラーMixtour Proについて、どこが良いのか?、なぜ選んだのか?をインタビューしました。6月に行われたライブでのセットアップの様子と併せてご紹介します。
Reloop
Mixtour Pro
現在の機材環境について(制作/ライブ)教えていただけますか?
Samuel Smoky Purple:普段はPCを用いたDJ(Traktor Pro)や、Ableton Liveとハードシンセを用いたライブセットの2種類のスタイルでパフォーマンスをすることが多いです。制作でも、Ableton Liveで仮組みしたビートを軸に、ハードシンセやリズムマシンの録音を重ねてトラックを仕上げています。
同じイベントでDJとライブをそれぞれ行うこともあり、出来るだけ機材の量を減らしたかったり、普段使用する機材を統一させることで、オペレーションミスを防ぎたいということから、DJ用のコントローラーとライブ用のMIDIコントローラーを同じ機材にしたいという思いがあります。
なるほど、ではどうしてReloop製品を選ばれたのでしょうか?
Samuel Smoky Purple:機材を探すにあたって、絶対に譲れない点がありました。
- ミキサーコントロールとトランスポートコントロールを両方行える豊富な操作子があるもの
- ノブにしっかりした重みがあって誤操作をしにくいもの
- MasterとCueで4 Outのサウンドカードを搭載しているもの
逆にジョグホイールはあまり使わないので重要視していませんでした。
これらを満たす機材がないか探してみたところ、
- A社製品モデルa:トランスポート周りに割り当てできそうなコントロールセクションがない
- A社製品モデルb:ボタンは豊富でもフェーダーがなく、サウンドカードも非搭載
- B社製品モデルc:フェーダー&ボタンと豊富なコントロールに高音質なサウンドカードを搭載でかなり良いが、クロスフェーダー用の横フェーダーが無い。ボタンに「Play」「Cue」といったネームがされておらず、レイアウトがDJミキサーっぽくないため直感的な操作ができるか気になる。もちろんマッピングを覚えれば十分使用できるが、暗所で深夜帯、更にお酒が入っている極限環境でのプレイが前提となるため、操作ミスを防ぐためになるべく直感的(DJミキサー的)なレイアウトをしたコントローラーを選びたい
と、どれも一長一短でした。
そんな中、当時発売されていたReloop Mixtourをチェックしたところ、
- ミキサー部分もトランスポート周りも両方完備、1台でPCDJに最低限必要な操作を全て行える
- ノブの重さやレイアウトがDJミキサーに似ていて、操作性に違和感なし
- MasterとCueの4Outputのサウンドカードを搭載
- ボタンに「Play」「Cue」のネームが入っていて、直感的な操作ができる
- Traktor Pro用のMIDIマッピングファイルを有志の方が公開しており、純正コントローラーでなくても簡単に導入が出来た
- 本体が持ち運びやセットアップに便利なスリムで薄い縦型タイプ。対応するDecksaverも発売されていた
と、自分に必要な機能が完璧に揃っていたので即導入しました!
サムエルさんにピッタリだったわけですね。それからずっとMixtourを使用されていたのでしょうか?
Samuel Smoky Purple:はい、愛用していました。
ありがとうございます。ちなみに現場で使っていて、何か気になることや不満は出てこなかったですか?
Samuel Smoky Purple:実は実際に使っていく中で、ちょっと気になることもあって、
- ボタンの表記通りにマッピングすると、トランスポートとHot Cueが同じボタンにアサインされ、シフト操作で使い分けする仕組みになる。同時に操作ができず、誤操作でのミスが発生しやすい
- Master出力の音量が低い。CDJに比べて非常に音量が低く、現場での取り回しが少し不便。音質もCDJに比べると劣る印象
- Master出力の音量をハード上で調整できず、ソフトから行う必要がある(ライブセットの時にやや不便)
僕はフロアに機材をセットし、お客さんと一緒に踊りながらパフォーマンスすることも多いので、どんな状態でも確実な操作が出来るものを常に探していました。
結果的に、「小型だけどシフトを多用しなくても良いくらいボタンが豊富で、それでいてDJミキサー的レイアウトを感じさせる、高音質な出力も装備したコントローラーが欲しい」という、少しわがままな願望を抱いていました。笑
そんな中、今使っている新モデルのMixtour Proが発売されることになり、チェックしてみたら全部の不満が解決していたんです!
即導入を決めました!
そうだったんですね、具体的にどこが良くなったところでしたか?
Samuel Smoky Purple:本当に全部、という感じなのですが、
- コントロール端子が増えた
- トランスポートとHot Cueが分かれて、同時操作が可能になった
- LEDも随所にあり視認性UP
- Master出力の音質と音量が劇的に向上
- 本体の重量が適度に増して、ケーブルが引っ掛かったりしても動きにくくなった
- モニター出力のMONO切り替え対応
導入後、すぐに現場で使用したのですが、「音良いね!!」とお客さんから褒められたのがとても嬉しかったです!
上部の「MAIN」ノブはMIDI CCのコントロールノブとしても操作できる一方、Master出力のボリュームを直接調整できるようにもなっていました。Mixtourの時は、出力音量が小さかったので、DJプレイの際はミキサー側のGainノブをフルテンにしてLine inから入力していました。そのため出番が終わった後に、必ずGainノブを元の位置に戻す必要があって、いつも慎重にセッティングと片付けを行なっていました(次に他の機材を繋いだ際に爆音が鳴ってしまう事故を防ぐため)。
でもMixtour Proで元々の音量が大きくなった上、Mixtour Pro側でもハードウェア上で音量を調整できるようになったので、ミキサー側のGainノブをほとんど弄らずに正確な音量セッティングが出来るようになりました。精神衛生上、これは本当にありがたかったです。笑
なるほど、これは実際に現場で使用されている方ならではのリアルな声ですね。大変参考になります。DJスタイル以外に、ライブセットの時に変化はありましたか?
Samuel Smoky Purple:これまでと同様にTraktorやAbleton Liveとの連携は問題なくできるのですが、LEDやボタン類が増えたことで視認性と操作性が向上しましたね。
Traktor Pro はLEDの挙動まで制御できる高度なMIDIマッピング設定が行える他、Ableton Liveは繋いだMIDIコントローラーが自動でマッピングされる「Remote Script」用のファイルを自作しているので、好きにカスタマイズして使用しています。
こんな感じで目立つ色でボタンを光らせているので、暗いステージでも安心です。



完全にサムエルさん仕様にカスタムされていて、めちゃめちゃ使いこなしていただいていますね!また、今日はMixtour Proと一緒に導入していただいたStand Hub Proも設置されていますね。
Samuel Smoky Purple:そうなんです、現場で使うのは今日が初になりますが、これも良い機材ですね。スタッフさんや共演者の方々に「こんな便利なものがあるのか!」と驚かれました。笑
ありがとうございます。こちらを選んでいただいたポイントを教えていただけますか?
Samuel Smoky Purple:まずは「コの字」と「Z字」の兼用タイプであることです。機材や設置場所に合わせて最適な置き方ができるので助かります。
そして首振り(360度)できるのが本当に便利です。
今日は真っすぐ設置していますが、機材を載せるデスクやテーブルが横長の場合、端に設置したPCの画面を確認する際に、横に1歩移動する必要が出てきて、地味にストレスになっていました。「PC画面を覗き込む」という動作が、個人的にはパフォーマンスの集中力やお客さんとの繋がりを切ってしまう様な気がしていて、よりコンパクトな動きに収めたいという気持ちがありました。Stand Hub Proなら自分の立ち位置を固定して、PC画面を自分に向けることが出来るので、パフォーマンスに集中できます。
あとは付属のレンチで固定具合の調整が出来るのも嬉しいです。本体もコンパクトですが適度な重量感があるのも良いです。先ほどの話と重なりますが、万が一機材を引っかけたり、ぶつかったりしても機材が落ちにくいので安心感があります。
USB端子もほぼフルで使用されているようですが、接続や動作で何かトラブルは起きていませんか?
Samuel Smoky Purple:PCへの給電と、各ハードへのUSB接続はすべてStand Hub Proから行っています。接続が途切れたり、認識しないようなトラブルは起きていません。
一般的な小さなUSBハブで繋いでいると、ぷらぷらしない様にテープで固定したり、バスパワーが分散して不具合が出たり、紛失などのリスクもあるので、電源供給機能付きでスタンド内蔵されているのは最高です。
ぜひ今後も色んな現場で活用いただければ幸いです。今日は貴重なお話をいただきありがとうございました!
後談
インタビューでは触れませんでしたが、Mixtour ProのDecksaverも活用されていました。機材セッティング中に一時的に物を置いたり、出番までツマミの位置や機材を保護する役割で重宝しているとのことでした。



Samuel Smoky Purple
DJ/Producer
2020年に東京で活動を開始。DJに加え、Breaks/UKG/Jungle等に影響を受けた、モジュラーシンセやリズムマシンを用いたライブセットをパフォーマンスの軸としている。硬質なビートとメロディアスでアトモスフェリックなシンセフレーズを織り交ぜた、ドラマチックな音楽性が特徴。
中目黒solfaを拠点としてライブセットとDJをインタラクティブに展開するパーティー「FoW」のオーガナイザーの一人であり、同メンバーにてライブセット・ユニット「Friends of Wires」としても活動中。
2024年7月には、国内屈指のクラブミュージック・レーベルである「TREKKIE TRAX」より2nd EP「Raven Nocturne」をリリース。
その他、国内外のレーベルでのリリースや、企業への楽曲提供など精力的に活動中。