突然ですが、Rob Papen シンセサイザーをご存知ですか? Rob Papen シンセサイザーは様々なジャンルに対応できるソフトウェア・シンセサイザーです。私はその中でも特にPREDATORがお気に入りです。
PREDATORは主にダンス、クラブミュージックなどを得意とするシンセサイザーですが、PREDATORを使えば様々なジャンルのサウンドも簡単に作成することができます。今回はクラブミュージックなどのサウンドを得意とするPREDATORを使ってある楽器のサウンド作成方法を解説していきます。
はじめにPREDATORをご存知ではない方は以下のリンクをご参照いただくことで、詳細を確認することができます。
上記リンク先で公開されているデモサウンドには、クラブミュージックなどで活用できるいい感じのサウンドが含まれます。そして、実際にPREDATORを試してみたいという方は、以下のリンクよりデモバージョンをダウンロード可能です。
それでは今回の本題です。
今回、PREDATORを使って作成するサウンドはフルートです。なぜPREDATORでフルートを作成しようと思ったのかをお話しいたします。
冒頭でもお伝えしましたように、PREDATORはクラブミュージックのサウンドを得意としますが、PREDATORは生楽器のサウンド作成も簡単に行えます。そして、私自身がフルートのサウンドが好きで、PREDATORでフルートのサウンド作成をし、使用しているという点もあります。
フルートってそんなに重要?と思われるかもしれませんが、実はフルートは様々なジャンルの楽曲で使われており、楽曲に欠かせない楽器の1つでもあります。ガットギター(クラッシックギター)とフルートの組み合わせは「クラシック」、「BOSSA NOVA」などのジャンルで使用されることが多いですが、それ以外のジャンルでも登場します。
多数のジャンルの動画を集めてみましたのでご参照ください。
いかがですか? フルートのサウンドに興味がある方は、ぜひご自身の楽曲にもお役立ていただければと思います。
それではPREDATORでフルートのサウンド作成を開始します。
フルートのサウンド作成の前の下準備
フルートのサウンド作成に限らずシンセサイザーでサウンドを作成する場合、OSC(オシレーター)のWAVEFORMでどの波形を使用するかが重要なポイントです。代表的な波形のタイプについては以下のリンク先で解説していますので、ご参照ください。
フルートのサウンドを作成する場合、倍音が少ないTriangle(三角波)をベースにサウンドを作成すると良いかと思います。そして、実際のフルートの場合、頭部管のリッププレートの唄口(歌口)に息を吹き、音を発音させますので、よりリアルなフルートのサウンドを作成するために吹きかける息の音を加えることがあります。
息の音を表現するためには。NOISE波形を使用します。PREDATORのOSCのWAVEFORMには「White Noise」や「Pink Noise」が含まれますので、ベースとなる「Triangle」にNOISE波形を組み合わせます。
Triangle+Noiseサウンド
このサウンドでは、TriangleとWhite Noiseを加えることで、フルートのサウンド作成に大事な元となるサウンドを作り上げることができました。Triangle+Noiseサウンドのみで、フルートのサウンドを作成することができますが、Sine(正弦波)を加えることで、サウンドに厚みを出すことも可能です。
以下画像のように設定を行ったデモサウンドを作成しましたので、試聴してみましょう。
Triangle / Ring + Noise + Sine サウンド
Sineを加えることで音に厚みを加えることができましたね。このサウンドでは、フルートのサウンドを表現するために、上記画像青枠部分のSemi(セミトーン)のパラメータ数値を「+12 Semi」に設定しています。
フルートはC4が最低音域となり、Semiが「0」の場合、DAWソフトウェアのMIDIトラックにC4にノートを入力すると実際のフルートが表現できない「C3」が発音されますので、Semiを「+12」に設定します。Semiの数値は半音ずつ音程が変わりますので、「+12」の場合、1オクターブ上の音が発音されます。
フルートのサウンドに近づけていこう
第1段階目のフルートのサウンドの原型が完成しました。
ここからリアルなフルートのサウンドに近づけるためにPREDATORに搭載される各セクションを活用していきます。今回お伝えする順番でなくともフルートのサウンドを作成することができますが、フルートのサウンドが完成していく流れをご確認ください。
AMP、FILTERセクションのパラメータ数値を調整してみよう
シンセサイザーでフルートのサウンドを表現する場合、KEY ON(NOTE ON)してからNOTEの最大音量に達するまでの時間を少し遅らせます。attackタイムを遅らせることで滑らかなサウンドを表現することができます。
AMPセクションのattack(以下画像青枠部分)ノブのパラメータ数値を左から右に操作するとNOTEの最大音量に達する時間が遅くなります。
AMPセクションの「Attack」タイムの設定を行ったあと、Filterセクション(上記画像黄枠部分)で不要な周波数帯をフィルタリング(カット)します。CUTOFFについても、不要な周波数帯をカットするとことで、優しい豊かなサウンドを表現することができます。
実際にAMPセクションの「Attack」、FILTERセクションのパラメータ数値を変更したサウンドを聴いてみましょう。
AMP-Filter
FILTERセクションでは以下のように設定しています。
- Cutoff:filter frequency: 453Hz
- Filter mode: 12 db Low Pass 2
- Filter Resonance: 44%
- Envelope: +42%
- F2(Filter 2): 6 db Lowpass
FX、MODULATIONを活用してみよう
FXは原音に対して様々な効果を加えることができるエフェクトのことです。PREDATORのFXは以下画像青枠部分より選択することができます。
今回フルートの響きを表現するのに欠かせない残響の「リバーブ」、音質を整える「イコライザー」を使用します。
これまでの手順で作成したサウンドに2つのエフェクトを掛けたサウンドを試聴してみましょう。
Flute FX
このサウンドでは以下の画像のように設定しています。
- 600kHz=+1.8db
- 2000Hz=-20db
- 8000Hz=+3.2db
- Pre(プリディレイ)=59.2
※リバーブなどのエフェクトやモジュレーションなどで実際にかかるまでの時間です - Size(ルームサイズ)=6.25m
- Length(残響の長さ)=28%
フルートのサウンドにビブラートを掛けてみよう
ビブラートはフルートに限らず、音を表現するときには欠かせないものです。どのようにビブラートを表現するかを解説いたします。まずは以下画像青枠部分をご確認ください。
MODULATIONについてはほとんどの方がご存知かと思いますが、「変調」「調整」「調音」などの意味です。PREDATORでは1から8番の数字のボタンには以下の項目があり、パラメータを割当することができます。
- Source(何で)
- Destination(何を)
- Amount(どのくらい)
上記3つの内容については、Rob Papenシンセサイザーやエフェクトでも登場しますので、この機会に覚えていただくと便利です。
フルートのサウンドにビブラートを掛けた動画を作成しましたので、確認してみましょう。
この動画ではMODULATION スロット 2にLFO(Source)でAMPのVolume(Destination)を「Amount」ノブでどのくらい制御するかを調整し、あわせて「PICH MODULATION LFO」のSPEED(以下画像青枠部分)とamountノブ(以下画像赤枠部分)を使用し、ビブラートの幅、スピートを表現しています。
なお、PITCH MODULATION LFOの「amount」ノブを左から右へ操作するとパラメータ数値が大きくなり、音程変化幅が増加しますので、作成するフルートのサウンドにあわせてパラメータ数値を調整してください。
※ この動画でPitch LFO Amountは8%に設定しています
※ SyncボタンがONの場合、DAWソフトウェアのテンポと同期します
また「PITCH MODULATION LFO」セクションの「waveform」でPITCH MODULATION LFOの波形を変更できますので、色々なビブラートの表現が可能です。
LFOについては以下のリンクで判りやすく解説していますので、ご参照ください。
それではこれまでの手順にて作成したフルートのサウンドを聴いてみましょう。
Flute 完成版
これまでの手順でフルートのサウンドを作成することができましたが、発音したサウンドのすべてにビブラートが掛かっている状態です。フルートに限らず、すべてのフレーズに対してビブラートを掛けて演奏することは、ほとんどないかと思います。
実際に人が吹いているサウンドを表現する場合、MODULATION、PITCH LFOで設定したパラメータ数値を、汎用MIDI機器やDAWソフトウェアでオートメーションを記憶させることで、いい塩梅のビブラートを表現することができます。
聴き比べのためのサウンドを作成しましたので試聴してみましょう。
Fluteビブラート
このサウンドでは変化を確認しやすいようにサウンド前半はビブラートを掛けず、後半に進むにつれ、ビブラートが掛かるようオートメーションを記憶させました。
DAWソフトウェアでオートメーションを記憶する方法については、ご使用のDAWソフトウェアによって操作方法が異なりますので、メーカーサポート窓口へお問い合わせください。
それでは完成したフルートのサウンドとPUNCH(ドラム)、SubBoomBass(ベース)、BLUE(ストリングス)にあわせたデモトラックをお聴きください。
完成サウンド
今回解説しましたPREDATORのフルートのサウンド作成の手順を元に金管楽器、その他の木管楽器のサウンドも作成することができ、FILTERのCUTOFFやその他のパラメータを操作するだけで、また違ったサウンドを作り上げることができます。
すでにPREDATORをお持ちの方はぜひダンス、クラブミュージック以外のサウンド作成もお試しください。
また、PREDATORを含むRob Papen シンセサイザーをお持ちではないという方は冒頭でもお伝えしたように弊社ウェブサイトよりデモバージョンをダウンロードすることができます。機会があればぜひお試しください。
それではまたの機会にお会いしましょう。
投稿者:Support T
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