(2014/09/19)
Mixcraftの魅力をお伝えしている本連載。連載を一新してからは、マスタリングを取り上げています。
ここ数回は理論的なお話が続いてしまったので、前回はコンプレッサーについて解説しました。コンプレッサーは、ミックスでも使用頻度の高いエフェクトのため、この連載でも何度も取り上げています。
前回お話した内容としては、コンプレッサーのアタックとリリースにより、音のニュアンス、音のタイム感が変化するというものでした。
マスタートラックにインサートするコンプレッサーのことを、全てのトラックに効果を及ぼすことから「トータル・コンプ」と呼びますが、今回はこのトータル・コンプの前後にEQ(イコライザー)をインサートした場合の音の違いについて確認してみましょう!
コンプ→EQ?EQ→コンプ?
EQ、コンプレッサーともに、楽曲を制作するにあたっては欠かせないエフェクトです。その分、トラックにエフェクトをインサートするとき、「コンプが先か?エフェクトが先か?」と悩みどころです。
特に単体トラックに比べ、全てのトラックにエフェクト効果が適用されるマスタートラックとなれば、なおさらですね。
しかし、コンプを先にかけるか後にかけるかによって、それぞれのエフェクトの調整方法が異なるため、効果にどのような違いがあるかしっかり把握しておきたいところです。
EQ→コンプ
まずは、EQ→コンプという順番の場合です。
このかけ方の利点としては、
- 理想とする音色を事前に作れること
- コンプレッサーが後段にインサートされているため、グルーブ感を強調できる
- EQである周波数帯域を上げておくことで、その周波数帯域をよりコンプレッサーで圧縮できる
などが挙げられると思います。また不利な点としては、コンプレッサーをマスターにインサートすると、使用するコンプやその設定にもよりますが、高域が削られ、中低域あたりが濃くなると言われています。
下にその例となる音源を用意しました。EQ→コンプレッサーという順番でエフェクトをインサートしていますが、実際EQの周波数は何も設定していません。
この状態の音源をお聴きください。エフェクト前→エフェクト後→エフェクト前→エフェクト後という順番で、流れます。
いかがでしょうか?特にベース部分が顕著かと思いますが、私は中低域の密度が濃くなったような印象を受けました。これはこれで曲に合っているかと思いますが、「中低域を抑えたい」といった場合は、前段のEQで予め中低域を削っておく必要があります。
では次に、先ほど挙げた利点の中から、「EQである周波数帯域を上げておくことで、その周波数帯域をよりコンプレッサーで圧縮できる」ということを実践したいと思います。
先ほどの音源に、以下のようなEQをかけました。
効果を顕著に出すために、かなり極端な設定にしています。
狙いとしては、ベースの存在感を際立たせるため、120Hz付近をEQで持ち上げました。通常、ここまで周波数を持ち上げていると、音割れが発生しますが、後段にアタック早めのコンプレッサーで、きっちりと抑えているので大丈夫です。
では、この音源を聴いていただきましょう。EQの効果を確認してもらう音源のため、音源A→音源B→音源A→音源Bという順番で流れます。
- 音源A:EQ(オフ)、コンプ(オン)
- 音源B:EQ(オン)、コンプ(オン)
※EQ、コンプの設定は上記画像の通りです。
ベースのふくらみ、存在感がぐっと増したと思います。もちろんベースだけでなく、持ち上げる周波数帯域を変えることで、強調できる楽器も異なります。みなさんも、是非お試しください。
次回は、EQ→コンプという順番について解説します。それでは!