【連載】Mixcraft 6で音と映像をミックス2 Vol.13!

MixCraft連載大バナー

(2014/08/8)

Mixcraftの魅力をお伝えしている本連載。連載を一新してからは、マスタリングを取り上げています。

前回は、マスタリング時に使用頻度が高いエフェクトである「マルチバンド・コンプレッサー」を取り上げました。マルチバンド・コンプレッサーは、周波数帯域ごとに音の圧縮を行います。通常のコンプレッサーでは得られない細かな設定が可能で、音圧をアップさせるには非常に重宝するエフェクトです。

今回はエフェクト繋がりということで、Acoustica Mixcraft Pro Studio 6にバンドルされているMSシリーズのエフェクトをご紹介します。

みなさん、「MS処理」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?MS処理とは、マスタリング時に行われる処理で、Mixcraft Pro Studio 6にバンドルされているMSシリーズのエフェクトを使用すると、このMS処理が行えます。まずは、このMS処理についての説明から行います。


MS処理って?

ここで、楽曲のミックス作業を思い出してみてください。音の定位を設定するパンニングという機能がありました。ボーカルを中心に配置したり、ギターを左に配置したりと、ミックスでは書かせない工程です。

ちなみにMixcraftでいうと、下の画像の赤枠部分です。

MixCraftミキサー画面

このパンニングによって、楽曲は水平軸上に音の配置が行えます。音の定位の例を図で表すと、以下のようになります。

インストゥルメント定位配置図

次にMS処理についてですが、ミックス・ダウンが行われた楽曲は1つのオーディオ・ファイルにまとまっています。

1つのオーディオ・ファイルにまとまっていますが、個別の楽器(音)で考えると、ミックスでパンニングが行われていたり、リバーブなどの空間処理が行われていたり、ステレオ音源であったりと、音は空間に配置されていると考えることができます。

上の図を例にすると、中央にはドラムやベース、ボカールなどが配置されていて、両サイドにはギターが配置されています。

このように空間に配置されている音から、Mid(中央)の音の成分、Side(両サイド)の音の成分をそれぞれ取り出し、個別に処理する方法をMS処理といいます。

このMS処理の利点ですが、両サイドの音の成分を操作できるため、奥行きや定位間といった音の空間をマスタリング行程でも調整できます。

また、楽曲は基本的に中央に音が集まります。そのため、中央に配置されている音だけが目立ってしまったり、コンプレッサーが中央の音に先に反応してしまい、全体的な音圧を上手くコントロールできない場合があります。そのような時は、MS処理で両サイドの音をコントロールしてあげることで、解消する場合があります。

では、MS処理によって音にどのような変化があるか体感していただくために、実際にMS処理を行ってみました。下の音源は、MS処理前 → MS処理後という順番で流れます。

MS収音方式

ちなみに、音の成分をMidとSideに分ける考え方は以前からありました。2本のマイクを使った録音方式である「MS収音方式」がそれに当たります。

MS収音方式とは、別々の設定(単一指向性と双指向性)の2本のマイクを使って、音の成分をMidとSideに分けて録音するレコーディング方法です。

    • 単一指向性マイクとは、マイクの正面から来る音に対して最も感度が良いマイクのことです。大半のマイクはこの単一指向性で、レコーディングだけに限らず、ライブやイベントなどというように様々な用途で使用されます。
    • 双指向性マイクとは、マイクの正面と背面から来る音に対して感度が良いマイクです。レコーディングでも使用されますが、ラジオのトーク番組といった2人が向かい合って話す際に、2人の間にマイクを設置して使用される場合もあります。

最後は少し話がそれてしまいましたが、今回はMS処理の概要について説明を行いました。

来週もMixcraftにバンドルされているエフェクトを使って、MS処理について引き続き解説していきます。
それでは!