(2014/01/10)
新年あけましておめでとうございます。
今年も楽曲制作を通して、Mixcraftの魅力をお伝えしていきますので、本連載を宜しくお願いいたします。
さて、ここ数回はミックスを行うにあたって重要になってくる、エフェクトについて解説を行っています。
今回は、音楽を美しく響かせるために必須な“リバーブ”をご紹介いたします。
リバーブとは?
音は音源から発せられると、周囲の壁などに反射し、その反射音によって響きが残ります。この響きを、“リバーブ(残響)“といいます。
こう文章で書くと難しく聞こえますが、銭湯を想像してみてください。
天井が高く、音が反射しやすいタイルに囲まれた銭湯では、音はものすごく響きますよね。
そういった響きを擬似的に生み出す電子装置をリバーブマシン、または単にリバーブと呼ばれることが多いです。
(本連載では、リバーブマシンのことをリバーブ、反射音によって生み出される響きを残響と呼びます)
では何故、音楽制作において、リバーブが必要なのでしょうか?
それは、残響の多い部屋では、音に広がりが生まれます。
反対に、残響が少ないと各楽器の明瞭度は上がります。つまり、はっきり聴こえます。
言葉だけではイメージしづらいかと思いますので、実際に試してみます。
Mixcraftのライブラリーにあるピアノ・フレーズに、リバーブをかけてみました。
4小節ごとに、リバーブのON / OFFが切り替わりますので、音の広がりに注意して、聴き比べてください。
リバーブをかける前の音源と比べ、リバーブをかけた音源は、音に広がりが生まれ、きらびやかな印象を受けるかと思います。
広がりを生む以外にも、リバーブの効果はありますが、それは追々ご説明いたします。
リバーブの代表的なパラメータ
それでは、MixcraftのClassic Reverbを例に、リバーブの代表的なパラメータをご紹介いたします。
- SIZE:リバーブによって擬似的に作り出している空間の大きさを設定します。値を高くすればするほど、広い場所で演奏したような残響音が得られます。
- DAMPING:響き部分の減衰される度合いを設定します。
- PREDELAY:元の音に対して、リバーブがかかり始めるまでの時間を設定します。PREDELAYを長くすればするほど、元の音と残響音が分離したサウンドになります。
- HI DAMP:リバーブ音の高い周波部分の減衰度合いを設定します。
- LO CUT:リバーブ音の低域をカットします。これにより、すっきりとしたリバーブ音に仕上げることが可能です。
- EARLY REF:残響音のうち、壁に1回だけ反射して聴こえてくる音(初期反射ともいいます)のことです。値を高くすればするほど、残響音の中に含まれる初期反射の度合いが高くなります。
- MIX:元の音とリバーブ音の割合を設定します。DIRに回すと元の音が、EFFに回すとリバーブ音が大きくなります。
- LEVEL:Classic Reverbより出力されるボリュームを設定します。
リバーブの接続の基本
リバーブを使用するにあたり、注意しなければならない点として、トラックのルーティングがあげられます。
これまでイコライザー、コンプレッサーを使用する際は、下の画像のように、インサート・エフェクトとして使用していました。
しかし、リバーブはセンドでの使用が基本と言われています。
インサート、センドという言葉を初めて聞くという方は、以下の記事でエフェクトのルーティングについて詳しく解説されています。
今後の音楽制作に必ず役立つ記事ですので、是非ご覧ください。
上の記事でも解説がありましたが、リバーブをセンドで使用されることが多い理由として、“空間のコントロール”があげられます。
楽曲中に、複数のリバーブを使用すると、音の空間に差異が生じてしまい、楽曲のまとまりが失われることがあります。
また、リバーブを複数使用すると、高いコンピュータの処理能力を要求されることがあるため、リバーブを1つだけ起動させ、あとはセンドで複数のトラックに送れば、コンピュータのマシンパワーを節約できるメリットがあります。
ためしに、冒頭でご紹介したピアノ・フレーズにインサートでリバーブをかけてみました。設定は、以下の通りです。
リバーブ音の割合を設定するMixノブを、EFF側に振り切っているため、ボワボワした音になっています。
もちろん、このMixノブを適正な値にすることで、適切なリバーブを得ることが可能ですが、一つ一つのトラックにインサートしているエフェクトを立ち上げて、Mixノブを調整するか、一つのミキサー画面でセンド量を調整するかを比べると、後者の方が簡単ですね。
それでは、Mixcraftでのセンドでリバーブを使用する手順について解説いたします。
メニュー・バーのトラック / トラックの追加 / センド・トラックを選択します。
すると、ミキサー画面が、次のように変化します。
画像赤枠のセンド・ノブで、センド・トラックへの送り量を設定します。
次に、センド・トラックにリバーブを設定します。
このセンド・トラックからはリバーブ音だけを出力したいため、先ほど設定したClassic ReverbのMIXパラメータをEFFに振り切ります。
これでリバーブを使用するためのルーティングは完成です。
先ほどのセンド・ノブを上げていくと、元の音に対し、リバーブ音が追加されていきます。
では、リバーブを使って早速いろいろ遊んでみたいところですが、解説が長くなってしまったので、実践編は次回へ持ち越します。しかし最後に一つだけ、プリディレイの効果を体感できる音源を用意しました。
リバーブの設定は、以下の通りです。
両者のリバーブの設定の違いは、プリディレイのみ。左側の設定は、プリディレイが0msで、右側の設定はプリディレイが150msです。
以下の音源は4小節ごとに、プリディレイ0ms → プリディレイ150ms →プリディレイ0msと切り替わっていきます。プリディレイで、音にどのような変化が生じるかお確かめください。
一聴していただいて分かる通り、プリディレイ150msの方が、リバーブ感が感じられます。
プリディレイは、元の音に対してリバーブがかかり始めるまでの時間を設定していましたね。そのため、プリディレイが長い方が、元の音とリバーブ音にズレが生じ、これによりリバーブ感が感じられます。この働きを図で表してみました。
プリディレイが長いと、リバーブ音と元の音が分離され、元の音のアタック部分が聴こえやすくなります。これ、コンプレッサーのアタックと少し働きが似ていますね。
コンプレッサーの働きを忘れたという方は、以下の記事をご覧ください。
また、リバーブを使用するにあたって、センドが基本といわれているとご紹介いたしましたが、
これにこだわる必要はありません。
特にトラック数などの制限の少ないDAWにおいては、音が良くなれば、どんな方法でもいいと、個人的には思っています。
リバーブを使用するにあたっても、「インサートでかけちゃダメ」ではなく、まず音を聴いてみて、
いい音であればやり方は何でもOKです。
基本概念に縛られることなく、自由な発想で楽曲制作をお楽しみください。
それでは。
- 前回記事:CompとEQをつかった音作り
- 次回記事:リバーブ実践編
投稿者:うえだ
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