(2013/12/20)
楽曲制作を通して、Mixcraftの魅力をお伝えしている本連載。
Vol.16からコンプレッサーの説明に入り、前回の記事で、コンプレッサーの代表的なパラメータの解説を行いました。
簡単におさらいすると、コンプレッサーに入力された音が、スレッショルドで設定した値を超えると、レシオで設定した比率分、コンプレッサーは音の圧縮を開始します。圧縮の開始、圧縮の終了するタイミングは、アタック、リリース・タイムでそれぞれ調整が可能です。
また、圧縮した分をゲインで増幅を行えば、全体の音量が上がり、音圧も上がるということを、前回まででお伝えしました。
コンプレッサーは、音の抑揚を調整するエフェクトのため、ミックスを行うにあたって、
欠かすことのできないエフェクトです。
前回までは、音を整える方向からコンプレッサーの使い方をご紹介いたしましたが、
積極的な音作りとしてもコンプレッサーは使用されます。
今回は、コンプレッサーを使用して、様々な楽曲ジャンルのドラム・サウンドを作ってみましょう!
メタル・サウンド編
まずは、slipknotなどに代表されるメタル・サウンドです。
メタルと聞くと重低音が想定されると思いますが、ギターやベースなどの音程が低い分、ドラム・サウンドは音程が高く設定されていることが多いです。
また、キック、スネアとも音の余韻が短く、音の立ち上がり部分が強調されています。キックの“バチッ”とした音は、このジャンルの特徴ともいえます。
さっそく、サウンド・メイクにうつります。
使用する音源は、Mixcraft 内蔵のStandard Kit 1です。
Mixcraftには、様々なドラム音源が用意されており、”Heavy Metal Kit”や”Stadium Heavy Metal Kit”を使用すれば、簡単にメタル・サウンドが手に入ります。
しかし、自分の思い通りのドラム・サウンドを作ることができれば、誰とも音色がかぶらないですし、何よりサウンド・メイクは楽しいです!
そのため、今回はシンプルなStandard Kit 1を使用します。Standard Kit 1は、このような音色です。
このドラム・サウンドを、メタル・サウンドに加工しようというのが今回の目的です。
さっそく各ドラム・キットにエフェクトをかけようと思いますが、現在はこのようにドラム・キットが1つのトラックにまとまっている状態です。
この状態にエフェクトをかけても、全てのドラム・キットにエフェクトの効果が反映されてしまいます。
そのため、各キットを個別のトラックに分けましょう。そこで、Mixcraftのレーン機能に注目しましょう。
Mixcraftでは1つのトラックに対し、複数の楽器クリップを追加するために、レーンという機能があります。
上の画像のように、ドラムパーツ毎に楽器クリップを分けて作成すれば、キックだけ、スネアだけというように、オーディオ・ファイル化できます。
例として、キックをオーディオ・ファイルとしてバウンスします。
キック以外の楽器クリップを全てミュートにした状態で、トラック・ヘッダを右クリックし、“新オーディオトラックにミックスする”を選択してください。
そうすると、キックだけをバウンスすることができ、個別のトラックに分けることができました。
この手順で、他のキットも全てオーディオ・ファイルにバウンスし、ドラム・サウンドの加工の準備ができました。
準備も完了したので、今度こそサウンド・メイクを行っていきます。
ドラム・サウンドの加工で有効な手段として、アタック(音の立ち上がり)部分とディケイ(音の余韻)部分を分けて考えると、上手くいく場合が多いです。
具体的な方法としては、キック、スネアをそれぞれコピーし、別の加工を行っていきます。
トラックをコピーする方法は、トラック・ヘッダを右クリックから、トラックの複製を選択します。
また、トラック名称部分をダブルクリックすることで、トラック名称を変更できるため、トラックを整理するためにも、分かりやすい名称に変更します。
まずは、キックから。
作りたいキックは、”バチッ”というアタックの音を持つ硬い音です。そのため、アタック用のキックには、イコライザーで低域を削り、ビーター部分の音を強調しています。
ビーターとは画像赤枠部分のことで、ビーターの材質によって、キックの音は大きく変わります。
今回、キックの音をアタック用、ディケイ用とトラックを分けていますが、アタック用の音はビーター部分の音、ディケイ用の音は、バス・ドラムの胴鳴り部分として、音作りを行っています。
※上記画像は、YAMAHA株式会社より拝借いたしました。
肝心のコンプレッサーはというと、アタック部分を強調するために、リリースを長めに設定しています。また、硬さを出すためにも、スレッショルドを下げて、コンプレッサーを深くかけています。
続いて、ディケイ用のキックです。
ディケイ用のキックには、Voxengo Amp Simulatorという歪み系のエフェクトをキックにかけています。歪みを加えることで、低音が持ち上がります。音の立ち上がり部分は、歪みによって失われますが、アタック用のキックが別にあるため問題ありません。
こちらも、音の余韻を抑えるため、リリース・タイム長めのコンプをかけています。
それでは、エフェクトによる変化を聴いていただくため、動画を用意いたしました。ご覧ください。
スネアも、キックと同様の処理を行っています。完成音源が、こちらです。
今回は、音の余韻を抑えるために、リリース・タイムが長めのコンプをかけましたが、次回は音の余韻が長いドラム・サウンドや、ベースとキックをうまく混ぜるための、コンプレッサーの有効活用方法についてお伝えします。
次回もお楽しみに!
- 前回記事:リリースタイムの設定
- 次回記事:CompとEQをつかった音作り
投稿者:うえだ
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